小説「怒りの葡萄」を読んで
寝る前に少しずつ読んできた。
ちょうど、連続テレビ小説を見るように、
ほぼ毎日、短時間でも続ければ、
長い小説でも、二、三か月で読み終わることができる。
最初は、面白くないテレビを見るより
こっちのほうがいいと思って読み始めたもの。
長編小説「怒りの葡萄」は、
オクラホマの農民家族13人が、
そこに住めなくなり、追われるようにして
カリフォルニアを目指す旅に出る。
行く先々で、様々な困難に遭遇する。
が、
最後に残ったのは7人。
小説だから、豊饒な細部(ディテール)が、あれこれ味わえるのだが、
中でも、キーワードというか、
母親が言った言葉、
どんなことがあっても、
「ずうっと生き続けるだよ」が、
この小説のテーマではなかろうか。
最後の、水害から避難していくシーンも、
今の日本の、
いや、世界の、現代の苦難まで考えさせられた。
繰り返しになるけれど、
スタインベックの長編小説「怒りの葡萄」は、
苦難に次ぐ困難、災難、艱難の連続。
「艱難、汝を玉にす」というが、
そんなものを期待して読んでも、
見当たらないほど、救いようのないドラマが続く。
といっても、なぜか暗い小説ではない。
むしろ健康的で明るい。
それは、登場人物すべてが、
大地を踏みしめ、土に根差した生活の中で、
絶えず前向きに、生き続けようとしているからではなかろうか。
それぞれが、
未来に向けて、何かを目指し、動いている。
そんなアメリカの名作を、
少しずつ読んでいったら、あっという間に読み終わった。
蛇足だけれど、
結局、
我々は、
大地に生まれ
大地に育てられ
そして、
悠久の大地に戻る
のだが、
便利な文明の恩恵に浴すれば浴するほど
この自然なる大地から遠ざかっているのではなかろうか。
よって、文明によってもたらされる病は、
生来、人間に備わる、この「大地性」を取り戻すことによって
癒されるのではないか。
と、畑の雑草を、鎌で刈り取りながら
読了後に思った次第。