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愛犬の老衰 お別れの準備とそのあとについて

はじめに

2021年5月22日午前1:38 最愛の犬なつおくんとお別れしました。老衰でした。
老衰というと、家族に見守られながら眠るように…というのが定説のように語られています。実際かかりつけの医師にもそのように言われました。しかし、なつおくんは荒い息で苦しみながら亡くなりました。あまりにも苦しそうだったので、家族が気付かなかっただけで本当は重篤な病気にかかっていたのでは?とさえ思いました。でもきっとあれが老衰なんだと思います。もしかすると「眠るように死ぬ」というのは実際には存在しないことなのかもしれません。
今回はなつおくんの死を通して学んだこと、経験したことを共有しようと思い筆をとりました。
愛犬が年をとってきた、これから犬を飼おうと思っている、という方に是非読んでいただき、犬を飼う覚悟、そして愛犬の死の備えをしてもらえればと思います。

注意
当記事に記載しているものは飼い主の私達が犬の様子を見ながらその都度判断し試したことを記載しています。中には医師には相談せず行ったこともあります。

なつおくんについて
2005年5月15日に推定1歳で我が家にやってきた保護犬の雑種の男の子です。元々保健所におり殺処分寸前だったところをNPO法人 日本動物生命尊重の会にレスキューされ助かりました。
最初は、「おとなしい犬です」と紹介され譲渡会ににて対面しましたが、ただおとなしいのではなく人間の様子を伺い怯えている様子でした。なつおくんが心を開くまでには3年近くかかりましたが、根気強くコミュニケーションをとることで家族が大好きになってくれました。

老衰とは

人間も同じですが、見た目も中身も衰えて終わりに向かっていきます。犬の場合は(犬種にもよりますが)7歳〜10歳くらいを迎えると老犬と呼ばれ、老化が始まっていきます。
老化がはじまると、歩く速度が落ちる、吐き戻しが増える、階段が登れなくなる(降りれなくなる)…などが起こります。老化の速度は人間よりも早く、1ヶ月ごとに変化したりします。
何か変わったな、年を取ったなと思う変化の気づきが1ヶ月だったのが1週間、3日、1日…と、どんどんその間隔が短くなっていきます。最終的には内臓機能が極限まで低下し、最期はほとんど何も食べられなくなり、飲めなくなります。そして死を迎えます。これが老衰です。

…と、ここまではネットで調べたら大抵出てくる情報になります。

なつおくんの場合…
そもそもなつおくんは食べることが好きではない犬だった為、老衰が始まった時期があやふやでした。大好物の豚肉と鶏もも肉のひき肉に興味を無くした様子で食べなくなり、もしかして老衰にはいった…?という形で気付きました。
なんとかして食べてもらおうと茹でた豚肉や鶏肉を細かくちぎったり、それも受け付けない時はさらにお肉をすりつぶし犬用チュールでとろみをつけたりもしましたが、それも徐々に受け付けなくなりました。

一口に老衰といっても老衰初期と末期があります。初期と末期を行ったり来たりするような期間もあります。
老衰末期から死ぬまでの期間には個体差が激しいようで、どんなに短くても2〜3日はかかるようです。いつ死ぬのかは誰にも分からないので、まるで出口の見えないトンネルです。お世話をしていると1日は長く感じ、ほとんど眠れない夜もあります。
でも、一番不安なのは犬自身です。どうして体が上手く機能しないのかが理屈で分からないからです。
飼い主の責任と思って覚悟してお世話して見届けてあげてください。
この期間を頑張って乗り越えることで愛犬の死と上手く向き合えることと思います。

老犬の「終活」

人間でも身辺整理やお葬式の資金準備などいわゆる「終活」をする人も多いと思います。
犬も同じで終活をしておくと見送る側の心の準備になります。私達が何を準備したか具体的に書いておきます。

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人形の作成
犬が生きた証を残したかったので、羊毛フェルト作家さんに頼んで犬の人形を作ってもらいました。
犬の毛を混ぜて作ってもらいました。亡くなる前も今も作ってもらって良かったなと思っています。

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家族写真の撮影
友人のカメラマンにお願いして、犬を中心にした家族写真を撮ってもらいました。犬単体の写真はスマホなどで良く撮っていたのですが、犬+家族の写真はあまりないなと感じたためです。スタジオに行くのは犬にとってストレスだと感じたため、友人に家に来てもらい自宅で「いつもどおり」の様子を撮影してもらいました。とても良い思い出になりました。
また犬単体の写真も撮ってもらっていたので遺影にもなりました。

