playlist:#雨の日こそ聴きたい曲
まえがき
もう少しで6月、梅雨がやってくる。
毎年この季節になると、どんよりとした空模様、まとまらない髪の毛、溜まってしまう洗濯物などなんとなく気分が上がらない日が多くなってしまう。
雨も悪いことばかりではなく、例えば雨粒が大気中の汚染物質の粒子を引き付け空気を浄化したり、自然や農作物に潤いを与えたり必要なものである。雨のそんな役割を分かっていたとしても、なかなか憂鬱に勝てないけれど、せめて「ふーん、今日は雨か」くらいの平坦な気持ちでいられることを願って【雨の日こそ聴きたい曲】のプレイリストを紹介したい。
くるり「ばらの花」
一定のリズムを刻むブリッジミュートのギターと明るく絡み合うキーボード、この音を聴いているとジメジメと気怠い朝でもなんとか歩き出そうという気持ちになる。
歌詞はちょっと意味深なところがあり、様々な解釈ができる面白さもあるが、サビの部分は言葉通りまっすぐ受け取ることができる。
<安心な僕らは旅に出ようぜ 思いっきり泣いたり笑ったりしようぜ>
自分が安心できる場所ばかりにいないで、外に出て、感情を動かしていこう、それでしか得られないものがあると思わせてくれるから雨の日の引きこもりを連れ出してくれる力がある。
Cメロの段々と下がっていくコード進行も雨の日のどうしようもない気分に寄り添ってくれる気がして心地いい。
そして、冒頭と最後に出てくるからジンジャーエールがとても飲みたくなる。
リリースから22年後の2023年1月にフルサイズのMVが公開された際の反響も大きく、色褪せない名曲だ。
The Songbards「雨に唄えば」
軽快な演奏とは裏腹に憂鬱な歌詞で始まるこの曲は、午前中~午後くらいにゆったりとした気持ちで聴きたい。
「雨に唄えば」というタイトルが歴史的に有名な映画を思い起こさせるが、歌詞の中に他にもいくつかインスパイアを受けたと思われるワードが存在する。
<一九二三年一月 彼女は血を吐いて倒れたが>
⇒ニュージーランド出身の作家キャサリン・マンスフィールドの最期の言葉
「私は雨が好き。この顔で雨を感じたい。」
<もうついにとうとう最後の日にさ リンゴの木を植える覚悟がさ>
⇒16世紀の宗教革命で活躍したドイツの宗教家マルティン・ルターの名言
「明日世界が終わるとしても、わたしは今日、リンゴの木を植える」
こういった示唆に富んだ歌詞が、なんとも爽やかで美しい歌声で歌われているギャップに引き込まれ、自然と浄化されていく。
最初は<ずっと何も変わってない気がしてさ>と雨の中ジメジメと悩んでいた主人公が、最後には雨が止んで<変わらないものなんてないと 繰り返して進むんだ>と前向きな気持ちに変化するストーリーに元気をもらえる。
MVはThe Libertines「Time For Heroes」のMVのオマージュのようで、2つに分けられた画面の中で自然体かつ仲睦まじいメンバーの様子に非常に癒されるのでこちらもぜひ視聴してほしい。
チャットモンチー「湯気」
この曲は高校時代、自宅から駅までの道のりを雨の中自転車を飛ばしているとき必ず聴いていたという思い出補正もあり、私の選ぶ雨ソングとしては外せない1曲だ。(2015年6月の道路交通法改正で、自転車に乗ってイヤホンやヘッドホンを使用することは禁止になったので今となっては幻の光景!)
BPM185というアップテンポな曲調やギターのアクセントに青春独特のヒリヒリとした焦燥感が詰まっている。
雨の中、できれば足元に気を付けてゆっくり歩きたいところではあるが、遅刻しそうでどうしても急がないといけない時などはこの曲を聴くといくらか速く歩けるような気がしておすすめだ。
歌詞はドラムの高橋久美子が手掛けており、素朴な雨の日の出来事が丁寧で緻密な言葉で表現され、体験してなくともまるで写真のように具体的なイメージを持って伝わってくる。
この曲は2006年に発売されたシングル『恋の煙』の2曲目に収録されたカップリング曲であり、MVは存在しない。だけど、ライブでもよく披露されていたし、2018年7月の徳島でのラストライブのセットリストにも入っていた。カップリングも名曲だらけのチャットモンチーの魅力を代表するようなナンバーである。
NICO Touches the Walls 「雨のブルース」
雨の夜、どこか不安な気持ちになったとき、心を落ち着かせるために聴きたいのがこのバラードだ。
音数の少ないシンプルで最低限の洗練された演奏にのせ、ボーカル・ギター光村龍也の力強く熱量のある歌声が絶妙のバランスで届けられる。
<やさしい人になろう 笑って死ねたらいい>
<幸せになろう 誰より幸せに>
自分ではなかなか口に出せないようなポジティブな言葉を音楽として浴びることで、自分の心にポッと火を灯して温めてくれるような感覚がある。
この曲はMVどころか、インディーズ時代のアルバム『Walls Is Beginning』の収録だからかサブスクに通常版が無く、プレイリストにはサブスクにある2011年Zepp Tokyoのライブ音源版(『手をたたけEP』の6曲目に収録)を採用した。YouTubeにはスタジオ録音版の音源がアップされていたのでこちらもぜひ堪能していただきたい。
ハルカトミユキ「春の雨」
どうしても眠れないような孤独で寂しい、しとしと雨の深夜には、自分と向き合いながらほんの少しだけ明日を信じられるような音楽を友としたい。
たくさんの歌声が重ねられた多重録音は荘厳さがありつつも、澄み渡るような歌声だから心にそっと溶け込んでくる。キーボードをはじめとする様々な電子音は、ふわふわと雨の中を漂っているようだ。
<僕はただ待ってる ここでただ待ってる 君の征く未来を めぐる命を>
短歌を本格的に学んでいるボーカルギターのハルカによる歌詞は、こだわり抜かれていて、言葉をどう受け止めるかよく考えるが、私なりにこの曲における”僕”と”君”は、どちらも自分自身のことなのではないかと捉えている。
MVは以前はYouTubeにダンサーを起用したリリックビデオが公開されていたが現在は非公開となっているので、歌詞を表示して目で追いながら、一つひとつの言葉を味わって「春の雨」の世界観にどっぷり浸かってもらいたい。
あとがき
今回5曲を挙げてみて思ったのは、雨の強さや時間帯によって聴きたい曲もさまざまということ。もしも台風みたいな強風と豪雨の中で出かけなきゃいけないシーンだったら、T.M.Revolution「HOT LIMIT」とか聴いて逆にぶち上げてしまおうとも思う。そして、やっぱり雨には雨の良さがあるから「雨だからこの曲ぴったりだ。やった~!」の精神で音楽とともに雨の日々を過ごしたい。
#オトワタシ (こちらにSpotifyのリンクあります)
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