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"普通のWeb制作ディレクター"にならないための6つのキヅキ

頂いた名刺の管理に困る山下(@ymst9991)です。

【自己紹介】
昨年2018年はWeb広告代理店で営業・広告運用。制作が必要な場面では、制作会社さんにお任せ(という名の全振り)。今年2019年の1年間、Web制作会社で50商品以上のLP制作・EC制作に携わり、ディレクション領域を行ってきた。

ぼくは「ディレクター」「ディレクションを担当している」と名乗って仕事をしています。「制作領域」に取り組むときにディレクターと示すことで、「ああこの人に言ったらだいたい大丈夫なんだな」と対外的に分かりやすく、スケジュール管理など任せておけばいいや、というポジションが必要だからです。

一般的に、Webディレクターは「上流工程」と言われ、下流にいる専門家たちが仕事をしやすくすることを常に意識し、社内外へ状況を推し量りながら進めることが重要だとされてきました。

具体的には、クライアントの要望を取りまとめることでWin-Winのバランスが崩れた要求や状況によっては「矢面」に立つことでデザイナーやコーダーなどが作業に集中できる環境を作り、そのプレイヤーにしかできない専門領域で最大限の成果物を出す。それにより、クライアント・会社・自分に還元する。自ずとデザイナーやコーダーは上流工程にジョブチェンジすることがキャリアアップにとって良い、といったふんわりとした空気感があるのではないでしょうか。

ディレクションの定義はあきれ返るほど様々。

【Webディレクターとは?】
Web業界においてプロジェクトを監督・指揮・管理する人を指します。WebプログラマーやWebデザイナーなどのWeb制作に関わるスタッフ達をまとめ、クライアントの要望にかなったWebコンテンツを作り上げることが、Webディレクターに求められる役割です。プロジェクトの進行管理をはじめとするWebコンテンツ制作の責任者がWebディレクターといえます。
(引用元)Webディレクターとは?

Web業界に入って1年半が過ぎましたが、「Webディレクター」という役割ほど人口が多いわりに案件やその人の捉え方によって取り組みの領域にムラがある職種にはまだ出会ったことがありません。

広告代理店時代は、制作会社のWebディレクターと多く出会ってきました。「クライアントとのやりとりに四苦八苦」「終わりのない工数管理と調整」などの話を聞き、知らないままになんて恐ろしい職業だろうと震えていました。「Webデザイナーだったけどディレクターになった!」という人にも出会いました。そうか、デザイナーの上に立つお仕事なんだと。

どういう構図なんだ?と想像すると、「クライアントと社内の専門家たちの顔色をうかがいながら、自分は間に挟まれ、納期を目標に、ただ遂行するために毎日胃を痛める」。それはまるで、倍ほど年が離れた社内お局様にいかに気持ちよく仕事をしてもらうかあの手この手で攻略しないといけなかった新卒時代のような地獄だなぁと思い至るわけです。(これはこれで必要な力なのですが…)

現在の軸となっている考え方

nanocolorは創業以来10年間、ずっと代表の川端さん(@nanocolorkwbt)がディレクション~デザインまでやってきていたので、ディレクションのノウハウのようなものはありません
いつも話の初めには「一般的な制作会社は分からないけど、ぼくはこうやってきた」という言葉。それを信じ、まずは見よう見まねでやってみた。で、「あれ、知っているディレクションとは違う…」と早々に気が付くことになりました。

Webデザイナー・フリーランスの方で、もし今から「Webディレクターを目指したい!」や、すでにディレクションをやっていて「もうやってるがシンドイ!」などと考えている方もいるかと思います。今回は、ぼくがこの1年で学んだWebディレクションに対する考え方を公開していきます。

キヅキ① 誰であろうと市場に価値を提供する

何事も根本が大事です。カッコいいビルを建てようと緻密にデザイン・設計をしても、土地が緩ければ日の目を見ることもありません。
2019年、Web制作はまだまだ需要があります。なぜ「Web制作」がこれほど求められるのか?会社のブランドサイトの場合もあれば、売るためのECサイトの場合もあるでしょう。これらはすべてマーケティングと呼ばれる領域のひとつでしかありません。制作ディレクションは、マーケティングの一部分なのです。

【何のため?】
ブランドサイト:ブランディング・PRなどの発信拠点・受け皿として必要
ECサイト・LP:短期的~中・長期的な施策に基づいた販売計画のために必要
→いずれもモノを売る「マーケティング」の一部だから、商売を加速するために必要な場合がある!

