第2章:船リフォーム大作戦
アトリエ号と名付けられた船は、長年放置されていたため、
内装は古く、埃っぽく、まさに「お化け屋敷」状態だった。
しかし、三姉妹は臆することなく、リフォーム計画に意気込んだ。
「よし、
まずはこの古びた内装を全部剥がして、
綺麗に掃除するわよ!」
真紀は、作業着姿で、力強く宣言した。
出版社で鍛えられた行動力で、
早速、掃除道具や工具を揃え、テキパキと指示を出す。
まるで、大規模な出版プロジェクトを指揮する編集長のようだ。
「わかった! 壁は、白を基調にして、
アクセントにターコイズブルーを入れようかな。
海を感じる爽やかな空間にしたいわ。」
杏奈は、持ち前のセンスを活かして、
インテリアのイメージを膨らませる。
カラフルなペンキやタイル、個性的な照明など、
様々なアイデアが次々と湧き出てきて、
スケッチブックに描き込んでいく。
「ねぇねぇ、私の部屋は、
本がたくさん置けるように、
壁一面に本棚を作ってほしいな!
あ、あと、ハンモックも吊るしたい!」
詩織は、夢見るような目で、
自分の部屋のイメージを語る。
小説の世界に浸れるような、
静かで落ち着きのある空間を思い描いているようだ。
こうして、三姉妹による船リフォーム大作戦がスタートした。
真紀は、全体設計や工程管理を担当し、
杏奈は、内装デザインやインテリア選び、
詩織は、細かな作業や装飾などを担当する。
それぞれが得意分野を活かし、
協力し合いながら、作業を進めていく。
時には、意見が衝突することもあった。
「ちょっと杏奈、このタイル、派手すぎない?
船の雰囲気に合ってないと思うんだけど。」
「えー、でも、この方が可愛いじゃん!
真紀姉ちゃん、もっと冒険心を持ってよ!」
「詩織、そのペンキの塗り方、ムラになってるわよ。
もっと丁寧に塗らないと。」
「あ、ごめんなさい…。」
しかし、そんな意見のぶつかり合いも、
三姉妹の絆を深めるスパイスとなった。
互いの個性を尊重し、妥協点を見つけながら、
少しずつ理想の空間に近づけていく。
リフォーム作業の合間には、島の人々との交流も生まれた。
「あら、あなたたち、あの古い船を直してるの? 大変ねぇ。」
「こんにちは。何かお手伝いできることありますか?」
「よかったら、お茶でも飲んでいきなさい。」
島の人々は、都会からやってきた三姉妹を温かく迎え入れ、
様々な形でサポートしてくれた。
新鮮な魚介類や野菜を分けてくれたり、
島の伝統料理の作り方を教えてくれたり、
時には、昔懐かしい島の話を聞かせてくれたり。
三姉妹は、島の人々の優しさに触れ、
都会では味わえない温かい交流に心を癒されていく。
そして、数週間後、
ついにアトリエ号は、見違えるように生まれ変わった。
真っ白な壁に、
ターコイズブルーのアクセントカラーが映える、
爽やかなリビング。
広々としたキッチンには、最新の調理器具が揃い、
料理好きの真紀も大満足だ。
杏奈のデザインセンスが光る、おしゃれな照明や家具が、
船内を華やかに彩る。
詩織の部屋には、天井まで届く大きな本棚と、
窓際に吊るされたハンモックが設置され、
まるで秘密基地のような空間に仕上がっている。
「わぁ…、すごい! 本当に素敵な船になったね!」
詩織は、目を輝かせながら、船内を駆け回った。
「うん。私たちだけの、
最高の空間ができたわ。」
真紀も、満足そうに頷いた。
「さあ、これで準備万端!
いよいよ、瀬戸内海の冒険に出発よ!」
杏奈は、高揚した声で宣言した。
しかし、彼女たちの前に、
予想外のトラブルが立ちはだかることになる。
「大変! 船底に穴が開いてる…!」
真紀の叫び声が、静かな入り江に響き渡った。
※この物語はフィクションであり、
登場する人物や団体、場所はすべて架空のものです。
実在の人物や出来事とは一切関係ありません。