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『裏道を行け』 橘玲 講談社現代新書

 副題は「ディストピア世界をHACKする」。「ディストピア」ということばが、コロナが流行り、ロシアがウクライナに侵攻し、サプライチェーンがフリーズしてしまった現在の世界にぴったり当てはまると思って、読んだ本だ。

 世界(社会)は、ベルカーブ型から、下流から上流に向かってロングテール型へと変化した。これは、残酷な現実だ。上流に移行するためには「ハック」する必要に迫られる、そのハックは、モテ、金融、脳、自己啓発などで可能になる。このハックの様子を、恋愛工学からSNSと脳の快感回路の関係などを挙げて、ルポルタージュ風に紹介している。

 小田急線殺傷事件について、目次にちらりと見えたので、日本の現代社会について扱っているのか、と思ったのだが、大半は欧米の事例だった。ちなみに犯罪は、裏道でもハックでもないだろう。この混同は、結構、怖い。

 ロングテール型社会のアンチテーゼとしての、ハック。その構図は分かりやすい。そんな社会がどんな風に変化していくかについても、考える必要があると思った。