Y.M.W.E. 第三回定期演奏会を終えて
こんにちは。YMWE公式マスコットキャラクター兼雑用係兼指揮者の、アマチュアローカルタレント風英語系Youtuber見習いの若山翔です。
2024年7月21日に行われたYMWE第三回演奏会について振り返ってみたいと思います。ちなみにこの振り返りは去年もやろうとしたのですが、挫折しました。今回は最後まで書けることを祈っててください。
そうそう、そもそも、最初から何かを書こうとして挫折したのを思い出したので、そうならないように、一曲ずつ何かしら書いていくスタイルにしていきたいと思います。こうすれば大丈夫だね。
1.ジュビリー序曲
「リハビリバンドがアタマにやる曲じぇねぇだろ」というのは練習始めてしばらく経ってから頭の中で聞こえてきたツッコミだったのですが、なんというか、予想を遥かに超えていい仕上がりになりました。
記録によると昨年の7/30、つまり第三回演奏会に向けてのキックオフの練習からジュビリーを入れていたので、まるまる一年練習したことになります。 最初から入っていたということは、若山がどうしてもやりたかったのかなと思います。Hだっけ?初めて聴いた時からずっと、あのロイヤルミルクティーみたいなメロディーがものすごく好きなんですよね。
あとは、たまにキツめのスパーク成分が欲しくなるというか。合奏で、「トップスピードでたのむ」という言葉を使ったのはこの曲の練習が初めてじゃないかな。 オリ急にするかジュビリーにするか一瞬悩んだけど、やっぱジュビリーにして正解だったよね?
スタート時と本番のギャップが一番激しい曲だったのではないかと思います。スタート時の録音をむしろ聴いてみてぇな。
2.ワシントン・ポスト
スーザはね、絶対一曲はやるって決めてるんです。やっぱり吹奏楽の良さみたいなものを、歴史上、最もよく知り抜いていた人というのは、この人以外にいないでしょうからね。
あんまり練習できませんでしたが、このへんが蓄積なんだろうか。これまで「星条旗よ永遠なれ」「海を越える握手」「忠誠」とやってきたもんで、みんなスーザに慣れてきてるなという感じがします。いい音でした。
次は「マンハッタン・ビーチ」でもやろうかな〜
3.星屑パレット
「たなばた」に繋がるモチーフの曲を探している、と、吹奏楽に詳しいとある友人に相談したところ、この曲を提案されました。非常に美しく繊細な曲だったなと。
合奏では「脂抜きの音でたのむ」と言ったのですが、もっとアレかな「水彩画のように」のようなマシな表現を心がけるべきでした。ボキャブラリが足らんよね。
ヴィブラフォンの音をピアノとグロッケンで無理やり作らせてすみませんでした。ソプラノサキソフォンはもちろん、フルート・アルトサキソフォン・フィンガーシンバルのソロ、ブラボーでした。
4.たなばた
枚方とか交野って、たしか七夕伝説発祥の地なんですよね。そして、吹奏楽界で知らぬものは居ない人気作曲家、酒井格は枚方出身なのです。
そのうえ、われわれの第三回演奏会の日程が、「2024年7月7日」になりそうな感じで、たぶん、吹奏楽経験者100人中2,587人は思ったことがあるであろう、
”たなばたの日に「たなばた」をやればSAIKOUなのでは?”
を、どれ、いっちょ俺もやってみるか、という計画だったのでした。他の本番が入っちゃって7/21に日程が変わったんですけど、耳がたなばたの味になっちゃったので、すぐに楽譜を買いました。
この曲も最初の合奏から取り上げました。
この曲に現れる主要な主題をそれぞれ「格(いたる)」「文部省」「遠距離恋愛」と名づけ、元ネタと推測される曲を参照しつつ、さらに、「二重の夢から醒めた」というストーリー展開で合奏を進めていきました。
結末は悲しい物語だったのですけれど、各人が抱えている歪んでいる青春像みたいなものが演奏にうまく投影されたのではないかと勝手に思っています。というか、音楽はそうあるべきではないかと考えます。
ある日上岡敏之が振る大フィルの「ばらの騎士」組曲を聴きに行って、「こんな自由な解釈があるんだな」と感心し、自分も真似してみようと、「たなばた」に関してはかなり自由に楽譜を解釈しました。
上岡のような一流の指揮者ならまだしも、僕のような未熟な音楽家が行うそういった行為に関しては、おそらく良く思わない人がプロアマ問わず多いかなと思いますが、YMWEのみなさん、許してくださってありがとうございます。
いうまでもないですが、死ぬほど楽しかったです。
織姫と彦星を模したA.SaxとEupに関しては、終わったあと立っていただくつもりだったのですが、すいません、アタマ真っ白で忘れていました。このへんのステージワークがダメなところは改善点だと思っております。お二人ともすばらしいソロで、中間部のムードをしっかり作ってくれました。
サキソフォンアンサンブル・Trp・Trb・Fl・Pic・Timp・S.Saxのみなさまのソロもブラボーでした。
改めて音源聞いてみて思ったんですけど、Hrの最後の咆哮、ほんまに4人やったんか?
