異世界美少女受肉おじさんと レビュー
オッサン二人が勇者として異世界に送られて、片方が美少女にされてしまう話。
オッサンたちを異世界に送った女神によって、二人には互いに魅了される呪いがかけられてしまい、一線を超えてしまうことを恐れる。呪いを解くには魔王を倒すしかない、タイムリミットが来る前に急いで倒せ! というあらましだ。
片方のおじさんその1、橘日向は普通のサラリーマンで非モテ、オタクの楽観主義者。転生の際、酔っ払って絶世の美少女に生まれ変わりたいと愚痴ったせいで美少女にされたのだが、金髪碧眼のやや釣り目の顔立ちが男口調で喋る様は、いかにも勝気なお嬢様。だがおじさんが与えられた能力は美貌の他に、異性を魅了して言う事を聞かせる能力だけである。体力や強度は普通の人間かそれ以下であるため、誰かに守られねば生きられない。普段勝気な女の子が実は普通の村人より弱いというギャップが庇護欲をそそり、元オッサンという事実などどうでも良くなる。いや、寧ろ元はそれなりに体力のある男性であった過去までもがギャップとなる、なにをどう足掻いても可愛いに繋がってしまう罪な存在だ。
おじさんその2、神宮寺司はそのままの姿での転生で荒事担当。橘とは違い、エリートサラリーマンで女の子によくモテるイケメンである。融通が利かない頑固なところがあるが悪には人一倍敏感で、弱気を守り強きをくじく、転生する前から勇者みたいな人間だった。その高潔さと強さに橘は憧れを抱いていた。さらに神宮寺は自分を取り合う女たちの醜さを見て女嫌いであり、橘が穢されないようにと付き合う女を品定めする、自分と違い柔軟に現状へ対処する彼の性格を尊敬の念を抱くなど、生まれながらにして橘だけの騎士になるために生まれたような存在だ。
そんな転生する前からフラグが立っている二人組は、見えないタイムリミットを恐れつつ魔王討伐に向かうものの、上記の通り橘は庇護欲で、神宮寺は理想的な騎士の振る舞いで、意図せずとも互いを魅了してしまうためどんどん意識してしまうのだ。また橘は自分の柔軟性を優柔不断、神宮司は自分の初志貫徹な所を頑固で融通が利かないと、それぞれコンプレックスに思っている。だが二人は互いの欠点を見て逆に憧れを抱いており、互いの欠点を受け入れて歩んで行ける、パートナーとしてこれ以上ない素質を二人は兼ね備えているのだ。
極めつけは終盤、神宮司が橘の好きな所をずらずら並べていくシーンがあるのだが、その内容の殆どが女になる前に感じていた事であり、姿形など関係ない神宮司の橘に対する深い愛を感じさせる。そしてこの辺りになるとどんな鈍い視聴者でも気がつく。タイムリミットなど存在しなかったのだと。