【シブヤノコレカラ#2】多様な人が混ざり合うロコワーキングの取り組み
森田ゆきが社会課題と向き合い、渋谷の街ではどんな解決方法が考えられるか、ゲストと共にトークする「シブヤノコレカラ」。月に2回、土曜の朝にインスタライブで配信しています。第2回目のテーマは「地域で仕事をつくり回す循環モデルーロコワーキングー」。渋谷就労支援センターしぶやビッテ 恒藤寿江さんと、NPO法人Loco-working協議会代表理事、非営利型株式会社Polaris取締役ファウンダー 市川望美さんをゲストにお招きしました。
議員になる前から取り組んできた地域の仕事づくり
司会:まず森田さんと渋谷就労支援センターしぶやビッテ(以下ビッテ)との出会いについて教えてください。
森田:議員になる前から、地域で働くことをテーマにしたNPO法人の代表を7年間やっていたんですね。そこでは、育児などの理由でフルタイムでは働けない人たちでも、働くことができる仕組みをつくっていました。具体的には、1つの仕事をチームで請け負い、メンバーで分配するという働き方です。そうすると、それぞれが働ける時間で役割を担うことができます。
議員になって、渋谷区で同様の取り組みはないかと探していたところ、ビッテの存在を知りました。しかし当時扱われていたのは、フルタイムの直接雇用のみ。そこで、NPOでやっていた活動をお話ししたんです。興味を持っていただき、その後、地域で働く仕組みづくりに共に取り組んできました。
今日のゲストの市川望美さんには、勉強会を開いた際に講師で来ていただきました。NPO法人Loco-working協議会を一緒に立ち上げた仲間であり、非営利型株式会社Polarisの創設者としても、地域で働く仕組みづくりに長年取り組まれています。
多様な人が働くローカルキャリアシティへの第一歩
司会:森田さんからのお話をビッテではどのように受け止められたのでしょうか。
恒藤さん(以下、恒藤):世の中には、たくさんの就労支援センターがあり、ビッテとして何ができるのかということは常に考えています。また、介護や子育て、あるいは何らかの事情でフルタイムの勤務はできないけれど働きたい、という方もビッテには数多くご相談にいらっしゃいます。こうした背景から、森田さんのご提案を受けて、ビッテでもぜひ取り組みたいと思いました。1年間協議を続けた後、現在では少しずつ取り組みが始まっています。
司会:勤務先となる事業者は具体的にはどのようなところがありますか?
恒藤:今のところは商店街のお店やこども食堂の運営団体です。最初に、事業者さんと私たちビッテで、どのような形で仕事を切り出せるか話し合うようにしています。雇用形態は業務委託になることが多いです。
司会:実際に働いた人に変化はありましたか?
恒藤:働きづらさを抱えた人にとっては、短期間、短時間のお仕事とは言え、最初に挑戦するのはとても勇気がいります。でも一度やってみると、お会いした時の印象が明るくなっているのを感じます。次のお仕事をすんなり引き受けてくださる方も多いです。
司会:森田さんは議員として、今後どのような役割を果たしていきたいと考えていますか。
森田:まずはこうしたプラットフォームができたので、働きたい人や地域の企業や商店会に理解してもらう後押しをしていきたいですね。会派の令和5年の予算要望にも組み込み、前年より多くの予算を獲得することができました。そういう意味でも、令和5年度は大切な時期。しっかりとした仕組みを構築していきたいです。予算がついたので、早速チラシもつくったんですよ。「働くことで困ったらビッテ」と思い出してもらえるようにしたいですね。
司会:いいですね。どんな方たちに広めていきたいですか?
森田:多様な人が混ざり合って働く環境をつくっていきたいと考えています。障害のある方、シニア、育児中の人、通勤電車がつらい人など、いろんな方に関わっていただきたい。職住近接で、顔が見える関係性をつくっていくことができると思います。
地域の人と共に、仕事を共創する
司会:市川さんは渋谷区の取り組みをどのように見ていらっしゃいますか?
市川:その前に「ロコワーク」という言葉について少し説明させてください。「ロコワーク」というのは、「ローカル(地域)」と「コワーキング(共に働く)」という言葉を掛け合わせてつくった造語です。これはただ地域で働ければいい、ということではないんですね。地域の仕事を通じて新しい発見をしたり、地域の人と関係性を築くなどといった意味合いが込められています。これまでPolarisという会社で取り組んできたことに、公的機関であるビッテさんが取り組まれると聞いて、とても楽しみに思っています。
司会:市川さんが創設した非営利型株式会社Polarisでは、世田谷区のR60-SETAGAYAというミドルシニアに働く機会をつくる事業をされていますね。
市川:R60-SETAGAYAでやっていることは2つあります。1つは企業内の仕事を外部に切り出すこと。もう1つは新しい仕事をつくること。後者の方で面白い事例がいくつか出てきています。
たとえば、突然強引な業者がやってきて屋根の修理をして高額の費用を請求するという地域の困りごとがありました。それに対して、地元の建設会社さんがドローンを飛ばして、屋根の一時診断をやることに。当初は社員でチームをつくる計画だったのですが、R60-SETAGAYAの業務として請け負うことになりました。仕事自体にも先進性がありますし、シニアの方が自分たちの手で生活を守ることにも繋がり、とても意義のある業務だと思います。
また、世田谷区では、ハイキャリアな人のスキルを活かせる地域の仕事がないという課題があります。これに対しては、語学堪能な人が建設会社で働く外国人労働者のメンターを務めるという仕事が生まれました。建設業界では、外国人労働者の割合が増えているのですが、仕事上の指示は簡単な英語や日本語でできても、フォローができなくて困っているという現実があったのです。
このように、地域の事業者と共創して仕事をつくることに意義を感じています。渋谷がローカルキャリアシティとなっていくには、事業者と働き手の間に立って仕事を開拓していく役割が非常に重要です。その点で森田さんの議員としてのサポートと、ビッテさんにはとても期待しています。
ローカルキャリアシティを渋谷の文化に!
司会:森田さんは渋谷でどんな仕事をつくっていきたいと考えていますか。
森田:渋谷ならではのアイデアがたくさんあるはず。そういうものを形にしていきたいですね。まずは商店会や企業からの相談を受けていきたいです。実際に障害のある人とシニアが混ざり合って行った仕事や、子育て中の女性が活躍できる仕事などの実績もできてきています。
市川:小さな仕事を切り出すのも、それなりに労力が掛かります。企業、働き手、間に立つ団体、それぞれが試行錯誤をしなければならず、続けていくのは大変です。儲かるかどうかではなくて、どうやったら地域での役割が果たせるか、という視点が必要。「地域で働く」という文化をつくっていくことなんですね。そこでビッテさんのような公的機関が果たす役割は大きいと思います。
森田:そうですね。私が重要だと思っているのは、行政が縦割りにならずに、包括的かつ横断的にローカルキャリアシティに取り組むこと。障がい者雇用、シニア雇用、など分けずに、連携してやっていけたらと思います。
司会:包括的にと言えば、渋谷区ではデジタル地域通貨も始まりましたね。そことの連携はどうでしょうか。
森田:ハチペイですね。利用できるお店も増えてきて、順調に広がっています。ハチペイのプラットフォームを利用して、求人を出したり、報酬をハチペイで払ったりという使い方もできるのではと考えています。
司会:まさに所管を超えての連携ですね。ぜひ実現してほしいと思います。
渋谷就労支援センターしぶやビッテでは、2023年3月17日(金)に、今回のゲストの市川望美さんを講師に迎え、セミナーを企画しています。関心のある方は、ビッテさんまでぜひお問合せください。