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「面白きことは良きことなり」の精神で生きたい『有頂天家族』

こんにちは、石川由弥子(ゆみこ)です。

みなさんの聖地はどこですか? 私は京都の「下鴨神社」と「糺の森」です。(これでピンときた方は同じオタクですね)

半年くらい前に不意に思い立って、夜行バスに伸び乗り、朝一で下鴨神社に参拝しました。我ながら自分のオタク具合に辟易します!そんな自分が大好き!

今日は私のパワースポットが舞台になっている、森見登美彦さんの『有頂天家族』をご紹介します。

こんな人におすすめ

人生に疲れた方 / たぬきにでもなりたい / 京都が好きな方 / 兄弟愛が好き / リズムの良い文章が読みたい

『有頂天家族』のあらすじ

舞台は京都。古来より京都という場所は、人に化けた天狗と狸が人間に紛れて暮らしていた。糺ノ森に住む狸の名門・下鴨家の父であり、狸界の頭領「偽右衛門」でもあった総一郎は、ある年の瀬に何の前触れもなく人間達に狸鍋にされ、帰らぬ狸となってしまった。
遺された「下鴨四兄弟」の三男で偉大な父の阿呆の血を色こく受け継いだ矢三郎は「面白く生きる」がモットー。天狗の赤玉先生の世話をしつつ弁天の美しさに魅かれ、宿敵の夷川家の金閣・銀閣と張り合うなど退屈する暇もない。生真面目だが土壇場に弱い長男・矢一郎は次期「偽右衛門」を目指す。しかし下鴨家は、父を狸鍋にした金曜倶楽部に狙われてしまい…!?

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(意外と狸とアライグマを見分けるのが難しい)

『有頂天家族』のおすすめポイント

森見登美彦さんといえば、『夜は短し、歩けよ少女』や『四畳半神話体系』などが有名ですが、本作は初の動物が主人公の作品。狸です。狸が人間に化けたり、狸のままで京都の街を走り抜けたりします。文中に地名が出てくるので、京都にゆかりがある方は、狸が走り回る様子を脳裏に浮かべながら読んでみてくださいね。

そんな『有頂天家族』のおすすめポイントは3つ。

1. 愛すべき阿呆な下鴨四兄弟

下鴨四兄弟の偉大なる父・総一郎はそれはそれは立派な狸だったと評される一方で、下鴨四兄弟は4人集まってようやく一人前。主人公の三男・矢三郎は父の化け力を色濃く受け継いでいますが、同じく父の「面白きことは良きことなり!」の言葉を身上に勝手気ままに生きているし、長男の矢一郎は、生真面目で融通が効かない性格で土壇場に弱いのが玉に瑕。次男の矢二郎はとある理由で蛙の姿で隠居中で、四男の矢四郎は化けるのが苦手で恐怖を感じるとすぐ狸の姿に戻ってしまいます。三者三様ならぬ四者四様、かつ完璧ではない兄弟たちが本当に愛おしいのです。

2.母は強し

偉大な総一郎を旦那にし、ダメ息子たちを愛する肝っ玉母ちゃん・桃仙。宝塚に心酔する母は、人間に化ける時は麗人へ。可愛らしい見た目に反して、ムカついた時は「くたばれ!」なんて発言しちゃう、アグレッシブなところが魅力です。いつでも四兄弟をでっかい器で見守り、立派に四兄弟を育てた母にも苦手なものがあります。それは雷。四兄弟たちはそれを知っているので、雷が鳴ると一斉に母の元に集合し、肩を寄せ合って耐え忍びます。阿呆の四兄弟の憎めないところは、母への深い深い愛情毛玉たちは家族想いなのです。

3.種族を超えた愛

矢三郎を取り巻く狸以外の存在として欠かせないのが、彼ら四兄弟の恩師の天狗・赤玉先生と、本人間で赤玉先生の弟子・弁天。矢三郎は訳あって赤玉先生のお世話をしているのですが、その関係性がとても良い。口では汚く罵り合ってはいるものの、赤玉先生は矢三郎を気に入っているし、矢三郎も先生が好き。なんでも言い合える師弟愛が素敵です。一方、美しい弁天に対しては恋心を抱いていた過去も。天狗らしく力を溜め込んでいた弁天に利用され、手足となって動いた経緯もありますが、手に入れられないものほど輝かしいものはないですね。愛の形は違いますが、かけがえのない存在であることは間違いないです。

阿呆の血のしからしむるところ

愛すべき四兄弟が天狗や元人間を巻き込んで京都の街を駆け抜ける本作。父親を鍋にされたシビアな過去を持ちつつも、その深刻さを感じさせないコミカルさが魅力のひとつです。全ての行動指針は「面白きことは良きことなり」!そして、それの根拠が「阿呆の血のしからしむるところ(アホの血がそうさせる)」だから。

物事を選択する時の基準は人ぞれぞれだと思いますが、私の場合は損得勘定が判断基準になることが多いです。面白い、面白くないというよりも、自分の得になるか、自分へのリターンが大きいかどうか。しかし、矢三郎の選択の基準は「面白いかどうか」ということ。自分に制限をかけていないから突拍子もないことを思いつくし、大きく物事をかき回すし、とにかく楽しそうなのです。

予想の域を出ない生き方より、たまには心のままに「面白きことは良きことなり!」と「えいやー」と選んでみるのも一興。人生に面白さを求めて、私は下鴨神社を訪れるのです。

ではまた〜

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