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第9話 最後の晩餐
翌朝、凛は緊張した面持ちでDeepTechのオフィスへ向かった。今日は、海斗と共に美麗に会いに行く日だ。
「凛さん、準備はいいですか?」
海斗もまた、緊張を隠せない様子だった。
「ええ、大丈夫です。…多分。」
凛は、少し不安げに答えた。
二人は、NeoGreenTechのオフィスがある、島の反対側へと向かった。
NeoGreenTechのオフィスビルは、DeepTechのオフィスとは対照的に、近代的で洗練された建物だった。
凛と海斗は、受付で名前を告げ、応接室に通された。
数分後、美麗が部屋に入ってきた。
「あら、いらっしゃい。今日は、どういったご用かしら?」
美麗は、いつものように妖艶な笑みを浮かべていた。
「美麗さん、単刀直入に言います。あなたの目的は何ですか?」
凛は、単刀直入に尋ねた。
「あら、怖い顔しないで。せっかく二人で来てくれたのに。」
美麗は、余裕の表情で答えた。
「私たちは、DeepTechの、そして、この島の未来について、真剣に話し合いたいんです。」
海斗は、真剣な表情で言った。
「まあ、そうかしこまらないで。お茶でもいかが?」
美麗は、二人にお茶を勧めた。
「結構です。私たちは、あなたの計画を阻止するために来たんです。」
凛は、美麗の申し出を断った。
「計画を阻止…? なにを言っているのかしら?」
美麗は、とぼけた様子で言った。
「とぼけないでください! あなたは、DeepTechの情報を盗み、この島の自然を破壊しようとしている!」
凛は、美麗を責め立てた。
「あら、そんな証拠があるの?」
美麗は、涼しい顔で言った。
「証拠…? 松岡さんから聞いたんです!」
凛は、思わず口走ってしまった。
「松岡…? ああ、あの男ね。確かに、彼は、私に協力してくれたわ。」
美麗は、あっさりと認めた。
「やっぱり…!」
凛は、怒りを抑えきれなかった。
「でも、彼はもうDeepTechを辞めたわ。あなたたちには、もう関係ないでしょう?」
美麗は、平然と言った。
「関係ない…? ふざけないでください! あなたのせいで、海斗さんは、大切な仲間を失ったんです!」
凛は、美麗に掴みかかろうとした。
「凛さん、落ち着いて!」
海斗は、凛を制止した。
「でも…!」
凛は、まだ怒りが収まらなかった。
「美麗さん、あなたの目的は何ですか? なぜ、そこまでして、DeepTechを潰そうとするんですか?」
海斗は、美麗に尋ねた。
「それはね…。」
美麗は、意味深な笑みを浮かべた。
「この島を、私のものにしたいからよ。」
美麗は、衝撃的な言葉を口にした。
「あなたのものに…? どういうことですか?」
海斗は、理解できなかった。
「この島には、素晴らしい自然がある。そして、DeepTechの技術があれば、この島は、世界でも有数のリゾート地になる。私は、この島を、世界中の人々が憧れる、夢のような場所にしたいの。」
美麗は、自分の野望を語った。
「でも、そのためには、DeepTechの技術が必要なんですね?」
凛は、言った。
「ええ。DeepTechの技術があれば、この島の自然を、最大限に活かした、環境に優しいリゾート地を作ることができる。それは、DeepTechの技術があってこそ実現できることなのよ。」
美麗は、DeepTechの技術を高く評価していた。
「でも、それは、海斗さんの夢を奪うことになるんですよ!」
凛は、美麗に反論した。
「夢…? 海斗さんの夢なんて、どうでもいいわ。私は、自分の夢を叶えるために、手段を選ばない。」
美麗は、冷酷に言った。
「そんな…!」
凛は、美麗の冷酷さに、言葉を失った。
「海斗さん、あなたには、選択肢が二つあるわ。」
美麗は、海斗に言った。
「一つは、DeepTechを私に譲り渡し、この島から出ていくこと。」
「そして、もう一つは…。」
美麗は、言葉を切った。
「もう一つは…?」
海斗は、美麗の言葉を促した。
「私と協力することよ。」
美麗は、海斗に提案した。
「協力…? どういうことですか?」
海斗は、美麗の提案に困惑した。
「DeepTechの技術を、私のリゾート開発に利用することよ。そうすれば、あなたも、この島の発展に貢献できる。そして、もちろん、あなたにも、それ相応の報酬を支払うわ。」
美麗は、海斗を誘惑した。
海斗は、美麗の提案に、葛藤した。
DeepTechの技術を使えば、この島は、世界でも有数のリゾート地になるだろう。それは、海斗の夢でもある。
しかし、そのためには、美麗と手を組まなければならない。それは、海斗にとって、受け入れがたいことだった。
「どうする? 海斗さん。」
美麗は、海斗に決断を迫った。
海斗は、苦悩の表情で、凛に視線を向けた。
凛は、海斗の心の葛藤を理解していた。
「海斗さん、あなたの心に従ってください。」
凛は、海斗に言った。
海斗は、凛の言葉に、決意を固めた。
「美麗さん、あなたの提案は、断ります。」
海斗は、美麗に宣言した。
「…そう。残念だわ。」
美麗は、冷淡に言った。
「でも、これで終わりじゃないわ。これは、まだ始まりに過ぎない。」
美麗は、意味深な言葉を残し、部屋を出て行った。
凛と海斗は、NeoGreenTechのオフィスを後にした。
二人は、美麗との対決に敗れた。
しかし、二人の戦いは、まだ終わっていなかった。