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『PEANUTS』の日本語訳は彼らが私達のすぐ側にいるように感じさせてくれる
2年ほど前にわたしはとある漫画にハマりました。
そして今でも大切で、大好きな作品です。
『PEANUTS』という、スヌーピーやチャーリーブラウン、お馴染みの仲間たちの日常を描いた漫画です。
初めてユニバーサルスタジオジャパン(USJ)に足を運んで、スヌーピーに触れたことがきっかけでした。
USJスヌーピースタジオに行った時、当時はスヌーピーたちのことを何一つ知りませんでしたが、そこで出会えるキャラクターたちや、思わず大人も一緒になって楽しんでしまうような可愛らしい仕掛けに、時間を忘れて楽しんだことを覚えています。
『PEANUTS』のアニメや漫画に触れてから行くUSJはもっと輝いて見えるに違いないと思い、帰宅してすぐに『PEANUTS』の履修を開始。
みるみるうちにハマっていって、今では南町田グランベリーパークにある、スヌーピーミュージアムの年間パスポート所持者になっていました。
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スヌーピーミュージアムの外観です!
先日、『PEANUTS』全エピソードの日本語訳を担当していた谷川俊太郎さんの訃報に接し、
遠い海を超えた先で生まれたスヌーピーたちを、日本の私たちにもより身近に、魅力的に感じさせてくれたことに沢山の感謝が込み上げてきました。
謹んでお悔やみ申し上げます。
子供の頃に他の海外の児童書に触れる機会が何度もあり、
英語が得意な人は、こうやって翻訳して、他の国の人の言葉を伝える仕事ができるんだなと思っていました。
大人になり、『PEANUTS』を手に取った時、日本語に訳された言葉を読んでいくうちに、
もちろん英語ができる必要はあるけれど、それ以上に日本語のことが大好きでないと、この表現はできないな…という思いが強くなったのを覚えています。
谷川俊太郎さんの翻訳で、それに気づけたことをとても嬉しく思います。
ここで、わたしの好きなコマをを少し紹介します。
チャーリーブラウン「僕らのような友情は、世界中のお金にも代えがたいね…」
スヌーピー「とは言え、ちょっとお金があったら、もっとクッキーが買えるのに…」
スヌーピーとチャーリーブラウンの気持ちの一方通行ぶりがたまりませんね。
しかもスヌーピーのセリフは、本人が心の中で思っているだけで言葉として発しているわけではないので、
チャーリーブラウンは飼い犬にそんなことを思われているなんて知る由もありません。
こういった滑稽さや、知りすぎないからこそ幸せな気持ちのままでいられるというような、人間関係のあり方まで考えさせられます。
元々のチャールズシュルツさんが描くお話の内容はもちろんですが、
日本語訳にした時に、あえてひらがなで書かれていて柔らかくなっている単語があったり、子供や犬にしては妙に大人びた言い回しにさせていたりと、翻訳の視点から見ても面白いです。
あともうひとつだけ、セリフというより一言なのですが
Rare gem(貴重な宝石)
この言葉が大好きです。
というのも、これはシングルファザーの家庭で育っている女の子、ペパーミントパティが、父親から贈られた言葉です。
父親はパティのことを「貴重な宝石」と呼んでいます。
お母さんはすぐに亡くなっていて、パティは男手一つで大切に育てられ、運動神経抜群のボーイッシュな女の子に育っています。
授業中に居眠りをしてばかりのキャラクターでもありますが、夜遅くまで起きているのには、帰りの遅い父親を待っているからだそう。
「貴重な」ってどちらかというと"precious"のイメージで、rareって「珍しい」とかの訳も取れると思うんですよね、
そうやって幾つかの訳の選択肢の中から、こういう思いで発言しているはずだからこの単語を選ぶっていう感覚が、
特に『PEANUTS』の訳は繊細で鋭い感じがします。
大人から子供まで、みんなの心に優しく入ってくるような、
今こそ『PEANUTS』をみなさんもぜひ読んでみてください。
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