ユレニワ、バンド解散前最後のワンマンライブ『エロス』エロス 愛の歌で革命を貫き続けた有終の
音楽のWebマガジンを友人とやっていますので、よろしくお願いいたします!!その記事のアーカイブとしてnoteに掲載しております。
好きなバンドの解散は、何度経験しても慣れることなどなく寂しい。
だけど、ユレニワ、私はこのバンドに出会えて本当に良かった。
9/28(木) ユレニワの解散前最後となる単独公演『エロス Vol.24』が東京・新宿Marbleで開催された。当然のようにチケットが一瞬でソールドアウトしてしまい、途方に暮れていたが、同じように嘆いていたのはきっと自分だけではなかったのだろう。公演全編がYouTubeにて生配信されることになった。最後の最後、配信でのライブ体験となるが、ユレニワの音楽がそこにあったことを少しでも残しておきたい。そんな一心でこの記事を書くことに決めた。
お馴染みのSEが流れると、RENJU(Dr/Cho)、種谷佳輝(Gt/Cho)、シロナカムラ(Vo/Gt)とサポートベースの是永亮祐が登場。RENJUは笑顔でタンバリンを鳴らしながら現れ、種谷も笑顔で客席に手を振り、シロはトレードマークの丸いサングラスで目元は見えないものの、体の揺らし方からきっと笑っているんだろうなと分かった。RENJUの鋭いドラムを合図にして、シロと種谷がギターを激しくかき鳴らし、どんな激しい曲から来るのかと思えば、ミドルチューンの「あばよ、ビューティ」からライブがスタート。今日は<あばよ>という歌詞が、どうしても悲しい響きで聴こえてしまうが、そんな心を、間奏の種谷のキーボードがなでるように落ち着かせてくれた。不気味に歪ませたギター、自由に遊ぶようなビート、それを支える重厚なベースが混ざり合って、ごちゃごちゃになるアウトロから間髪入れずに、「Cherie」へ。観客の手拍子で色づくイントロは美しく、シロの表情豊かな歌い方が際立っていた。
2曲を終えると、シロがサングラスを外し、解散発表について触れた。”悲しいねっていう感じで終わりにするのは俺は望んでなくて。しっかりと、目の輝きをみんなに見せて最後までやり切りたいと思ってます。だから、楽しんでね。か。いや、悲しまないでねは絶対違うよ。無理な話だよ。だから、俺は死ぬほどやり切るし、キラキラした目でみんなの事見てるから、キラキラした目で楽しんでもらえたら嬉しいです。よろしく!”自分とフロアを指さすジェスチャーを加えながら、一言ずつ丁寧に伝えていく、相手のことを想った優しさに溢れた宣言だ。
指パッチンに合わせたアカペラから厳かな雰囲気で始まるのは「ひかりにひかれて」。間奏部分は”いくぜ!”と叫んだシロが飛び跳ねながらギターをかき鳴らし、種谷がステージのギリギリ端っこまで飛び出していき、迫力のあるパフォーマンスを魅せた。”懐かしい歌を”というのMCから「Hello glow」を演奏し終えた瞬間にベルの音を合図にして、「缶詰」に繋がる。そこからRENJUがスティックを持ち替え、柔らかいシンバルの音を奏で、静かな雰囲気を作り出し「Bianca」を披露。穏やかな空気のまま「チョコレート」まで、真っすぐに音楽を届ける。美しい流れすぎて、一瞬で時が経ってしまうことが悔しい。ここから、曲がはじまる前に照明が暗転する演出が続き「焦熱」、「まぼろしの夜に」といったキラーチューンを感情を込めた歌と演奏で届けていった。「まぼろしの夜に」では、その演奏のグルーヴ感もさることなかがら、種谷がかなり前方に乗り出し、シロは身体を大きくのけぞらせ、RENJUも大きく腕を振り上げているという、全員のエネルギッシュな演奏に釘付けになってしまった。
7曲を立て続けに披露したのは、7年の活動という意味も込められていたのかもしれない。シロがユレニワの、自分自身の、音楽活動は何のためにやってきたのか、活動の根底にあったものについて語った。革命をユレニワを起こせたのか、昨晩を自問自答し続けたというシロが、”革命を起こしたくて、このバンドを続けて来たから!最後の最後まで足掻いても良いですか”と、バンドの存在理由が”革命”だと言い切ってからの「革命児」の破壊力たるや。後半の<ラララ>のシンガロングではRENJUが立ち上がり、ステージ前方で”聴こえねーよ!こらぁ!”と煽り、観客の声をさらに引き出す。種谷のギターの音量や弾き方に合わせて、声色を変えて全員で歌うのが楽しい。ユレニワが創り出すこの瞬間が大好きなんだと、気が付いたら自分も画面に向かって歌っていた。
自分の持ち場に戻ったRENJUが”久しぶりに言いますよ。何を言うかっていうと・・・おい!お前ら!かかってこい!!”と再び観客に火をつけ、「PLAY」になだれこむ。アウトロのセッションで、シロのリズミカルで軽快なギター、多様な表現で刻まれる種谷のギター、RENJUの激しく切れ味のあるドラムを堪能していると、動と静、自在に音を操る彼らは、演奏の技術力も非常に高いということを思い知らされる。しみったれてはいけないが、ますます、こんなバンドの解散が惜しいなとつい思ってしまった。続く「purple」は、これまた曲の雰囲気ががらりとポップに変わり、ユレニワの音楽性の幅広さをまざまざと見せつけられた。このバンドのいろんな表情に揺さぶられてしまうような感覚が、なんだか癖になってしまい、気が付けば目で追ってしまうのがユレニワだった。