実はこの曲はS.D.が徹頭徹尾心臓の位置にありました。棒とホールを結びつけてくれたおかげで理想のテンポが作れました。
5.小組曲(リード)
経緯は長くなるので省略するとして、指揮のtmiさんに指揮をお願いするとなった時に、「吹奏楽指揮未経験の若い音楽家に、一曲お願いするとしたらどういう曲が最善か?」という問いを立てました。
何事でもそうですが、「初めて」は大事なものです。 若山の場合、吹奏楽で初めて指揮した曲が「ディズニー・ファンティリュージョン」だったこと、オーケストラで初めて指揮した曲が「こうもり」序曲だったことは、その後の指揮者人生に決定的に影響してい(ると思う、たぶん)ます。
別にアマチュアやからそんなん気にせんでええやんか、と言う人がいるかもしれませんが、僕が思うに、いや、逆に、プロの指揮者は場数が多いから(というか、わたしの定義では、「場数が多い人のことをプロと呼ぶ」のですが)そういうのを修正できるんですよ。アマチュアだからこそ勉強する曲は(可能な限り)選ばなければならない。 そして今回のケースは、比較的「選べる」わけですね。
いろいろと思考を巡らせた結果、結論は、アルフレッド・リードしかいない、となりました。理由は、「いま自分が、はじめて吹奏楽を指揮するとしたら、誰のスコアを勉強したいか」という基準です。 リード以外、いますかね? リードのスコアで勉強したことは、吹奏楽のすべての領域で役に立ちます。
その上でtmiさんに「インペラトリクス」と「小組曲」のどちらかでどうかと提案しました。結果、小組曲を選んでくださったわけですが、うん、こっちのほうでよかったですね。 うまく説明できませんが、この曲が持つ温かな雰囲気や、小編成でもしっかり響くスコアが、YMWEというバンドの今のメンバーと、コンセプトに非常に合致していたと思います。
という感じに、いろいろな選択の結果、もろもろ、なんかうまいこと行ったなぁ、というのを、控えめに言って、「奇跡」とわれわれは呼んでいるわけですね。
6.コロニアル・ソング
ところで、「もっと評価されていい」というインターネット・ミームがありますが、あれはよくない。 本来、物事の評価というものは極めて相対的なものだから、他者に評価を強要するようなレトリックはあまり好きではないんですね。ただ、気持ちはわかるというか。「この曲はもっと評価されてもいい」という心情はわかります。
僕にとっては、この、「コロニアル・ソング」は、「もっと評価されてもいい吹奏楽曲」の最たるものです。 でも、逆に、評価されて欲しくもないとも同時に思っています。こういう物言いも微妙だけど、「わかる人だけわかってくれたらいい」というか。っていうか、わからない人は無理にわからなくてもいいと思う。
そういうと突き放すみたいだけど、いま、この曲の良さがわからなくても、いずれわかる時がくる、そういうものじゃないかな。あるいは、来ないかもしれない。それはそういう人生で良いのです。
僕にとってはワインの味がそういうものでした。
逆に、僕にとって、トマトの味の良さは、たぶんわかる時が一生来ない(来るのか?)し、それはそういう人生ということ。
ところで珍しく「振り方」についてかなり悩んだ曲でした。分割をするかどうかということ。Shionの定期演奏会を見に行った時、ダグラス・ボストックがこの曲をどう振るか目を皿のようにして盗んできたのだけれど、アッサリ分割していた。 ボストックがそうなら、それが正解で間違いない。
ということで、分割してみたものの、途中である思いが去来しました。それは去年の同志社交響楽団の定期演奏会で、フランクの交響曲をやっていて、フリー・ボーイングの箇所があったんですね。それが心のどこかに残っていて、うーん、まぁちょっと話は違うんだけど、拍感を強制していくような振り方もよくねぇなぁと思ったんです。 なので、一旦分割を止めました。
で、前日にまた分割に戻したんですけど、結果的に、本番の録音を聴いてみたところ、ちょうどいい塩梅になったかなと。一糸乱れぬユニゾンは作りたくなかったけど、インプロヴィゼーションの感覚は残したかった。それをソロではなくアンサンブルで作るということの近似値的な解はこのへんにあるんじゃないか?という結論です。 冒頭の流れを作ってくれたFg.とT.Saxに感謝です。それから、A.SaxとS.Saxがユニゾンであったことにどれぐらいの人が気づいただろうか?
7.イギリス民謡組曲
指揮のクハ481氏(通称:ns)には、YMWE第一回演奏会から、演奏会のメインにあたる「古典中の古典」を指揮していただいています。理由は、僕が吹きたいからです。その点に関して、彼には申し訳ない思いも若干あります。というのも、彼もこのへんの曲は吹いてみたいでしょうからね。
しかし、ホルスト1・2組を経たあとの、この、イギリス民謡組曲。nsくんは、はじめ、「どうもこの曲は好きになれん」とこぼしておりました。最終的にその印象がどうなったかはわかりませんが、本番は非常にのびのびとした指揮・演奏だったのではないかな。好むと好まざるに関わらず、棒がイギリス音楽にアジャストしてきているなとひしひしと感じておりました。
イギリス音楽もいろいろあるけど、古典吹奏楽におけるイギリス音楽の一つの側面には「素朴さ」とでも言うべきものがあるんじゃないかと思います。nsくんの指揮を大学時代からずっと横目で見てきた人間って、僕と、北山さんくらいだと思うんだけど、彼の音楽作りというのはそういった素朴さとマッチしている気がしませんか? それって、「たなばた」を聴いたらわかると思いますが、たとえば僕なんかは逆立ちしてもマッチしないことなんですよね。
指揮者が一人だけのバンドというのもそれはそれで良いのだけれど、それぞれがスペシャリテを持つシェフが複数いるレストランも悪くないのではないかなと。
そういうのを目指していきたいですよね。 1週間前からようやくソリストが集まり出すという異例の状況の中、Pic.・Cl.・Trp.は堂々たるソロを披露してくれました。ブラボー。
アンコール マーチ「ベスト・フレンド」
長文にお付き合いいただきありがとうございました。アンコールで演奏したこの行進曲に関しては、作曲者である松浦自身が朝日作曲賞入選に際し寄せた言葉を引用しておしまいにします。
これは、僕がこの曲を毎回アンコールに据えている理由を雄弁に語る文章であるのみならず、音楽の本質を端的に表現した名文です。