(後篇)IEOの残念な出落ち感とその可能性
こちらの続き。
800分の1の衝撃
仕組み上、リスクを抑止できるはずのIEOであるが、上記ほど酷いものでなくとも、IEO直後に10分の1程度に値下がりするトークンも散見されるようになっている。
このような体たらくを取引所や発行体の属組織的な姿勢の問題に帰することは簡単ではあるし、実際に情報開示の努力がBinanceなどの大手取引所と比べて全く足りていない点などはあるのだが、個人的には初期のIEOの仕様にこういった詐欺まがいの行為がつけ入る隙があったように思う。
BitTorrent IEOの問題点
Binance自らがまとめ上げているレポートにいくつかの問題の萌芽が読み取れる。
・プライベートセールのロックアップ条件が書かれていない。事実、エアドロップで配布されたトークンとともに、IEO直後に取引所で売買されている。
・前項目と関連するが、IEO後に取引所での売買対象となるトークンの総数がどうなるのか、このレポートからは読み取れない。
・前篇に書いたとおり、かなり高めの時価総額かつそのマイナーな割合だけがIEOに供される設計であるが、そのバリュエーションの根拠が一切書かれていない。著名なプロダクトではあるので「察しろよ」ということなのかもしれないが。
上記のような脆弱性は、後続の発行体と取引所群にものの見事に利用されている。
ほとんどの発行体がバリュエーションの根拠は当然ながら、取引所での売買対象となるトークン総数、既存ホルダーのロックアップ条件など、全く情報開示しないまま、100億円以上の時価総額で6%前後のトークンを売り出すのである。
冒頭に述べたような暴落銘柄が登場するのも時間の問題だったと言える。
IEOはダメなのか?
それではIEOはダメなのか?
個人的にIEOを改善しつつマーケットも広げる腹案はあり関係者を調整しつつはあるのだが、正直、取引所の姿勢に依存すると思っている。
上に挙げた現状のIEOに問題点はそもそもIEOに必須の要素ではない。
過去に割当されたトークン毎にロックアップ条件をきちんと提示し、IEO後に取引所での売買対象となるトークン総数をIEO前に明確に公開し、バリュエーションの根拠も財務的なものが難しいのであったら、ユーザ数などの定量指標、バリュープロポジションなどの定性指標を用いて、それなりに確からしく説明すればいいだけの話である。
ビジネスモデルに関してもそうだ。現状のハイバリュエーション、ハイイールドを前提としたモデルに耐えうるプロジェクトは稀であり、そうであるが故にビジネスとして成立させるためにハイバリュエーション、ハイイールドを目指すという悪循環が起きている。
個人的には、バリュエーションはともかくローイールドで成立するモデルを検討すべきだと考えている。ローイールドでは手数料ビジネスとして成立しないと言うのであれば、案件数を増やせばいいのだ。増やす方法を考えればいいのだ。
そもそも、ICOにしてもIEOについてもワードの成り立ちからして、株式をなぞらえている。その株式の大半がローイールドでありながらも多数のステークホルダが不満もなくホールドし続けているところにヒントはあるように思う。
既に着手しており、詳細を書けないことがもどかしいが、最終的には取引所の方々のクリーンかつ持続可能性の高いビジネスへの姿勢に依存しているため、なんとかうまく調整してきたいところである。