お葬式をどうするかを決めておく
これは私の考えですが、お葬式は故人のためではなく残された者の心を癒やすためのものだと思っています。やっておくと区切りがつきます。お葬式をあげるならどこにお願いするかの下調べをしておくと良いです。
お葬式をしないにしても火葬は必要になるので、犬の死後をどうするかを家族で話し合っておくと良いと思います。

準備しておいてよかった物

完全にヨボヨボになる前に準備しておいてよかったと思ったものを記載します。準備したけど使わなかったもの、準備がなく困ったものも記載しています。

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ペンとノート
家族みんなでお世話をしていたので情報共有としてノートに犬の様子を書いていました。正確に状態が把握できたので良かったです。何時に吐いた、何時に下痢した、何時に寝返りを打たせた、水を10ml飲ませた…など。人間の記憶は曖昧なものなので些細なことでも書くようにすると良いと思います。お医者さんに話す際にも役立ちます。

体圧分散マット
犬は老化が進むと寝たきりになる場合があります。1年以上の介護が必要になることもあります。その際、硬いベッドや、ただのペットシーツだけだと床ずれを起こしてしまいます。体圧分散マットで犬が辛くない生活を過ごせるようにしてあげると良いと思います。それでも様子を見ながら3〜4時間で寝返りを打たせてあげていました。

犬用おむつ
犬のサイズに合ったおむつは必須だと感じました。健康なときと違い下痢だとトイレまで間に合わないこともありますので、おむつをつけておくと安心です。

ペットシーツ(大・小)
おむつをつけていても、たくさんおしっこをした場合、横漏れしますのでペットシーツは常に敷いておいたほうが良いです。また、嘔吐もよくするのでシーツがあれば抱き起こして背中を擦ってあげることに集中できます。犬が大きい場合は大きいシーツのみで良いと思いますが、小さいシーツもちょっとしたときに使える(後述)のであると良いと思います。
また、死後は筋肉の弛緩によって体内に残されていたものが流れ出てきますので、シーツは生前も死後も使います。いっぱいあると良いと思います。

シリンジ
横になっている犬に水が与えられます。起き上がって水を飲むのが困難になったため購入しました。
犬が目を覚ましたタイミングで口の脇に軽く挿入し少しずつプッシュし飲ませます。喉をゴクッと動かさない場合は飲めていないので様子を見てやめたり、口や喉を優しくマッサージして嚥下をサポートしました。
鼻の長い犬の場合、右から左へ水分がこぼれてしまうことがありますのでシリンジで水分を与える場合は小さいペットシーツを口の下に敷いてあげると良いと思います。

経口補水液
シリンジで水分をあげる際ただの水だけだと与えられる量に限りがあり脱水症状になってしまうため、経口補水液を用意しておくと良いと思います。
なつおくんの場合、食事もろくにとれていない状態だったので人間用のものを与えていました。食事をきちんと食べているようでしたら犬用のものを与えるか医師に相談し処方してもらったものをあげてください。

介護用ハーネス
犬の背中にバッグの取っ手がついたようなハーネスです。歩行のサポートができます。なつおくんはあまり使いませんでした。大きな犬の場合寝返りにも使えると思います。

犬用洗い流さないシャンプー
おむつで下痢をした際、お尻の毛がうんちまみれになってしまいます。汚れを十分に拭き取ったあとに犬用洗い流さないシャンプーで綺麗にしてあげると清潔です。

遠赤外線パネルヒーター
犬のそばに常に置いて体が冷えないよう24時間つけっぱなしにしていました。体全体が温まるよう寝返りを打たせる度に向きや位置を変えていました。キャスター付きのものを使用していたので移動が便利でした。

掛け布団
体温が下がった犬にかけてあげます。首からしっぽまでが入るサイズが良いと思います。特に寒い日は重ね掛けしてあげてください。

保冷剤
犬の死後に使用します。季節の変わり目は老犬が亡くなりやすい時期でもあり、火葬場や斎場が混み合うことがあります。そうすると亡くなってすぐに火葬ができず、しばらく自宅で一緒に過ごす場合があります。その際に遺体の腐敗を食い止めてくれます。

保冷アルミシート
犬の死後に使用します。処置した保冷剤が溶けるのを遅延してくれます。保冷剤を置いたあとにかぶせてあげると良いと思います。小さい犬であればダンボールにいれて蓋をしても良いと思います。
我が家は犬が大きかった上にダンボールも保冷シートもなかったので保冷つきエコバッグをはさみで解体して犬にかぶせました。はみ出てしまったところはアルミホイルでくるみました。

