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海に一番近い駅——徳山駅と、じいちゃんの物語

これは物語は事実に基づくフィクションです。


1. 駅のホームに立つじいちゃんと孫

「じいちゃん、この駅、なんで海がこんなに近いの?」

徳山駅から見える瀬戸内海。

小学3年生のコウタが、徳山駅のホームから見える瀬戸内海を指差して聞いた。


徳山駅付近の新幹線と瀬戸内海(CROSS SPACE紡 より)

「よく聞いたな、コウタ。」

じいちゃんは目を細め、ホームの先に光る海を見つめた。

「この駅にはな、むかしむかし、おっちゃんたちの汗と涙が染み込んどるんじゃ。」

「じいちゃんも、ここで働いてたの?」

「まあな。だが、駅がこうなった話は、もっともっと昔から始まっとるんじゃよ。」


2. 駅を海沿いに作る大騒動

じいちゃんは語り始めた。

「むかし、この駅は海からずーっと離れたところに作られる予定じゃった。でもな、漁師や商人のおっちゃんたちが言ったんじゃ。『港から遠かったら荷物が運べん!人も来ん!』ってな。」

「え、じゃあどうしたの?」

「おっちゃんたちは土地を買い集めて、海沿いに駅を作るよう役人を説得したんじゃ。『漁場が潰れる!』って漁師たちとケンカもしたが、最終的には漁師も『町が栄えるなら手伝う』って納得したんじゃよ。」

「そんなの、絶対ケンカになるよ。」

「ほうじゃ。実際、工事中には波が埋立てた土をさらっていく
    ”やらかし” もあった。でもな、人々はあきらめんかったんじゃ。」


3. 空襲で焼けた町と復興の光

「けどな、コウタ。この駅と町は、一度全部燃えてしもうたんじゃ。」

じいちゃんの目が一瞬曇った。

「戦争中に空襲を受けてな。
    町は灰になった。駅も燃えた。みんな泣いたよ。けどな…」

「けど?」

「泣きながら、みんな瓦礫をどけて、また駅を作り直したんじゃ。
   あのときは、負けん!って気持ちだけが支えじゃった。」

「じいちゃんも泣いたの?」

「ああ、泣いたさ。でもその涙の分だけ、強くなれたんじゃよ。」


4. 新幹線と名前を守る戦い

「やっと駅が元通りになったころ、新幹線の話が出てきたんじゃ。
   ところがな、国の偉い人たちは、
  『新徳山駅』を別の場所に作ると言ったんじゃ。」

「え?じゃあこの駅、なくなってたかも?」

「そうじゃ。でも町の人たちは『ふざけるな!』って立ち上がった。署名を集めて、『駅名も場所も変えるな』って猛反対したんじゃ。」

「勝ったの?」

「勝ったよ!この駅は変わらんかった。でもな、その分工事は大変で、予算オーバーで大騒ぎ。けど町のみんなで支え合ったおかげで、今でもこうやって使えるんじゃ。」


5. 現代と未来へつながる希望

コウタは海を見つめた。

「じいちゃんたち、すごいね。」

「すごくないさ。ただやらかしながらも、諦めんかっただけじゃ。」

じいちゃんはそう言って笑った。

「じゃあさ、ぼくは何をしたらいい?」

「今の時代はな、昔より便利じゃが、人とのつながりが薄くなりがちじゃ。けど、町や人をつなげる何かを作っていくんじゃ。それがあれば、どんな時代でも町は生き続ける。」


6. やらかし名人のバトン

「じいちゃんも昔は失敗ばっかりしとった。でもやらかしと笑い飛ばしながら進む人が最後は勝つんじゃ。」

「ぼくもやらかしていい?」

「もちろんじゃ!やらかし名人になれ。」


エピローグ

コウタはじいちゃんと手をつないで改札を出た。

ホームには次の新幹線が到着し、観光客たちが降りてきた。


徳山駅はこれからも人と町をつなぐ。やらかしと挑戦を繰り返しながら、未来へ向かって進み続ける。


これは事実に基づくフィクションです。
でも、あなたがこの物語から何かを感じてくれたら、それは本物です。

周南コンビナート夜景(CROSS SPACE紡 より)


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