シロがギターを置き、タオルを背中にかけてハンドマイクに切り替え、これまたシンセサイザーと生の楽器のバランスが楽しい「恋人たちのヒム」が、決して明るいだけの歌詞ではないのに、多幸感たっぷりに聴こえてくる。この不思議な感覚も、癖になるユレニワの持ち味の一つだ。アウトロで暗転する中、いつの間にかドラムのRENJUが白いギターを持って前方にやってきた。しかし、どうやら様子がおかしい。なんと、足元に置いている機材の電池がなく同期の音を操れなくなるハプニングが起きてしまったのだ。ファンだけでなく、機材さえも解散が寂しくてたまらないのかも知れないと思う出来事だった。RENJUが慌ただしくしゃがみこんで準備する中、種谷が”いつも時間短縮で、最後の方からやるので、そこからやらしてください!”と機転を利かすも、やはり最初からやり直すことに。リベンジ「恋人のヒム」は1回目に負けない熱演だった。「帝国」、「遺書」、「重罪」とユレニワの真骨頂である曲が立て続けに披露されると、観客も一番後ろの方まで手を挙げ、身体を揺らし、楽しんでいるのが表情が見えずとも伝わってくる。
ライブ終盤のMC、シロは振り返りたい気持ちをこらえ、いま伝えたいことに絞って言葉を紡いでいく。”一貫してずっと愛を込めて歌ってきたし、愛を込めて歌を作ってきました。僕らの生々しい別に音楽が聴けなくなるとか、二度と会えないわけではないし、だって音楽続けるし。俺はね、少なくとも。俺らが作ってきた、愛の歌が、まだまだ、みんなを照らせると思う。まだまだ、俺たち自身が照らされると思うし。愛の歌がこれから先のいろんなことへのきっかけになるんじゃないかと思う。それくらい素敵な音楽を作り続けられた。みんなのおかげだと思うよ。本当にありがとうございました。”これからの希望に繋がるような話を聞くことができたのが、すごく嬉しかった。
「知りたい」の歌詞<愛の歌はきっと/見知らぬ僕たちをひとつにする>。この言葉も愛の歌を歌い続けて革命を起こそうとしてきたユレニワにぴったりで、息の合った演奏を聴いていると、やっぱりまだ解散が信じられない気持ちになってしまう。暗転したステージ、長めの静寂の後、RENJUのドラムスティックでのカウントから種谷の歪んだギター皮切りに、本編ラストの「Birthday」へ。シロの振り絞るような歌声と、それに重なる楽器の音がフィナーレをより忘れられない景色に染めて上げ、本編は終了した。
しばらくアンコールを求める拍手が続いたところで、メンバーが再登場。シロがギターを爪弾き、最後に何を言うか少し考えてから紡いだ言葉は”風邪などひかないようにしてください、ありがとうございました。ユレニワでした。”だった。優しい言葉をポツリと置いた後、優しく弾き語り、そして種谷のアルペジオが重なって「バージン輿論」が始まると、本当に最後なんだと思い知らされる。声を震わせながら歌うシロの声を、サビの前のベースのアクセントが彩を添えていく。アウトロからそのまま種谷がギターを掲げてかき鳴らし、RENJUを煽るようなそぶりを見せ、RENJUの高速でパワフルなドラムに火が付くと、種谷は座り込んでエフェクターで遊び、にぎやかな音を奏でる。音の波に溺れそうな中、シロが”悲しくて終われるかっつうんだよ!阿呆が!” と煽り、アンコール定番曲の「阿呆」がラストを告げる。天井に頭をつけて嬉しそうな表情でギターを弾く種谷、腕がちぎれそうなほど高速のビートをぶっ放すRENJU、床に這つくばってギターを無心にかき鳴らすシロ、最高の景色だ。終わってほしくないとこちらが思っていたのと呼応するように、シロが”もいっちょ!”と叫び、たっぷりとアウトロをやり切って、幕を閉じた。メンバーがステージからいなくなり、”以上を持ちまして、定期公演エロスを終了します。”というアナウンスにちょっと残酷さを覚えながらも、最後まで、倒れてもおかしくないほどの熱量で、本気のかっこいい姿をみせてくれたユレニワに心からの拍手をおくった。
嘘なく、いつだって全力で、愛の歌で革命を起こそうとしたユレニワ。
最後の最後まで、「革命児」でいてくれてありがとう!!
2023.09.28 ユレニワ『エロス』セットリスト
01.あばよ、ビューティー
02.Cherie
03.ひかりにひかれて
04.Hello glow
05.缶詰
06.Bianca
07.チョコレート
08.焦熱
09.まぼろしの夜に
10.革命児
11.PLAY
12.purple
13.恋人たちのヒム (×2)
14.帝國
15.遺書
16.重罪
17.知りたい
18.Birthday
encore
19.バージン輿論
20.阿呆
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