ぼくらはWeb制作に携わる以上、それは商売の一部の責任を負うことと同じ意味だと考えています。Web制作のお取組み前のヒアリングでは、世のディレクターのほとんどが最終目標を共有しているはず。もっと売りたいだとか、かっちょいいサイトにしてぇんだとか。なのに、スタートすると勧めることに躍起になってしまい、ここがおざなりになってしまうことが多いと感じています。そういう意味では、全員Webマーケターでもあるのです。

ぼくも案件山積みになり早くラクになりたいと思ってしまうと、今でも油断すると「納品がゴール思考」になりかけることがあります。でも、クライアントにとっては発注前から事業はスタートしています。「制作の成果物」を受け取って終わりじゃない。Webサイトは、これから事業が存続するかどうか、助けてくれる手段の一つになることがあります。そして、その一部を任されたぼくらは、クライアントの向こう側にいるユーザーにどう届けるかを死にモノ狂いで考える必要がある。

回避するには?例えば、もっと売れるための"見込み"を探るためのコミュニケーションを続ける。

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計画的な施策から売れる提案は出にくいと肌感覚的に感じるのですが、逆に面白い提案は計画的な施策なしでは実現しません。施策実行中は、つい目標をおざなりにして「納品ゴール」に終始してしまいやすくなります。そんな時は、もし自分がお金を支払う側だったら**、といつも置き換えるようにしています。

これらは経営に近い人ほど、呼吸をするように当たり前の思考として持っています。メンバーが全員経営者の会社やチームはまず無いので、現場が感じているメリット/リスクのバランス感覚の乱れが目標の乖離が発生しトラブルが生まれやすいんじゃないかなと思ってます。あなたが発注者側だったらどうでしょうか?「私の仕事は納品して終わりだから」という会社にお金を預け、制作を任せられますか?

現場のディレクションでは、構成や動線設計はもちろん、デザインやブランドメッセージの見せ方ひとつひとつに優先順位を意思決定し、ローンチ後の時間軸ごとに売り上げにかかわる部分とそうでない部分を都度ジャッジしていくことが必要です。この責任領域の広さに、ディレクション業務の価値が生まれると考えています。これはキヅキ③に続きます。

キヅキ② 自分ができる領域を見極める

今まで関わった外部のディレクターの中には、クライアントの売り上げアップのために何をすべきか?を考えている方もたくさんいました。緻密な販売設計を行い、必要であればデザイナーが直接、「いやそれじゃ売れないでしょ!」と言い合う環境を持った会社もありました。(nanocolorはコチラを目指しています。)

しかし、ぼくが駆け出しの頃にそうであったように、「この人は何のためにいるんだ?」という工数調整に終始してしまうが故に、本来の最終目標を見失ってしまうディレクターとの出会いもたくさんありました。

【取り組む上でリスクが高いディレクション要素】
・広告を企画して欲しいとの依頼を頂きながら、情報が何も降りてこない
・サイト運用上の目標数値が無い、あるいは非現実的な目標
・デザインだけの依頼だったが、構成の完成が見えず一生着手できない
・意思決定をクライアントに投げっぱなし(だいたい「ボール」などと表現されます)
・「なるはやでお願いします」と抽象的な期日設定

お互いが求めているディレクションの領域を合意し、これらを達成できていないとお取組み自体も継続が難しいことが多い印象です。この場合、ディレクター自体は悪くなく、その会社がクライアントから任されている領域未満の能力の人が担当についてしまっただけ。

例えばある日、売れる曲を作ってくれとぼくにお願いをされても、やってみたいけれどやったことが無いのでイメージも湧かず、結果、期日までに売れる曲は作れません。きっと何かしら作ると思いますが、とても市場にリリースできるようなモノではないでしょう。駄作です。成功のためには、多くのひとの助けが必要です。営業の現場ではできないこと・やりたくないことをできると言いがちですが、複数社が関わる際は信頼関係があった上で助け合って進めないと失敗に終わります。

