【シブヤノコレカラ#7】性感染症の現状を知ろう
森田ゆきが社会課題と向き合い、渋谷の街ではどんな解決方法が考えられるか、ゲストと共にトークする「シブヤノコレカラ」。月に2回、土曜の朝にインスタライブで配信しています。
今回のテーマは「性感染症の現状を知ろう」。
ゲストに渋谷KARADAクリニック院長の田中雅之先生です。
昨年過去最多!梅毒(ばいどく)とはどんな病気?
森田:最近はどんな感染症が増えていますか?
田中院長(以下、田中):この1週間で言うと、インフルエンザやコロナによる発熱の方が増えていますね。コロナがまた増えつつあるのを感じます。性感染症の方も毎日いらっしゃる状況です。もともと梅毒というのは、医者としてもそれほど頻繁に診ることはありません。現在の患者数は異例です。
森田:梅毒は過去最多とマスメディアでも報道されていましたね。そもそも梅毒とは、どんな感染症なのでしょうか。
田中:多くの人には馴染みが薄い病気だと思います。いわゆる性感染症の一つで、粘膜同士の接触で感染します。感染力が強いのが特徴で、キスだけでも移りますし、コンドームをつけていても移るほどです。症状としては、最初は陰部が腫れたり、ただれたりします。それがおさまると、次に全身に湿疹が出るなど、症状が時期に応じて変化していきます。一方、まったく無症状の方もいるので、感染拡大防止が難しいと言えます。こうした背景から感染が爆発的に増えているのでしょう。
梅毒にかかりやすい人って?
森田:受診者の属性はいかがですか。
田中:私の感覚ですが、男女年代、職業問わず幅広い属性の方がいらっしゃっています。身近に相談できるクリニックをコンセプトにやっていることも理由の一つかと思います。
森田:健診の費用はどのくらいかかりますか?
田中:症状があれば保険診療で可能です。検査費用としては2500円ぐらいでしょうか。無症状だと自費になりますが、4000円ぐらいです。結果は3日以内にアプリで通知しています。当日どうしても知りたいという方には追加料金になりますが、約7000円で対応が可能です。約30分で結果を知ることができます。こちらは保険外となります。
森田:東京都では保健所でも無料で検査をやっていますね。HIVの抗体検査のほかB型肝炎や梅毒、クラミジアも無料で検査できます。そことの違いはいかがでしょうか。
田中:保健所の検査は予約が埋まっていることが多く、結果が出るまでにも1,2週間かかると言われています。早く検査結果を知りたい方が多いので、その場合はクリニックに帰依いただく方がいいですね。
性のことを気軽に話せる社会の必要性
森田:子宮頸がんの9価ワクチンが公費で打てるようになりました。先生から見たメリットを教えてください。
田中:内科医という立場からいろいろなガンを診察してきた私から見ると、予防接種でガンを防げるのは画期的なことです。ガンがウイルス感染であることを突き止め、さらにワクチンまで開発されているというのは、医療の進歩の証でもあります。ワクチン接種については様々な考え、価値観がありますが、受けてもいいと思える方にはぜひ受けてほしいと思います。HPVワクチンは、性行為をする前に受けることがベスト。接種前には親子で話し合う必要もあるでしょう。そうしたことを話し合える親子環境があることがよりよい社会だと思います。
森田:そうですね。日本はまだ男性が公費で受けることができません。自費だと1本3万円かかりますが、打つ人はいるのでしょうか。
田中:男性でも自費で受ける人は意外と多くいます。そういった方は、ワクチン接種を社会的意義があることとして捉えている人もいます。男性も公費で負担されればという思いもありますが、国の予算も限られているので難しいかもしれません。
そもそも日本は諸外国より保険診療が充実しています。そのせいか、健康について議論する機会があまりありません。性のことについても話し合う文化がないですよね。9価ワクチンについても、接種が急に伸びているわけではありません。まずは、情報が行き届き、健康や性について、広く議論できる社会になればと思います。
医療現場から見るユースクリニックの必要性
森田:おっしゃる通りですね。認知については行政の役割が大きいと思います。次の4年間ではさらに力を入れてやっていきたいところです。
ところで、政策としてユースクリニックの設置を目指しているのですが、田中先生は若者を診察されていて課題に感じるところはありますか?
田中:やはり親にばれることを恐れている子は多いですね。診察していても、意を決して来てくれたんだなと思います。もっと早く来てくれればというケースも多く、気軽に学校や親にばれずにアクセスできる場所は必要だと思います。
森田:性感染症を疑った場合、男性は泌尿器科で女性は婦人科を訪れますが、そこがまずハードルですよね。先生のクリニックでは総合的に診てもらえる安心感があります。
これから夏にかけて気をつけた方がいいことはありますか。
田中:人出が増える季節になりますね。人流が増えれば、あらゆる感染症のリスクは高まります。かといって、コロナ禍で自粛生活が続いた中、コミュニケーションを取り戻すことも大事だと思います。これまで通り感染症対策として、手洗いや密な環境でのマスク着用など、できる限りの対策をしていくことが必要です。また、性感染症についてはコンドームをつけるなど、完璧な予防策ばかりではありませんが、できることをやっていくしかないと思います。
森田:避妊具は避妊だけが目的ではなく、感染症対策としても有用だということですね。
田中:はい。あとは検査も活用してもらえたらと思います。パートナーが変わったときには、受診することも検討してもらいたいです。
森田:そうですね。パートナーと一緒にクリニックを訪れることもできますね。本日はありがとうございました。
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