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転の声 感想文

尾崎さん、お疲れ様です。
いつもありがとうございます。

『転の声』感想文です。まとめる文才がなく、長く長くなってしまったのでこちらに投稿します。よろしくお願いします。

私は、いわゆる古参ではないのであくまでも小説として読むことができました。

先に、苦しい辛い読み進められない…等のコメントを98ちゃんねるで読んでいたので、これは覚悟して読まなければいけない…と、読むのが怖くなって、本を手にすることすら躊躇していました。例えばどんなところだろう?と、尾崎さんが説明を求めて、ファンの方の箇条書きで示されていたものを読んでも私にはピンときませんでした。あ、大丈夫かも。そう思えたので、ようやく読むことができました。

おもしろかったです。私は、止まることなく読み進めて1日で読了しました。おもしろかったです。くすっ…ていう文章や、素人でもわかる秀逸だなぁと感心する文章がそこら中にありました。

でも、尾崎さんに感想文を提出したかったので、面白かっただけではなく、私の言葉で感想を伝えたいと思い、また読みました。私は、2回目の方がざらざらした気持ちになりました。高橋源一郎さんのお言葉を借りるなら、時計を組み立てる方がしんどかったです。

まず、それぞれの名前が素晴らしいですよねー!ニシダさんもおっしゃっていたけど、絶妙です。固有名詞が出てくるたびに口角が上がりました。

あと、顔から女の子を表す文章が面白かったです。「どんなに仲良くなった相手にでさえ、決して下の名前では呼ばれなそうな顔の女」「程よく整った顔からは、まだ会って間もないうちから下の名前で呼ばれそうな空気が漂っていた。いかにもライブ映像のインサートとしてカメラで抜かれそうな顔」わぁ…どっちも見える…。

「プロなのに歌えない歌い手の苦しみは、プロなのに歌えない歌い手への軽蔑に飲み込まれてしまう。」なんて言ったらいいのでしょう。この一文が全てな気がしています。

チケットのプレミアでアーティストの優劣が決まる世界で、エゴサーチしたネットの声に一喜一憂する、歌えない歌い手である主人公。切なくもあり、滑稽でもあり、あり得ない世界線なのにリアリティもありました。ラストシーンでは、主人公を人間としてそのすべてを表現として受け取るファンに気づく主人公に胸が熱くなりました。

「尾崎世界観にしか書けない、虚実皮膜のバンド小説にしてエゴサ文学の到達点」この一文凄いですね。虚実皮膜という言葉を初めて知りました。

【帯にあるこの言葉を調べれば、古参と言われるファンの方たちも、芸術としか言えない小説だと思えたのではないかな…www】とか、そういう思ったことを、すぐにネット上でwとか訳わかんないのたくさん付けて呟くから人を傷つけたり炎上したりするのですよねー。

思うのは勝手なんですよね。人それぞれですから。尾崎さんが、いきなり唾を吐きかけたらどうなるだろうとか考えるとお話されていましたが、私も、夕飯を作っている時に、この包丁を突然家族に向けたらどういう反応をするだろう、とか思います。息子は、麦茶をコップに注いでいる時に、いきなり自分の頭上から麦茶をかけたら面白いだろうなーとかそんなことをずっと考えているって言っていました。

頭の中で何を考えたって、心の中で何を思ったっていいけど、一切遠慮がない本音を、何でもかんでもネット上にリアルタイムで呟くのは違うよ。と、ちょっと考えてからにしなきゃいけないよ、と子供たちには伝えています。

TVを見ながら、私が感じたことを呟いていると、娘がスマホを見ながらそれトレンド入りしてるわ…と言うことがよくあります。それを聞く度に怖っと思います。そりゃ、みんなそう思うわ…という一般的な意見を私も持つけど、でも、それをリアルタイムでいち早く発信しようとは思いません。反対側の人が必ずいるわけで。それで傷つく人がいるとか、本当の所はもっと深い理由があるのかもしれないとか、そういう所まで思いを巡らす前に、その他大勢の世間様に発信してしまうことに問題があると思っています。

社会の中で、思ったことをすぐ口にして許されるのは幼少期までですよね。人と関わって生きていく上で、集団の中で習ってきたことが、相手が見えないネット上では生かされない。ネットになんかあげずに、内々で共感して終わらせればなんの問題もないのに。…そういう人はつまり孤独だということだろうか…だめだ。キリがないですね。終わり。

ただ、尾崎さんが傷つくようなことが減りますように。

ラストシーンのライブでの文章。ファンに対する嫌悪の感情と、どうにもならない自分への怒りが止まらずに、どうしようもなく溢れ出る感情が、何回も繰り返される「馬鹿だ。」ですごく伝わってきてすごく苦しくなりました。そんな状況で、最後に主人公がプロの表現者として、覚悟を決めたように感じました。凄いと思いました。

ふぁー

感想文…読み返してみて、なんだか一家心中でも起こしそうな物騒な人だと思われそうだな…と思ったけど、頭の中でいろんな妄想をするのは本当だし、夏休みでお昼ご飯も作らなきゃいけない毎日の中で、浮かんだ例えが悪かったかもだけど…まぁ、いいか…それが真実。

『転の声』音楽について、価値観について、考えさせられる面白い小説でした。余計なことをするために生きてるようなバンドマン(激長、劇重ブログより引用)と、ファンとして深く繋がることができたと思っています。

ありがとうございました。

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