【シブヤノコレカラ#3】フェムテックとメンテック、行政サービスのこれから
森田ゆきが社会課題と向き合い、渋谷の街ではどんな解決方法が考えられるか、ゲストと共にトークする「シブヤノコレカラ」。月に2回、土曜の朝にインスタライブで配信しています。第3回目のテーマは「フェムテックとメンテック、行政サービスのこれから」。PwCコンサルティング合同会社シニアマネージャーの林真依さんをゲストにお招きしました。
不妊治療の政策提言からフェムテックへ
司会:お二人はなぜフェムテックに取り組まれるようになったのですか?
森田:不妊治療を政策提案に取り入れたことがきっかけでした。妊活について調べているうちに、性教育や女性特有の健康課題など、妊活の周辺には様々な問題があることに気づき、フェムテックに興味をもつようになりました。
林さん(以下、林):私は元々、企業のダイバーシティー経営の推進をサポートする仕事をしていました。その後ご縁があり、現在は経済産業省のフェムテックに関する実証事業のプロジェクトマネージャーを務めています。この事業は、フェムテックを使って、働く女性のウェルビーイングを実現することが目的です。
司会:そもそもフェムテックはどのように定義されているのですか?
林:フェムテックが何なのか、明確な定義は実は確立されていません。一般的には月経、更年期など、女性が抱えやすい健康課題をテクノロジーで解決するサービス全般を指すことが多いです。例として、月経管理アプリを思いつく方は多いですね。一方、経済産業省のフェムテック実証では、対象をテクノロジーには絞っていません。テック系を取り巻くソフト面のサポートも対象に含めています。たとえば、男女のヘルスリテラシーを高める動画の提供や、不妊治療に関する周囲とのコミュニケーションのサポートなども実証するサービスの一部です。
司会:地域の政策という観点ではどうですか?
森田:フェムテックはまだまだ一部の人のものであるのが現状です。たとえば、月経カップについてもまだ知らない人が多いので、プロダクトに触れる機会がもっとあるといいですね。女性の健康課題についてフェムテックで解決できることがあるなら、行政からもっと後押しがあってもいいのではと思います。
司会:フェムテックについては、言葉として浸透してきた印象がありますが、メンテックについてはまだあまり知られていませんね。
森田:女性だけではなくて、たとえばEDや尿漏れなど男性にも健康課題はあります。更年期障害という定義はないですが、年齢特有の悩みも同様です。今は周囲に言えずに一人で悩んでいる方も多いようですが、男性の健康課題も併せて考えていく必要があると思います。
地域医療と行政の連携で健康をサポート
司会:健康課題は昔からあったはずですよね。なぜ改めて新しい言葉と共に広がろうとしているのでしょうか。
森田:昔は今よりも周囲に話しづらかったのだと思います。以前より話せるようになったとはいえ、健康に関する悩みをもっとオープンにできる社会にしたいですね。そのために、健康課題に対する認知を広めることは必須。地域の病院やクリニックと連携して、我慢したり遠慮したりせずに、クリニックに行ける環境づくりをしていきたいと考えています。
司会:地域医療に携わる方も同様の思いをお持ちなのでしょうか。
森田:医師の話を聞くと、健康課題について伝えなきゃいけないという意識を持っている方は多いです。誰にでも起こりうることだと伝わるように、政策として取り組まないといけないと感じています。
司会:そうですね。森田さんが不妊治療の政策をきっかけに他の健康課題について知ったように、活動が広がっていくといいですね。
森田:不妊治療も令和4年4月から保険適用されることになりました。渋谷区ではこれに加えて助成金も出しています。しかしそれだけではまだ不十分。ピアサポートも受けられるようにしていきたいと思います。
林:健康課題は昔からあるものですが、働き方や暮らし方が変化したために、トラブルを抱える人が増えているという一面もあります。フェムテックやメンテックを活用して、自分の状態を知り、対処できるようになることがまず大切。実際に女性15,000人を対象に行ったフェムテックサービスの実証実験では、自分のトラブルに気づくとほとんどの人は病院に行くようになりました。病気に気づけば、具体的解決に向けて行動するわけです。政策で受診を後押しするというのは非常に大切だと思います。
健康課題をみんなの問題に
林:私が今課題に思っているのは、健康課題やフェムテックに関心を持たない人へのアプローチです。日常生活の中で自身の身体に意識を向けるきっかけをいかにつくるかが重要です。
司会:意識が高い人だけでなく、そうでない人にも知ってもらう機会をつくっていく必要がありますね。森田さん、その辺りはいかがでしょうか。
森田:まずは教育から変えていってはどうでしょうか。たとえば性教育をもっとオープンにする。クリニックの先生に出前授業をしてもらうという方法もあります。日本は子宮頸がんの健診率も低く、正しい知識を伝えていかないといけません。他にも、学校や行政サービスのトイレには生理用品が設置されているとか、心と体の問題を身近なものにしていきたいですね。
司会:みんなで考える機会をつくっていけたらいいですね。
森田:フェムケア商品についてもミドル世代には知らない人も多い。商品をミドル世代に配ったり、世代間ギャップをなくしていくことも必要です。
林:先日、女性だけのワークショップを開催したのですが、女性特有の悩みが山ほど出てきました。今まではそうしたことを語る場がなかったんですね。まずは困りごとを出せる場をつくっていきたい。そこから次の製品やサービスも生まれてくるのではと思います。