7.1chゲーミングサラウンドヘッドホンはゲーマーを幸せにするのか
6.結論
特に工夫していない環境(安物ヘッドホン/イヤホン・スピーカー・スマホスピーカーなど)から乗り換えるのであればゲーム中の音から拾える情報量が増え、勝率に寄与すると考えられる。6000円以上のヘッドホンを初めて買う人にとっては価値ある買い物になるだろう。それ以外の人にとっては7.1ch以外の機能に魅力を感じるか否かで価値が決まる。
実験環境とは別にWarThunder Ground Realistic Battle(陸RB)モードで1ヵ月ほどプレイした印象。正面方向の定位や距離感を失うデメリットを取ってでも、側後方の音が強調される7.1chモードとイコライザーのメリットの方が大きかった。WarThunderは不意打ちワンパンによるゲームセットが常で、更に振り向き速度に厳しい制限が課されているルールなので、後方の敵の移動音を拾えるだけで死亡率が下がるためだ。
しかし陸RB以外のゲームモードでは7.1ch機能のデメリットだけが目立ち、さほど役には立たない。当然別のゲームでは使用感が変わるだろう。
WarThunderは戦車ゴッコや戦闘機ゴッコで遊ぶソフトであり、対戦ゲームととらえた場合のゲームバランスは無茶苦茶である。e-Sportsでは断じてない。残念(こんな記事を初稿から1ヵ月以上寝かせているうちにロシアが戦争を始めてしまった。ニュース番組では経済制裁の対露決済規制がどうなるのかという話題でもちきりだ。ばいばいWarThunder)。
5.実験結果
モードによる違いについて。
2chステレオに対して7.1chサラウンドをONにした場合、後方で音がするという現象を認知しやすくなった。一方で全体的に音のぼやけが激しくなり、前方の方位特定は概して難しくなった。また音の印象よりも音源が遠くに居る事が多々あり、遠近を判別しにくくなった。敵の音を認知しやすい点は良いのだが、実際のゲームでは味方が発する音やエフェクト音など複数の音が混ざりあい、位置特定の難度が上がる場面もあった。
次に機器の違いについて。
正面定位の精度についてはATH-A500の2chモードが優れていた。ARCTIS 5では「だいたいこの辺」の先が無い印象である。
音の雰囲気的な印象。ARCTIS 5はATH-500Xに比べてややこもった音である。これが一概に悪いかといえばそうでもない。ゲーム環境中で聞き比べた場合、AHT-500Xは良くも悪くもゲームゲームした印象を受ける音になる(モニタリングヘッドホンとはそういう性質の物らしい)。ARCTIS 5のこもり気味の音はリアル世界での反響や装具が耳を覆う効果などにやや近づいている気がしないでもない。また3000円から5000円程度の価格帯のヘッドホン的な音の方を好む人も居るだろう。
2.機材条件
SteelSeries ARCTIS 5(USB接続)とATH-A500(光出力-アンプ-ミニプラグ)をWindowsPC環境で聞き比べた。エージングやらアンプやらといった宗教的要素は無視する。ARCTIS 5は実売価格11000円、ATH-A500は購入当時15000円程度であり、価格帯的に近いと考えて比較対象とした。
なお2022年現在ATH-A500の後継機ATH-A500Xは1万2000から1万5000円程度で販売されている。
3.実験環境-WarThunder 戦車トレーニングモード
WarThunderは覇権ゲームのWorld of Tanksと類似の戦車戦ゲームだが、こちらは多くのFPSと同じように敵チームのプレイヤーにアイコンが表示されないモードがウリとなっている。トレーニングモードではアイコンの表示非表示を選択できる。
陸戦トレーニングモードには固定配置の戦車、移動する戦車に加えて航空機が飛んでいる。今回はこの環境を用いる。
4.方法と効果判定
ARCTIS 5の機能制御ソフトSteelSeries GG側7.1chサラウンドモードONとOFF(2ch)を切り替える。
WarThunderサウンド設定の7.1chとステレオを切り替える。
ATH-A500Xでも条件を変える。
目を閉じてマウスで飛行機を追う。中央にとらえたと思ったら目を開ける。
更に1ヵ月ほど設定を切り替えながら使用を継続する。
