俺だって人に料理を振る舞ったことくらいある
友人のために卵焼きを作ったことがあった。料理が下手な私にとって無茶振りもいいところだった。
私は困りながらも、家にあった材料でだし巻き卵を作ることにした。
そう、一風堂秘伝のとんこつダシを使ったのである。
経緯
一時期、ウチに頻繁に遊びに来ていた友人がいた。結構昔のことなのであんまり覚えていないけど、なんかパズドラとかしていた気がする。
ある日の昼、その友人は私が料理下手であることを知りながら、からかいの意を込めてだし巻き卵をせがんで来た。
私がどれほど料理が苦手かというと、卵焼きの作り方すら朧げにしか把握していなかったほどである。
「溶いて焼けばいい?」
「そんなわけないだろ。」
渋々レシピを調べるところから始めた。
そして、一つの問題に直面した。だし巻き卵のレシピは大抵「だし汁」についての記述が曖昧なのである。だしであれば何でも良い、そう解釈した私はチャーハン用に買っていた一風堂秘伝のとんこつダシを使うことにした。
結果は惨敗である。唐揚げみたいな味がした。友人は一口しか食べなかった。当然「これ何のだし使ってんの!?」と突っ込まれた。
だしの分量が分からず勘で入れたのだから仕方ない。私が祈りを込めた料理は押し並べて失敗する。友人の仕打ちは酷いものだが、私も私で中々に酷かった。
それ以降、家で何度か練習した。適切な分量を探りつつ、焦がさないとか柔らかくするとか根本的な調理の改善もした。
そして、ついに理想の分量と十分な再現性を確立したのである。正直、かなり美味しくなったのではないかと思う。私は友人にそれを振る舞う日を楽しみにしていた。
しかし、その日が来ることはなかった。なんとなく疎遠になり、連絡も取らなくなった。もちろん卵焼きも作らなくなった。
本題
普通ならここで話は終わりなのだが、この話にはまだ続きがある。
先日、その友人が死んだらしい。もう関わることはなかっただろうし、今更悲しいとか寂しいとかそういった感情はないが、きちんと区切りをつけた方が良いような気がした。
というわけで、久々にだし巻き卵を作りつつお蔵入りになったレシピを紹介しようというのが今回のメインコンテンツである。
亡き友のために再びフライパンを振うことを決意するアコシェフ。良い筋書きでしょう。こんな記事、故人をネタにしたパフォーマンスにしか見えないのは私もよく分かっている。
レシピ
卵 3個
無糖ヨーグルト 小さじ2
一風堂秘伝のとんこつダシ 小さじ2
砂糖 小さじ1.5
ヨーグルトは入れるとフワフワすると聞いたので入れている。無いなら無いで何とかなると思う。
とんこつだしはこの分量だとあっさりめ。もう0.5足すとこってりすんじゃないかな。
砂糖もこの分量だと甘さ控えめ。
実演
ここから先は一般的な手順に従って普通に焼くだけである。
まず材料をすべて用意してかき混ぜる。ヨーグルトだけは先に別容器でほぐしておくと混ぜるのが楽。
油を引いて強火で焼く。3回に分けてやると良いらしい。
綺麗に巻くコツは箸だけでやるという小さなプライドを捨ててヘラを使うことである。
きちんと巻けているのか…?
素晴らしい!箸で切ったので断面が汚いが…
うむ、久々に作ったが美味い。普通のだし巻き卵の香りとは程遠いが独特の香ばしさがある。食感も弾力があって良い。我ながら本当に上手になった。
満足したので特にオチはない。みんなも作ってみてね。
このためだけに一風堂秘伝のとんこつダシを買う人間がいるとは思えないが。
余談
これをやろうと決めた直後に卵を二度ぶち撒けている。祟りか?
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