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第6話:恋の予感

「あれ、もしかして桜井さん?」

仕事帰りのひかりは、聞き覚えのある声に足を止めた。振り返ると、そこには爽やかな笑顔の男性が立っていた。

「田中さん…?」

ひかりは、相手の名前を思い出すのに少し時間がかかった。

田中悠斗、数ヶ月前に取引先の会社で一度だけ会ったことがある人だ。

「覚えててくれて嬉しいです。
偶然ですね、こんなところで会うなんて」

田中さんは、少し照れたように笑った。
ひかりもつられて微笑む。

「本当ですね。
田中さんも、この辺りでお勤めなんですか?」

「ええ、そうなんです。
桜井さんは?」

「私もです。
今日は、ちょっと寄り道して帰ろうと思ってたところなんです」

「そうなんですね。
もし良かったら、一緒にコーヒーでもいかがですか?」

田中さんの突然の誘いに、ひかりは少し驚いた。
しかし、彼の優しい笑顔を見て、断る理由が見つからなかった。

「はい、ぜひ」

二人は近くのカフェに入り、向かい合って座った。

仕事の話や趣味の話、最近あった出来事など、話題は尽きなかった。
田中さんは、ひかりの話に真剣に耳を傾け、時折優しい笑顔を見せた。

「桜井さんって、本当に面白いですね」

田中さんの言葉に、ひかりは少し照れた。

「そんなことないですよ。
田中さんこそ、聞き上手で話しやすいです」

二人は、時間を忘れて話し続けた。
カフェを出る頃には、すっかり夜になっていた。

「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」

ひかりは、田中さんに笑顔で言った。

「こちらこそ、ありがとうございました。
また、機会があればぜひ」

田中さんも、笑顔で答えた。

別れ際、田中さんはひかりに名刺を渡した。

「もし良かったら、連絡してください」

ひかりは、名刺を受け取りながら、胸が高鳴るのを感じた。

これは、もしかして…恋の予感?

家に帰ったひかりは、ベッドに寝転がりながら、
今日の出来事を思い出していた。

田中さんの笑顔、優しい言葉、そして名刺。

「もしかしたら、私にも春が来るのかも…」

ひかりは、顔を赤らめながら、そう呟いた。
小さなミスアドベンチャーの中に、突然訪れた恋の予感。

ひかりの心は、期待と不安でいっぱいだった。

「これは、ブログに書いたら読者さんに怒られちゃうかな…」

ひかりは、そう思いながら、眠りについた。

※この物語はフィクションであり、
    登場する人物や団体、場所はすべて架空のものです。
    実在の人物や出来事とは一切関係ありません。

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