フィーリングで優劣判定をつける。気分である。なんとなくである。あまり真に受けないで欲しい。続きは"5.実験結果"へ。
7.脱線1-イコライザー
機能制御ソフトSteelSeries GGにはイコライザー機能が付いている。これを弄れば欲しい音情報を拾いやすくなり、どう考えても有利にゲームを進められる。7.1chのON/OFFはプレイスタイルや好み次第だが、イコライザーに関しては弄らない手はない。ただしイコライザーを利かせれば利かせるほど音のこもった感じが増してしまう。
音楽鑑賞に用いる場合はフラットがベターだ(そもそもその用途に向いたヘッドホンではないが)。
8.脱線2-音楽鑑賞用として
音楽鑑賞用としてARCTIS 5を購入することは全くお勧めしない。ヘッドホン側の問題か、PC側の問題故かは判らないが、稀にノイズが乗る。この場合はUSBジャックを抜き差しすると治る。ゲーミングには全く支障ないが、音楽鑑賞用としては致命的だ。
ATH-A500は決して高い価格帯のヘッドホンではないが、ARCTIS 5と同じ音源を聴くと笑ってしまうくらい別物だ。ARCTIS 5は全体的に音が曇っており、特に打楽器独特の響きは感じられない。金管楽器も風邪気味だ。感覚としては実売5000円程度の"音の再現性能の低さを妙な味付けで胡麻化す"ヘッドホンと大差ない。
EDMなら粗が目立ちにくいのではと聞き比べてみたが、ある曲ではATH-A500で聞き取れるモジュレーション(音程の振幅)がARCTIS 5では全く判らなった。エディターさんの工夫が隠れてしまい曲の印象がチープに変わるので、やはりお勧めは出来ない。
ある程度ちゃんと音楽鑑賞したいのなら3万円程度を上限に、もう少し上の価格帯のある程度ちゃんとしたヘッドホンを買った方が幸せになれるだろう。その価格帯を超えたり、アンプだ電源だと言い出したら完全に宗教なのでノーコメント。
7.1chヘッドホンをうたう製品の中にも実売3万円程度の高グレード製品なら良い物もあるのかもしれない。無いかもしれない。とはいえ音響関係はノウハウの塊なので専門メーカーが圧倒的に強いものだ。
9.ARCTIS 5のそのほかの事
左ハウジングのホイール型ボリュームコントローラーが意外と便利。音量を調整したい場合にすぐに変えられる。ハードウェアミキサーが付いていると考えればお得だ。ただし良く言えば手が届きやすく、悪く言えば誤操作しやすい。とはいえ誤操作したら直せばいいだけなので特に困りはしない。
USBインターフェースにはチャット音声とゲーム音のバランス調整ができるダイヤルが付いているが、使用していないのでレビューできない。こちらもやはりハードウェアミキサーととらえればお得感がある。
ARCTIS 5のワイヤーはATH-A500のそれに比べて細い。正直安物ヘッドホンと大差ない感がある。当然耐久性は疑問であり損耗の心配がある。しかし良い点もある。このワイヤーはヘッドホン本体部分から着脱式であり、SteelSeries公式がサプライとして提供している。このサプライ体制は非常にありがたい。最も損耗が激しいと考えられるミニプラグワイヤー(ARCTIS PROメインヘッドセットケーブルパック)は$9.99。専用USBインターフェース(ARCTIS 5 CHATMIX DIAL)は$29.9。発送手数料は$30と少々高いが、イヤーパッドは1年に1度くらいは交換したいものなので、予備ワイヤーと併せて数個買い込んでしまえばいいだろうお。
このサービス体勢を考慮に入れればARCTIS 5という安価なモデルではなく、もっと上のモデルを買った方が長く幸せに付き合えるかもしれない。家電は消耗品だ。1000円やら3000円やらのまがい物をとっかえひっかえするよりも、ちゃんとした物を買って手入れしながら長持ちさせた方がエコというものだ。
2021年現在、ゲーミングPCやゲーミングキーボード・ゲーミングマウスなど「ゲーミング~」と呼ばれる製品の中には、色を変えながら光るLEDライトが搭載されているものが多く、逆に七色に光る製品等を「ゲーミング~」と呼んでみたりするちょっとしたジョークが流行っている。御多分に漏れずARCTIS 5にもハウジングにLEDライトが内蔵されており、専用アプリから色や色の変化パターンを制御できる。自身を撮影しながら配信する人には良いのかもしれない。個人的には正直どうでもいいので消灯している。
