第3章:瀬戸内海への一歩
「いってらっしゃーい!」
桟橋で見送る島の人々に手を振り、
アトリエ号は、青い海原へとゆっくりと漕ぎ出した。
潮風を帆に受け、白い波しぶきをあげながら、
まるで夢に向かって進むかのように、
力強く進んでいく。
「うわぁ…、すごい!
本当に船で旅してるみたい!」
詩織は、甲板から広がる360度の
パノラマの景色に目を奪われ、
興奮気味に叫んだ。
目の前には、どこまでも続く青い海と空、
そして、点々と浮かぶ緑豊かな島々。
まるで、絵画の世界に迷い込んだようだ。
「気持ちいいね~。
やっぱり、海は最高!」
杏奈は、潮風になびく髪を手でかきあげながら、
大きく深呼吸をする。
都会の喧騒から解放され、
自然の中に身を置くことで、
心が解き放たれていくのを感じる。
一方、真紀は、
少し緊張した面持ちで、
舵を握っていた。
「…ちゃんと操縦できるかしら。
何かあったらどうしよう…。」
初めての船旅に、不安がよぎる。
しかし、そんな不安を打ち消すかのように、
杏奈が声をかけた。
「真紀姉ちゃん、
心配しすぎ!大丈夫だって。
それに、何かあったら、
島の人たちが助けてくれるよ。」
「そうね。
それに、私たちには、
頼りになる船大工さんもいるしね。」
詩織も、笑顔で真紀を励ます。
真紀は、二人の言葉に勇気づけられ、
緊張が少し和らいだ。
「…ありがとう。二人とも。」
そして、改めて前方の海を見つめ、
決意を新たにする。
「よし! 私たちだけの航海、始めましょう!」
アトリエ号は、三姉妹の夢と希望を乗せて、
瀬戸内海へと漕ぎ出した。
初めての船上生活は、
戸惑いの連続だった。
真紀は、揺れる船内で、慣れない家事に苦労する。
洗濯物は、風に飛ばされそうになるし、
料理中に鍋が滑り落ちてしまうことも。
それでも、真紀は、持ち前の几帳面さで、
船内を綺麗に保ち、美味しい食事を作ろうと努力した。
杏奈は、船上でも、自由奔放に過ごしていた。
甲板でヨガをしたり、
海に飛び込んで泳いだり、
時には、小さなボートを漕ぎ出して、
近くの無人島を探検したり。
まるで、海と一体化したような、
自由な暮らしを楽しんでいた。
詩織は、船の揺れに酔いながらも、
窓際のハンモックに揺られながら、
詩を紡いだり、小説の構想を練ったり。
波の音や潮風、太陽の光など、
五感を刺激する自然の中で、
新たなインスピレーションが
湧き上がってくるのを感じていた。
しかし、穏やかな海ばかりではなかった。
ある日、突然の嵐に遭遇した。
「きゃーっ! 怖い!」
詩織は、激しく揺れる船内で、恐怖で泣き叫んだ。
「落ち着いて、
詩織! 大丈夫だから!」
真紀は、詩織を抱きしめながら、
必死に声をかけた。
杏奈は、冷静に状況を判断し、
船を安全な場所へと移動させようとした。
「真紀姉ちゃん、詩織を頼む!
私は、操縦するわ!」
嵐の中、三姉妹は力を合わせ、
恐怖に立ち向かった。
そして、嵐が過ぎ去った後、
彼女たちは、改めて海の力強さと、自然の脅威を感じた。
「…海って、美しいだけじゃないんだね。」
詩織は、静まった海を眺めながら、呟いた。
「そうね。
でも、だからこそ、
魅力的でもあるのよ。」
真紀は、穏やかに答えた。
杏奈は、二人の顔を見て、力強く言った。
「さあ、次の島を目指しましょう!
まだまだ、私たちの冒険は始まったばかりよ!」
アトリエ号は、再び帆を張り、
次の目的地へと向かう。
最初の目的地は、伝統行事が行われるという小さな港町。
そこでは、どんな出会いが待ち受けているのだろうか?
三姉妹の瀬戸内海冒険は、まだまだ続く。
※この物語はフィクションであり、
登場する人物や団体、場所はすべて架空のものです。
実在の人物や出来事とは一切関係ありません。