キヅキ③ 責任領域の広さは「人柱」じゃない

基本的には、同じビジネスをやっている人同士、上流と下流の区別は不要だと思っています。例えば、上流にスケジュールや進捗の連絡をすべて任せているとします。すると、ディレクターは一つの案件だけを持っているわけではないので、アップアップになる。社内外の連絡がおろそかになると、いわゆる「下流工程」にいる人からすれば、スケジュールどうなってんの?となるわけです。

管理ツールなどで管理状況を一元化しようにも、「意思決定の連続」から生ずる課題解決のためにツールを使用しても良い影響は限りなく少ないと考えています。根底にある「責任領域と意思決定の問題」を飛ばしてしまうと、一生「工数管理しやすいツール」をただ探すだけになってしまいます。こうならないぞ!という意味も込めて、工数管理に終始して社内外に疲弊する人を「クライアントの人柱」と呼んでいます。

採用面接に来てくれたデザイナーの中には、「いずれはWebディレクターに…」と話してくれる人がめちゃくちゃいます。キャリアを聞いても、いずれはディレクターに、とまた同じように答えてくれる人もいます。ただ、思い描いているディレクターがもし「上流工程で調整を行う人間」なのであれば、あなた本来のデザインの強みを生かせず、自身の価値を押し下げてしまうかもしれません

ここで聞きたいのは、デザイナーははたして意思決定をしていないのでしょうか?もう一度伝えたいことですが、制作領域はマーケティングの一部分。共通の最終目標が存在しています。デザインの領域では、デザインパターンのインプット量が多いデザイナーこそ、非デザイナーより知識量・手数ではすでに勝っているのではないでしょうか。では、責任領域についてはどう考えてるのが良いのでしょうか?

キヅキ④ 「タテ割り分業」は市場にインパクトを残せない

Webディレクター・Webデザイナーという枠組みはなぜ分断されているのか?ひとつは、「できる人がやれることをやる」だけで留まってしまっている状況があるから。

仕事では、常に優先順位を決め、意思決定し、「定型的な業務」と「例外的なアクション」の対応が求められます。2019年ドラマと言えば、「私、定時に帰ります」のワンシーンで主人公役の吉高由里子さんが文章だけの企画書を夜な夜な書き続けてぶっ倒れたりしていますが、一方で「左利きのエレン」のように口下手だけれどクリエイターとしてイッパシに活躍しているデザイナーもいます。トラブルがあっても真正面から向き合って対応し、失敗さえも取り戻す良い提案をする。 これらのシーンだけ切り取るといずれも「圧倒的な調整能力」と「圧倒的なクリエイティブ」が光っています。

これらに共通しているのは、できる人ができることをやり、さらにやりたいことをきちんと実現してくれる人がいるチームだからなせるワザだと考えています。結果的に、企業に経営インパクトを生み出せる環境が整う状況があります。そこには上流も下流もなく、お互いが得意な領域で提案をしたいと思えば、キャリア云々ではなく、やろうと思えばその日からディレクションはできるのです。

できることを続けていても、「できることの枠」から出ることはありません。やりたい!と持った日からやれば良い。誰だって最初は初心者。失敗してもいいじゃない。攻めの姿勢で、とか受け身になって、とか変にセグメント分けして排他的になることさえ不要だと考えています。

キヅキ⑤ 「作業枠」から出ない「作業者」はニーズが低い

計画に作業は必要です。しかし、それが目的になってはいけないと感じています。以前に商品のスタイリングを含めた撮影案件があり、何をどう進めたら良いのかわからないとき色々なスタイリスト会社やフリーの方に聞きに回ったことがあります。プロジェクトを成功させたいから、協力してもらえないか。そう伝えても、多くの人からは定型的回答しか返ってこないことがありました。

・撮影に必要な日数は?
・コンテはどんな内容ですか?
・費用はどれくらいですか?
……

いや、こっちが全部それを聞いているんだよ…!と思ってしまいます。ただの作業じゃなくて、成功させたいんだ、と伝えるときに人を間違えた感じてしまう。そんな中、たまたま連絡を取ったフリーのスタイリストの方がコンセプト設計から実際のスタイリングまでいろいろな提案をしてくれました。これだけ撮るなら2日間あった方が良いなどの求めているアドバイスまで。ぼくらが想定している課題だけでなく、その背景にある隠れた課題までうまくひも解いてくれる素晴らしいお取組みでした。今でもその方とは別件で依頼したりと長く続いています。