1.前文という名の実質蛇足
世は大e-Sports時代!とはならなかった2021年も終わり、いかがお過ごしでしょうか。東京オリンピック2020で盛り上がりましたよね!4兆円もかけたんですから、皆分け隔てなく元気になりましたよね!復興しましたよね!税金突っ込んでやったイベントなんですから、当然中身は公開されてるんですよね?アカウンタビリティって奴です。誰がどう走ってどう踊ってどうコケたみたいな。まぁ、かけっことか興味ないんで見てませんけど、国民の権利ってことで。そういえば最近は北京のスケートでアクシデントがどうとか言ってますね。テレビで言ってました。当のテレビはその話題でトークしながらもその"アクシデント"のシーンを流さないんですよね。不思議だなー。不思議だなー。シーンを流しながらトークすれば理解しやすいのにね。なんでだろー。不思議不思議。人類は不思議です。
ここ10年間ほどに渡って特定の団体がe-Sportsを五輪競技に採用させるために、そして日本代表という枠組みを作るうえでIOCに取り入る為の工作を行う過程で、日本においてe-Sportsはかなりダーティー(違法)なものという印象論が宣伝され、浸透してしまったわけですが、そうして獲た日本のe-Sports代表団体の地位は美味しかったのでしょうか?その果実はゲーマーにも共有されるんでしょうか?いや、されました!たぶん!きっと!ありがとう!某団体!知らんけど。でも開催イベントは観てますよ。
誰かこの辺の歴史まとめてくれないかなー。日本のスポーツ史の汚点を理解する助けになると共に、彼らのように「この領域は違法だ!だから我々が仕切る!」というヤクザみたいな論理でプロジェクトを進めてしまうという愚を繰り返さない為の戒めともなるでしょう。
オリンピックオリンピックとみんな騒いでますけれど、オリンピックが文化に与える影響なんてコスパ最悪ですよ?日本のインテリ官僚さん。
五輪競技になったところでカーリングやらスケボーやらみんなやってます?健康増進してます?してないでしょ。競技代表者がメダル取ったからといって誰がトランポリンや卓球なんてやってるの?やってないでしょ。それによって国民の医療費下がりました?五輪と健康寿命や医療費を結び付ける定量的データあります?それがスポーツ振興や五輪招致/運営を国が行う事を合理化する為の論理的な柱ですよね?奇麗な世界の想像はblogとTwitterと同人誌の中だけにしてくれないかな?お花畑の皆さま。
当然e-Sportsが五輪競技化されたところで浸透なんてしませんよ。ホッケーや近代五種なんて、そのへんの微妙に売れてるレベルのゲームのプレイヤー人口と同じかそれ未満でしょ。そんなもんです。五輪という興行は現実として、神聖なものでも、文化的柱でもないわけです。じゃぁ何なのか?私は答えを示しません。
私としては、e-Sportsはもう少し人々の娯楽の中に浸透するかなと期待していたのですが、実際はなかなか厳しいですね。とはいえPCゲーミングのみならず家庭用ゲーム機や携帯端末でもe-Sportsの範疇の娯楽は(時代遅れのオジサン達が好むと好まざると)しっかりと根付いており、関連するガジェットがちゃんと開発され続け、リリースされ続ける現状は大変喜ばしい事です(国内メーカー国内ブランドが苦戦している点や粗悪な模造品の横行など、困ったこともありますが)。
そんな中、結構昔から7.1chサラウンドヘッドホンという俄かには理解しがたい製品群が現れ、ユーザーを魅了してきています。
ゲームにおいて音が重要である事はファミコンフィーバーの頃から明らかであり、昨今はネットワークゲームの隆盛の中で音が勝敗を決める情報としてそこそこ注目を集めています。PUBGやその模造品、フォートナイトやApex Legendsといった覇権ソフトは、音の位相で敵プレイヤーやイベントの位置を察知し、その情報を適切にプレイに反映させられれば、総合的に優位にゲームを進められる作りになっています。
間抜けな負け方をしたくなければちゃんと両耳で音を聞け。そういう時代です。ばいばいゲームセンター。聴覚障碍者厳世界。バイバイバリアフリー。そんな時代ですから、7.1chサラウンドヘッドホンという商品への期待は(売る側がどう思っていようとも)魅惑という形でゲーマを襲います。そんなわけでほいほい魅了されてしまった私が被験体として記事を書きます。