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第8章:船の修理と新たな仲間
嵐の爪痕が残るアトリエ号は、
なんとか近くの島にたどり着いた。
しかし、船底の損傷は深刻で、
このままでは航海を続けることは不可能だった。
「…どうしよう。
近くに船大工さんはいないかしら…。」
真紀は、不安そうに港を見渡した。
「大丈夫だよ、真紀姉ちゃん!
きっと、この島にも船を直せる人がいるわ。」
杏奈は、いつものように楽観的な様子で言った。
「…でも、この島、すごく小さいわね。
本当に、船大工さんなんているのかしら…。」
詩織は、不安げに周囲を見回した。
三姉妹は、港で聞き込みを始めた。
すると、島の漁師が、一人の船大工を紹介してくれた。
「…この島の船大工なら、源さんしかいないよ。
腕は確かだが…、ちょっと変わった人だからね。」
漁師は、意味ありげな笑みを浮かべた。
源さんの工房は、港から少し離れた、入り江の奥にあった。
古びた小屋の前に、髭をたくわえた小柄な老人が立っていた。
「…あんたら、船を修理してほしいのか?」
源さんは、鋭い目で三姉妹を見据えた。
「…はい。嵐で船底に穴が開いてしまって…。」
真紀が説明すると、源さんは、黙ってアトリエ号の状態を調べ始めた。
「…ふむ。なかなか手強いな。
だが、わしにかかれば、ちょちょいのちょいじゃ。」
源さんは、自信満々に言った。
「…本当ですか? ありがとうございます!」
三姉妹は、安堵の表情を浮かべた。
源さんは、早速、修理に取り掛かった。
その手つきは、まるで芸術家のように繊細で、かつ力強かった。
「…源さん、すごいわね。
まるで魔法みたい。」
詩織は、感嘆の声を漏らした。
「…ああ。源さんの腕は、
この島で一番なんだ。」
漁師が誇らしげに言った。
源さんの妻、ハナさんは、明るく朗らかな女性だった。
彼女は、三姉妹に、手作りのパンやスープを振る舞ってくれた。
「…さあ、遠慮なく食べておくれ。
源が仕事に集中できるよう、
わしも精一杯、応援するからね。」
ハナさんの笑顔に、三姉妹は心が温まった。
修理の間、三姉妹は、源さんとハナさんから、
島の暮らしや海の話を聞いた。
「…わしらぁ、この島で生まれ育って、
ずっと海と共に生きてきた。
海は、時に厳しく、時に優しく、
わしらぁを育ててくれたんじゃ。」
源さんは、しみじみと言った。
「…そうね。海は、命の源であり、
心の故郷でもあるのよ。」
ハナさんは、穏やかに微笑んだ。
三姉妹は、夫婦の言葉に、
深く感銘を受けた。
「…私たちも、海をもっと大切に思わないといけないわね。」
真紀は、改めて海の偉大さを感じた。
「…うん。海は、私たちにたくさんのことを教えてくれる。」
杏奈も、海への畏敬の念を新たにした。
「…私も、海を題材にした物語を書いてみたいな。」
詩織は、新たな創作意欲が湧き上がってきた。
数日後、アトリエ号の修理は完了した。
「…見違えるようになったわ!
源さん、本当にありがとうございました!」
真紀は、感謝の気持ちを込めて、
源さんに頭を下げた。
「…礼には及ばん。
わしは、船を直すのが仕事じゃからの。」
源さんは、照れくさそうに笑った。
「…さあ、これで、
また航海に出られるわね!」
杏奈は、嬉しそうに言った。
「…うん! 次はどこへ行こうか?」
詩織も、ワクワクした様子で言った。
「…まずは、この島の海神祭に参加しましょう。
源さんとハナさんも、一緒にどうですか?」
真紀が誘うと、二人は笑顔で頷いた。
「…それは楽しみじゃ!
わしらぁも、久しぶりに祭りに参加してみようかの。」
源さんは、目を輝かせた。
こうして、三姉妹は、新たな仲間と共に、
海神祭へと出発した。
アトリエ号は、再び希望に満ちた航海へと漕ぎ出した。
※この物語はフィクションであり、
登場する人物や団体、場所はすべて架空のものです。
実在の人物や出来事とは一切関係ありません。