今年買った年表本レビュー
はじめに
yuinoidです。よろしくお願いいたします。
この記事は人生たのベントカレンダー🎶 Advent Calendar 2023の15日目の記事です。
2022年12月から年表の編集をはじめました。もともと年表は漠然と好きだったのですが、自分で年表を編集していくにつれ、「年表」という存在に対して愛とも言うべき感情が芽生えていきました。
年表の資料として本を買っていたのですが、その延長として、年表を主な内容とする書籍「年表本」を買うようになりました。
今年いくつも年表本を買ったので、年表本のレビューをしてみたいと思います。
諸注意
「年表本」は年表を主なコンテンツとする書籍であるため、専門書や論集等に付録する年表については基本取り扱わないです。
順番は適当です。
アドベントカレンダー遅れてすいませんでした。
レビュー
年表・サブカルチャーと社会の50年 1968-2020〈完全版〉
百万年書房 TVOD・パンス 2021年01月 9090円
テキストユニット「TVOD」の一人であるパンスによる年表。TVODによる書籍『ポスト・サブカル焼け跡派』に付録としてあった年表の<完全版>という位置づけ。
これは書籍ではなくポスター。B1 ポスターの4枚組ですべて広げるには巨大なスペースが必要になる。1968年から2020年まで収録されており、1枚につきだいたい12年ずつの割合で、基本日付レベルでできごとが並んでいる。
「ジャンル横断的に項目が並んでいる」のは間違いないが、サブカルチャーを中心に年表が組み立てられている印象が強い。
オタクは持っていて損はない、というか、必読!!買え!……と言いたいところだが限定300部で現在売り切れて販売が終了している。眺めているだけで何時間でも過ごせそうな情報密度で、ジャンル横断的に項目が別れず並んでいるところがうれしいポイント。この並列に並ぶ構成は「時代」の雰囲気とその移り変わりを表現することに主眼が置かれたゆえのものであるように思う。
『岩波ブックレット 年表 昭和・平成史 新版 1926年-2019年』
岩波書店 中村政則、森武麿編 2019年07月 680円
岩波ブックレットシリーズのひとつで小冊子。
1926年から2019年まで、1年1ページの構成となっており、1ページ2カラムでできごとが並んでいる。それぞれのページ上部にその年の世相を表す写真が1枚載っている。基本的には日本のできごとを中心にまとめている。
コンパクトで手軽に買えるので入門編としておすすめ(?)。個人的にはボリューム不足だが、日本の近現代史を概観するにはこのくらいがちょうどいいかも。
『増補完全版 昭和・平成 現代史年表』
小学館 2019年07年 1980円
1923年から2019年まで収録されている。
買ったはずだけどどこかに行ってしまった...…見つかったら加筆予定。
『完全版 昭和・平成史年表 1926年-2019年』
平凡社 平凡社編 2019年07月 4500円
1926年から2019年まで、見開き2ページで1年の構成。一年につき「政治」、「経済」、「国際」、「文化」、「社会」、「世相」の6つの欄ごとに分けてできごとが並んでいる。基本日付レベルだが、「世相」欄のみ日付でなく当時の世相についていくつかのトピックを取り上げて記述している。
A4サイズで272ページとボリュームがある。索引付きで、資料として使うタイプの書籍といえる。個々のできごとについての記述は端的。図版は一年につき1枚の写真のみで、世相欄の一番下にレイアウトされている。
もっていて損はないといえるが遊びはなく「資料」然とした印象。デカくて重い。
『昭和・平成家庭史年表 増補 1926年-2000年』
河出書房新社 家庭総合研究会 2001年04月 4900円
家庭総合研究会編。1926年から2000年まで、1年を複数ページに渡って、1ページに「衣・食・住」、「家計・健康・教育」と「文化・レジャー」、「社会・交通・一般」の2つづつの欄に分けて記述している。左ページ左端の年号の下にその年を端的に表現した言葉が書かれており、右ページ右端の年号の下には「初登場」、「ブーム」、「流行語」が書かれている。コラムやデータバンクが豊富で、10年毎に小年表と代表的な流行歌、映画、出版物がまとめられている。駅弁の包装紙デザインや企業ロゴ、ファッションデザインなどみていてたのしい図版も多い。
700ページ以上のボリュームで鈍器本。
