何もなかった

3年前、僕は一人だった。
正確にいうと8年も付き合っていた彼女がいた。
二人の暮らしは毎月、誰かしらにお金を借りる生活で頭を悩ませていた。
その原因は働けない自分にあった。
彼女が働きに行ってる間、僕は出来る範囲の暇を潰し飼っていた猫と共に時間を過ごして、何もない毎日を繰り返していた。

ある時、彼女からとあるSNSを勧められた。
最初は興味がなかったけれど、暇つぶしにはなるかとインストールして、100日だけそのSNSをしたら終わるという約束を自分に課した。
そこでは色んな人と出会う事が出来て、自分の現状がおかしい事やどうにか良くなるようにと動いてくれる人がいたり、とても優しかった。

「別れた方がいい、幸せになった方がいい」
そんな言葉達に僕は期待を抱いてしまった。
そして、彼女に同居人として暮らしていこうと提案をし、恋人としての事実上の別れを告げた
すると、すぐに彼女だった同居人は彼氏を作った。
そして、この家に住んでもいいけれど働いて自分で家賃を払ってくれと言った。
何年も働いていない自分がすぐに働けるわけもなく、その状況をSNSで報告した。

すると、一人の女性が「近いうちに引っ越すから一緒に引っ越そう」と言ってくれた。
引っ越す前に3回ほど会って、不思議な人だなという印象のまますぐに一緒に住む事になった。
二人の暮らしは上手くいかない事ばかりで、理想と現実の差を突きつけられらるような日々だった。

この話にはまだ続きがあるのだけど、結局僕は今は一人で生活保護を受けている。
SNSも100日だけと決めていたけど、それを破って続けていた。それも辞めた。

色々なものを手に入れたと思っていた。
これ以上何もいらないと思っていた。
でも、もう手に入れたものは全て失った。
3年前の一人の自分に戻った。
ただそれだけだ。

最初から全部夢だったのかもしれない
最低な悪夢を見ていたのかもしれない
幸せだった頃の夢を。