山小屋でのアルバイトについて【後半】
こんにちは
YMS Grです。
この記事では私が北アルプスの山小屋でアルバイトをした時の経験を記しています。前回の記事「山小屋でのアルバイトについて【前半】」に引き続いた
内容となっています。本記事では、山小屋での生活・仕事内容について記して
います。山小屋でのアルバイトに興味がある方の参考になれば幸いです。
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7月31日、標高3000m付近に位置する某山小屋に到着しました。
山小屋を俯瞰すると以下のようになります。
二階建てで、面積は40m×20mほどの大きな山小屋でした。
南西側からは、登山道が伸びており斜面上のコルにつながっていました。
見晴らしがよく、休憩時間はそこでたそがれたものです。
コルからの写真を以下に貼ります。
館内はとても清潔感が保たれており、床は板ばりで明るい雰囲気でした。
山小屋本体から10mほど離れたところに従業員用の宿泊小屋(タコ部屋)が
ありました。荷物はタコ部屋におき、ここで就寝していました。
タコ部屋には簡易二段ベッドが複数備え付けられており、男性従業員合わせて6名がここで寝泊りしました。女性従業員5名は別のタコ部屋を利用していました。
タコ部屋にはピッケルや、雪山用のアイゼンが置かれていました。
(最後まで誰のものかわからなかったが、おそらく6月から山小屋バイトをして
いる人のものだろう。北アルプスでは6月はまだ雪が深く冬山に分類される)
私に割り当てられた簡易ベッドを以下にのせます。
タコ部屋の中は肌寒かったですが、頭から布団をかぶれば耐えれるレベルでした。ただ、アルバイト後半戦(9月前半)になると布団だけでは寒く防寒のためジャンパーやレインコートを着たまま眠るようになりました(笑)
・・・それでは、そろそろ山小屋での一日について記載します。
以下に、山小屋での一日を記します。
3:50 起床
3:55 洗面
4:00〜5:00頃 お客様用朝食作り
5:00頃 シャワー室掃除(週一回の当番の時のみ)
5:20頃 朝食配膳
5:50頃〜 食器洗い
6:20〜6:40頃 朝食
6:40〜8:00頃 食器洗い・館内掃除
8:00〜8:30頃 みんなでコーヒータイム
8:30〜10:00頃 売店で提供する食事の準備(カレー・山菜うどんなど)
10:00〜12:30頃 厨房で注文受付(交代で一時間程度の休憩あり)
12:30〜13:00頃 昼食
13:00〜15:00頃 厨房で注文受付(交代で一時間程度の休憩あり)
15:00〜17:00頃 お客様用晩ご飯準備
17:00頃 夕食配膳
18:30頃〜 食器洗い
19:00〜19:30頃 晩ご飯
19:30頃〜 食器洗い
20:00頃〜 シャワー
21:00 就寝(週一回の当番の時のみトイレ掃除あり)
上記が私が働いていた山小屋アルバイトの日常です。
上記の仕事内容以外にも、一週間に一回程度雪渓カットがあります。
雪渓カットとは山小屋の近くに存在する雪渓を、登山者が通行できる様に道を作ることです。スコップとチェーンソーを使って、以下写真の様な雪渓をカットしてくのです。
これがなかなか骨が折れる笑!!
ただの雪ではなく、氷の様に固まっている場所はスコップでいくら打ってもびくともしません笑!石を殴っている様なものです。腰を痛めない様に、気をつけながらやりました笑(ここで腰を痛めれば、50日間勤務できませんからね泣)
他に印象的だった仕事で歩荷(ぼっか)があります。歩荷とは、食料を登山口まで取りに行きそれを山小屋まで運んでくるのです。ヘリで運んでくる食料もあるのですが、ヘリが来れない時期は歩荷を実施します。
以下の様な段ボールを背負いました。重さは20kg程度です。
重い荷物を持って大変そうだと思うかもしれませんが、私にとっては
リフレッシュになりました。山小屋アルバイトは、以外に館内で過ごす時間が長いので私は「早く外で縦走したい!」と思っていました笑
歩荷した時の写真です。(見る人が見れば、場所はわかるでしょう)
ちなみに、山小屋アルバイトで最もキツかったのは、雪渓カットでもなく歩荷でもなく「食器洗い」です。
洗っても洗っても食器が運ばれてくる。これを食器がたまらない様に素早く行う。これを朝昼晩毎日やるのはなかなか精神力のいる作業でした。
お客さんが多い時はとくに・・・
2日目には右手首が腫れてきたので、左手で洗う様にしました。
(こんなことは初めてだ!笑)
アルバイト終盤には、食器洗い後に貧血になり失神しそうになりました笑
北アルプス縦走しても貧血にならんのに食器洗いで貧血になるんかい!笑
その影響で、今でもレストランに行った時に厨房で働いている方を見ると
尊敬の念を抱きます。(もちろん食器洗いだけが厨房の仕事では無いですが、
その大変さは身に染みました)
山の上で長期間この様な生活をしているとどうなるのか!?記載します。
働き始めて2週間もすると、とてつもなく下界(街)に憧れる様になります。
山小屋の仕事は見かけによらず、非常に忙しいです。息つく暇もありません!
(夢の中でも働いていました笑)
朝4時から21時まで寒い山でこの様な生活を送っていると、下界での暖かな日常が愛しくなってきます。
夜になると、山小屋近くのコルに登り遠くの街を眺めていました。
そして、あらゆる欲望が強くなってきます。
山では、下界には当たり前の様にある刺激がありません。
私は山が好きなので、「山にいればそれで満足できるだろう」と思っていましたが
決してそんな単純なものではありませんでした(笑)。
「テレビを見る」、「食事をする」そんな何気ない事が欲望の対象となります。
休憩時間には貪る様にテレビを見ていましたし、昼ごはんにはカレーとラーメンを同時に食べたりもました(笑)。山小屋に置いてあった『ブッダ』(手塚治虫)や
『岳 みんなの山』(石塚真一)も全巻読みました。
この様に山小屋のアルバイトは大変ですが、下界では経験できないことが体験できる仕事です。今の時代、刑務所にでも入らない限り上記の様な経験はできないでしょう笑。
楽しいこともたくさんあります!!
朝、厨房からは毎日ご来光が見れました。
ご来光を挟んで右側の尖っている部分が鹿島槍ヶ岳、左の少し低く丸い部分が
五竜岳です。
私は中学生の頃、鹿島槍ヶ岳に登った事があるので懐かしく感じました。
時々ですが休日も取れます。私は5連休を取得し周辺の山々を縦走しました。
(縦走記録は他の記事で記載します。)
9/18日(月)最終日(山中は暴風雨)
スタッフの皆さんが、小屋の出口まで見送りに来てくれました。
「また、どこかで会えるといいな」そう思いながらドアを閉めました。
(よく考えたら、家族以外の人と連続で50日間一緒に過ごす経験も
あまりないだろう!)
下山時には、雷鳥5匹とすれ違いました。
「また、来いよ!」と言われている様に感じました。
(「またきます!!(今年も行きました笑)」)
今でもあの山小屋は、私の故郷みたいなものです。
来年、宿泊しに行こうと考えています。
街に降りた時、「ここはハワイかよ!」と思うくらい街が暖かく感じました。
あの時、コンビニで買ったクリームパンの味が忘れられない!!
山小屋でアルバイトをしてみたい方は、深く考えずに飛び込んでみてください!!
決して楽ではありませんが、そこでの経験は一生ものになるでしょう!!!
ご覧いただきありがとうございました!!!
【登山記録シート】
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