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献立は愛情『彼女のこんだて帖』
こんにちは、石川由弥子(ゆみこ)です。
みなさんには思い出のこんだてはありますか?
私にはたくさんあります。祖母が作ってくれた、豚と玉ねぎを甘く煮て卵で絡めた他人丼。母が得意な、大量に作る唐揚げとじんわり味が染みた煮物。妹がハマって作ってくれたレアチーズケーキ。どれも子どもの頃の思い出と共に残っています。
今回紹介する作品は、角田光代さんの『彼女のこんだて帖』。料理を起点として描かれる、オムニバス形式の物語です。
『彼女のこんだて帖』のあらすじ
長く付き合った男と別れた。だから私は作る。私だけのために、肉汁たっぷりのラムステーキを!仕事で多忙の母親特製かぼちゃの宝蒸し、特効薬になった驚きのピザ、離婚回避のミートボールシチュウ―舌にも胃袋にも美味しい料理は、幸せを生み、人をつなぐ。レシピつき連作短編小説集。
『彼女のこんだて帖』のおすすめポイント
主人公と料理が変わっていくオムニバス。本作は、前の話の脇役が、次の作品の主人公になるという、にくいしかけが楽しめます。
私が好きな話は、「かぼちゃの宝蒸し」。多忙なシングルマザーが主人公の物語です。
女でひとつで子どもを育てるために忙しく働いていたため、息子に気に掛けられなかったと後悔しています。しかし、そんな彼女の後悔は一本の電話で解消されるのです。息子の恋人と名乗る相手から、息子の誕生日に「かぼちゃの宝蒸し」を作り方を聞かれます。
息子にとって母が作ってくれたこの料理が思い出の料理。母の愛情を息子はしっかりと受け取っていた、そういうお話です。
他にも、恋人と別れ、自分のために作った肉汁たっぷりのラムステーキを思い切りかぶりつくお話など、思い出と美味しそうな料理の話が楽しめます。
思い出は献立とともに
日々の何気ない料理から記念日の料理など、料理と思い出は密接につながっているもの。食事を通して愛情が伝わります。
本作を読んで、人と食べる食事も、自分のために食べる食事も、どっちも大切にしようと思いました。大切な人と食事がとりたくなる、そんなお話です。
また、巻末には小説に出てくる献立のレシピも。主人公たちと一緒に料理の美味しさも分かち合える作品です。
ではまた〜