本当に最期の犬の様子

専門家ではないのでどういう順番で犬の体の機能が停止していくのかは分かりませんが見たままを書こうと思います。

亡くなる前の共通行動
・下痢や嘔吐をする。
・軽い痙攣、顎をガチガチとさせる。
・目がうつろで起きているのか寝ているのか分からない。
・口のにおいがきついアンモニア臭になる(魚が腐ったような酸味のあるにおいアセトン臭と呼ばれるそうです)
・上手く立てなくなる。特に後ろ足がへたり込んでしまう。
・体温が平熱より低くなってくる。
・こんこんと眠り続ける時間が増える。

亡くなる1日前
・お腹が痛むのか泣くように吠える。痛みには波がある様子で、波がくると前足をばたつかせて苦しむ。
・あまり眠らなくなる。ずっと目をギンギンに開いていて、30分に1回くらいの頻度で苦しみながら泣く。
・呼吸が荒くなる。

亡くなる当日
・全く眠らなくなる。
・ずっと泣き続け苦しそうに前足をばたつかせる。
・ワンオペが無理な状態になる。(交代で食事をとったりして誰かがそばにいる状態を保つ)
・全力疾走したかのように呼吸が荒くなる。
・立たせたときに前足も踏ん張れなくなる。
・甲高い声でワンワン!と泣く。何かを話してる?

亡くなる直前
・舌をだしてハァハァと息をしたかと思うと、口をグッと閉じてフーフーと苦 しそうに鼻呼吸、また口を開いて舌を出してハァハァと息をする…をずっと繰り返す。
・体全体を痙攣させる。
・たまにかすれた声でフゥーン…と泣く。
・上記を1時間半繰り返す。陣痛のような感じで苦しそう。

亡くなる瞬間
・体を激しく痙攣させる。
・心肺停止。(電流が流れたような衝撃で体が動く)
・筋肉だけが痙攣し顔や足が動き続ける。(生きてると思うほど活発に動く)
・徐々に筋肉が弛緩しはじめる
・あっという間に死後硬直が始まる。

亡くなったらすぐにやること

亡くなったあとはとても悲しく気が動転してしまうと思いますが、落ち着いて行動してください。

足を自然な形に折り曲げる
人間と違い犬は死後硬直が早く、末端からあっというまに固くなってしまいます。足を折り曲げていないと適正サイズの棺に入らなくなります。亡くなる瞬間は苦しくて足を突っ張るので、真っ先に足を優しく折り曲げてください。

顎を閉じる
筋肉が弛緩してくると顎が開いたまま固まってしまうので、紐やハンカチなどで顎を閉じて固定してあげてください。
また、瞼は人間と違い筋肉でできているため、閉じてあげることができないようです。軽く手で閉じてあげ、半目状態にしておくと後の眼球陥没と共に目をつむりました。

頭やお尻の下にペットシーツを敷く
筋肉が弛緩し体内にのこされた内容物が口やお尻から出てきます。ベッドなどが汚れないようペットシーツを敷いておくと良いと思います。

保冷剤や保冷シートで処置する
内臓と脳が真っ先に腐敗が進む部位だそうです(斎場の方に聞きました)
頭とお腹に保冷剤を置いて処置してあげてください。

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おわりに

大切な愛犬を亡くす、この悲しみは一生癒えることはありませんが、今は前向きに捉え、受け入れられる日がくるのかな…とも思っています。これは家族で話し合い、犬の死の備えをしたことによって得られる思考なのかもしれません。
また、お見送りする際は「ありがとう、今はバイバイ、また会おうね」と話しかけ、お別れしました。もし死後の世界があるのなら、そこでまた会おうね!という思いからそう伝えました。伝えたいことがあったら何度でも声をかけてあげてください。きっと聞こえていると思います。少なくともなつおくんは聞いている様子でした。

対象の存在が亡くなってしまうと、何かやってあげたくでもできなくなる状態になります。
後悔が残らないよう愛犬と過ごしてください。

犬に限りませんが、生き物を飼うことは楽しい時間のほうが圧倒的に長く、そして愛らしく、私たちを癒してくれます。しかし最後には顔を背けたくなるような死の瞬間にも必ず立ち会わなければなりません。愛情と責任を持って犬に寄り添い見届けてあげてください。