奇跡のような本。すべての人間はこの本を持っていなければならない。この本を作った人々は報われなければならない。
一番おすすめする本がこれ。「家庭史」という言葉に惑わされてはいけない。社史、業界紙、行政資料、地方紙などから情報を収集したらしく、遊び心ある面白い(もちろん、ただトリビアルというだけでない)できごとも多く取り上げられている。
たとえば、1949年の4月には「東京下町の子供たちに"肉体の門ごっこ”がはやる。女の子を吊るしてリンチする遊び。」1951年12月1日には「東大医学部、東京・上野周辺の浮浪者からシラミ1匹を10円で買いつけ。発疹チフスの研究のためで、親子3人で1,200円稼いだ"シラミ成金"もいた。」などなど...…。
騙されたと思って買え。
『科学史年表 増補版』
中公新書 小山慶太 2011年02月 980円
1601年のティコ・ブラーエ没から2010年はやぶさ帰還まで。
新書だししょうがないと思うんだけど、良く言えば概説的、悪く言えば大ざっぱ、という感じ。でもノーベル賞科学部門で13年ぶりに日本人受賞とかはやぶさ帰還とか載せる必要ある?科学史に興味があるなら買ってもいいかも、知らんけど。個人的には微妙。
『アメリカ文化年表 文化・歴史・政治・経済』
南雲堂 亀井俊介監修 2018年07月 3500円
986年頃から2012年まで。
19世紀の記述が多い。1960年代のカウンターカルチャーなど近現代史方面への興味からこの本を買ったのだが、その部分についての記述は薄く残念だった。クオリティが悪いとかでは全然ない。
『日本メディア史年表』
1837年から2015年まで、ジャンルを欄で分けず、電信、出版、新聞、カメラ、ラジオ、雑誌、映画、テレビ、インターネット、SNSなどメディアに関連したできごとが1ページに1カラム、日付レベルで記述されている。
化粧箱付きで資料として使われることを想定しているようだが、パソコン通信とか、ゲーム、ネット掲示板についてもカバーしており、こういったジャンルに興味のある自分は楽しく眺められた。
サブカルオタクは買っても損はない。
『増補新板 現代世相風俗史年表 1945-2008』
河出書房新社 世相風俗観察会編 2009年03月 5700円
できごと毎でなく、トピック毎に記述されている。世相、風俗を中心に書かれており、ページ下部で政治や経済、国際などのできごとが日付ベースで小さくまとめられている。
「はじめに」の書きぶりがおもしろい。「はじめに」に書かれている時代のことは知らないのだが、初版が出版された1986年には世相や風俗を主とした年表は当たり前ではなく、面白い試みとして受け取られたらしい。世相風俗観察会のルーツには「現代風俗研究会」の活動があると書かれているが、その現代風俗研究会の短期プロジェクトとして「流行歌研究会」が立ち上がり、流行歌研究のインフラ整備として本書が書かれたとのこと。「流行歌研究会」は当初、理論より実践としてカラオケを重視していたらしい。
『平成世相風俗史年表 1989-2019』
河出書房新社 世相風俗観察会編 2019年08月 4200円
上の『増補新板 現代世相風俗史年表 1945-2008』の後続本だが被っている内容(ページの分量を見ると3分の1よりちょっと多いくらい)があって、悲しい気持ちになった。
上記風俗史年表も含めて、他の年表に取り上げられないが、当時注目を集めたできごとが意外と取り上げられている。当時を生きた人からすると知っていることが書いてあり、そのためにその価値をうまく評価しづらいところがあるが、他の年表本と比較してみることでその価値が理解できる絶妙なニッチ本という気がする。最近の年表本ではサブカルチャーや「世相風俗」が取り扱われることは珍しくないからこそ。
まとめ
以上、10冊(一冊どっか行っちゃったから実質9冊)の年表本をレビュー、紹介しました。
専門書や論集には付録として関連するできごとについての年表がついていることがあります。そういった付属年表本についても情報を収集したいです。もし、年表が載っている本を見つけたらぜひ@health@pon.icuに教えてください。よろしくおねがいします!
インターネット上での年表についても知っていたらぜひ教えてください!
というかあなたも年表を作りましょう!年表を作るのはたのしいよ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?