第1話: ミカの進路選択の悩み
夕方のコワーキングスペースに、
緊張した面持ちのミカが座っていた。
ミカは高校3年生。
進路選択の時期が近づく中、
クラスメイトたちは次々と志望校や就職先を決めているが、
ミカだけはまだ迷いの中にいた。
「どうしよう…」ミカは深いため息をつき、
ノートに書かれた無数のメモをぼんやりと見つめていた。
大学に行くべきか、就職するべきか、
それとも専門学校に行くべきか。
頭の中で答えが出ないまま、時間だけが過ぎていく。
その時、のぶ がコーヒーを片手に現れた。
「お、ミカ、今日は早いね。どうした?そんなに悩んでる顔して」と、
のぶ は冗談混じりに声をかけた。
ミカは顔を上げ、苦笑いを浮かべた。
「うん…進路のことなんです。みんなはもう決めてるのに、
私だけ何も決まらなくて。
何をやりたいのか、さっぱりわからなくて…」
のぶは椅子に腰かけ、
少し考えるような仕草をした後、優しく微笑んだ。
「ミカ、確かに進路選択は大事な決断だけど、焦る必要はないよ。
むしろ、自分が何をやりたくないかを考えることも大事なんじゃない?」
ミカはその言葉に少し驚き、眉をひそめた。
「やりたくないことを考える…?」
のぶはうなずきながら続けた。
「そうさ。例えば、これだけは絶対に嫌だって思うことを考えてみる。
それを避けることで、少しずつ自分のやりたいことが見えてくることもあるんだよ。」
ミカはしばらく考え込み、ノートにペンを走らせ始めた。
「やりたくないこと…
人前で話すのは苦手だから、営業職は向いてないかも。
計算が苦手だから、会計とかも無理かな…」
書き出してみると、意外とスラスラと思い浮かぶことに気づいた。
「そうか、やりたくないことを避ければいいんだ!」
ミカの顔に少し笑顔が戻った。
「なんだか気が楽になった気がする。
やりたくないことをリストアップして、
それを避けるだけでも少し方向性が見えてきた気がします。」
のぶ は微笑みながらうなずいた。
「そうだね。それに、自分の好きなこと、
得意なことも一緒に考えてみると、
もっとはっきりしてくるかもしれないよ。」
その時、ユリとサエがコーヒーを持ってテーブルにやって来た。
「何の話してるの?」
ユリが興味津々に聞くと、
ミカは少し照れくさそうに進路の悩みについて話した。
サエは頷きながら、
「私も進路で悩んでた時期があったわ。
でも、やりたくないことを避けるのも大事だけど、
心が動く瞬間を大切にするのもいいかもね」
とアドバイスをくれた。
ユリも、「そうだね。
私は今の仕事が最初の選択と違ったけど、
いろいろ試してみることで自分が好きなことが見えてきたよ。
ミカちゃんもいろいろ経験してみたら?」と
笑顔で言った。
ミカは皆の意見を聞いて、さらに考えを深める。
「そうか、やりたくないことだけじゃなくて、
やってみたいことも探してみよう。
まずは、もっといろいろなことに挑戦してみるのもいいかもしれない。」
のぶ は優しく微笑み、
「そうそう、それが一番だよ。
無理に決めなくてもいいんだ。
少しずつ自分のペースで進めばいい」と
励ました。
「ありがとう、みんな。
なんだか少し気が楽になったかも。
焦らずに、自分の進みたい道を探してみるよ」と、
ミカは少し前向きな気持ちを取り戻した。
その夜、ミカは自分のノートに新たなページを開き、
やりたくないこと、興味のあることを書き出し始めた。
コワーキングスペースの窓の外では、
コンビナートの灯りが静かに揺れ、
彼女の心に新たな光を灯していた。
※この物語はフィクションであり、
登場する人物や団体、場所はすべて架空のものです。
実在の人物や出来事とは一切関係ありません。