さかなとたわむる 其の九 人間って何様???
いきなりですが、「ダイバーは本来海にいないもの」。つまり侵入者であるということを、常に忘れないように気をつけています。
ダイバーは大げさな装備を付けて海の中を覗き見させていただいているんです。
そもそもこの段階で、すでに海に対して何らかのストレスを与えていると思うのです。
海の生き物たちにとって、本来なら、ありえない音(呼吸音等)、大きい接触ストレス(着底とか、やたら触ったりとか)、触れることの無い温度(体温等、海の中では36度は高温です)、信じられない光量(水中ライトやストロボ)、下から湧き上がる巨大な泡(排気)。
ぱっと思いつくだけでも結構、色々あるもんでしょ?
「じゃあ何でお前は潜ってるんだ」とか、「よりによって人様まで連れていっているじゃないか!」とかいわれちゃいますね。
すいません。おっしゃるとおり矛盾だらけです。
でもね・・・。
まず、海が好きだから、そして、生活があるからです!!(生々しいですね)
まず、僕自身も環境負荷なのは間違いありません。どんなに気をつけたって環境負荷はゼロにはならないと思います。
ただ、僕たちが一緒に行くことで、自分の与える影響に気づいていない人たちでも、少しでも周囲に振りまくストレスを減らせるんじゃないかなとおもってみたり。
都合のいい計算ですが、普通のダイバー1人が海にかける環境負荷を10だとすると、僕らがちゃんと案内できれば。あるいは、負荷を軽減する知識を伝えることができれば。それは7とか5とか、上手くすれば3以下にできるかもしれない。
「5人で大騒ぎするより10人でも節度を持って行動したほうが、周囲には迷惑かからないかも知れないでしょ?!」
シュノーケリングだって、やたらすぐ立とうとすると足元のサンゴやら岩肌の生物に直接ダメージを与えちゃうけど、「浮いて見ててね」というアナウンスと必要な技術、そして気付きを提供できればそのインパクトの減少はなかなか侮れないレベルです。バキバキサンゴを踏みながら移動する一人と、静かに浮いてるだけの五人はどっちが負荷が少ないかなって。
人間は、無神経に自分たちの欲求や都合だけで海に入れば、海に対して取り返しのつかないストレスを与えてしまう可能性を持っているでしょう。
裏を返せば、ちゃんとそこのところに気づいて心配りができると、「ストレスなし!」にはならないまでも、かなり海へのご迷惑をかけなくてすむのではないでしょうか?
僕らの遊びっていうのは、「ヒトの楽しい」と「海の生き物の未知のストレス」とのせめぎあいじゃないかなって思いながら海に入ってます。
どうしても生き物に触ったり近づいたり一緒に泳いだりっていうのはヒトにとってはとてもとても楽しいこと。そしてそれはそのまま触られたり近づかれたりストーキングされたりっていうのは一次的にはストレスであるでしょう。(だって、近づく触るそばで泳ぐっていうのはそのまま生き物に嫌がられるでしょ? だからこそできると面白いっていうことなんだし)
僕たち現地ガイドは、お客様にとって楽しい海を安全にご案内すると同時に、これまで続いてきた島の暮らしや、海自身に対しても少しでもストレスの少なくな るよう(島や海にとっても)安全にお客様をご案内する義務を負っていると思います。人と海の両方の顔をしっかり見据えて、双方にメリットのある仕事であり たいものです。
1999年~2002年に書いていたコラムに、加筆、修正をしたものです