人単位でも同じことが言えて、「どんなサイトが良いですか?」「どんなデザインが良いですか?」を聞くようなディレクターはただの伝書鳩です。市場価値は低いし、いつでも代替可能になってしまいます。

キヅキ⑥ 意思決定の連続を抱え込まない

上流工程と考えられる理由のひとつに、「デザイン領域を含むすべての進行の意思決定の連続」があります。意思決定の連続はすごく疲れますが、その責任領域の広さはやった人しか味わえない貴重な経験です。

ある程度の意思決定ができるメンバーは重要です。先ほどの話のように、商品のスタイリングをしたいときに、任せられるメンバーがいないのであれば自分でやるしかありません。とはいえ、一人で全部やってしまうとできることが限られ、結果的にやりたいことができない状況に

ツールはどれが使いやすいだのオススメだのという話は、企業・事業フェーズ・案件・担当者レベルによって合わせていけば良い。先日のAdobeMAXではAdobeXDでチームビルディングを解決に導くお話がありましたが、根本課題が解決した上でこのような取り組みがブーストとして案件推進力になるのだと思っています。

【根本的な課題が未解決のスパイラル】
「案件管理のための管理」なんかに時間を割いている暇はない
→意思決定の過程を見せるのは、各メンバーに対しての説明が必要
→結局頭の中で意思決定をし、全部整理しておかなきゃ置く方が楽だ
(案件管理ツールを命綱にしてしまう)

「意思決定の連続」は、職業としての「Webディレクター」だけができる能力ではありません。たまたまディレクターをやっている人がその能力を伸ばさざるを得ない状況を獲得してきた結果なのだと考えています。必要だから身に着けた能力に上流も下流もありません。「何のためにやる?」を追求し、"丸投げ"や"丸抱え"のディレクションはイケていない。

まとめ.自立を妨げ、曲げた解釈を避けるために

「自分が全案件を仕切ってやんよ!」というリーダー的ポジションに憧れたときもありましたし、節目節目でそういった振る舞いが必要なときもあります。ただ、「抱え込む」メリットは会社にとってあまりありません。「メンバー自体がいつまでも管理されている」「メンバーを管理する」という図式は、自立と相反する場合があります。

世のWebディレクターの方がデザイナーよりモノゴトの判断をする機会が多いからか、その希少性が高いため、結果給与が高い傾向にあるのが現実です。お互いがいつまでもその関係性に依存し、かえってお互いの自立を妨げているのでは?と最近特に思うようになりました。

まとめ2.責任領域を分解するためには「オープンであること」を最優先にする

いまやっている「制作」は…
・何を目的にしたプロジェクトなのか
・どんな背景があるのか
・どんな作業内容なのか
・納期はいつまでなのか

目に見えるかたちで、何がどこまで進んでいるのか?を常にメンバーと共有し、かつそれをお任せしてしまえば、自分が気にしていなくても動いていうる状況は作れます。そのために必要なことは、クライアントとの取り組みの際に「何をやるのか」のレベルを関係者全員できちんと細分化・理解しておくことだと考えています。

追伸

nanocolorに入りPRプランナー/Webディレクターとなって1年。エンドユーザーとクライアントとの関係値構築はもちろんのこと、そこから逆算した広告施策や現実的な運用面の話など必要な場所にどんどん入り込む役割を担っています。nanocolor代表の川端さんが広げた風呂敷をひたすら畳む仕事。
ぼくは自らが経営したいという熱量がそこまで高くないので、一番近くにいるフォロワーとしてその人が持っている強みを最大限に引き出すお手伝いに力を入れていこうと動いています。

最近、「ライティングの取り組みって今やっている領域に近いし、書くのは好きだから何か実績残してみよう!」とめちゃくちゃ軽い気持ちで、箕輪編集室に入りました。先日にコミュニティマネージャーの柴山さん浜田さんのお話を聞き、お二人に続くようなライターになるのが2020年の目標です。


原案・編集:山下 拓真


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