見出し画像

規則


吉川静子の回顧展に行った。具体の精神を受け継ぎ、グラフィックデザイナーとしてスイスで活躍したアーティスト、まあ全く知らない作家だった。

自然現象を幾何学・グリッドデザインに置き換え、直線で描かれた図形をひたすらキャンバスに繰り返していく。
ミニマルな形だからこそパステルやペールトーンカラーのアクリル絵の具が際立ち、色がもたらす快楽がパッと飛び込むようで、単純に心地よかった。
距離を離れて作品を眺めてみると、無意識に規則性や関連性を見出そうとしている自分に気付く(もちろん作者の狙いでもあろうが)。描かれたかたちに対する作者の意図がわからないので、ひたすら帰納法的に共通項を見出していく営みを続ける。
ウパニシャッドのオマージュという作品のあと、作者は宇宙を意識した作品群を描き出す。宇宙という言葉に、ウパニシャッド哲学が語る宇宙の根本原理を連想した。我々の生命も宇宙の一部であり、それを自覚できないがゆえ、輪廻を繰り返す。円形を取り入れたキャンバスはくるくる回る輪廻のようだ。
キャリアの始めのころ、ひたすら直線を描き格子のように入り組んだ作品は、晩年は点や円が散らばり収束していく絵に変わる。人間の生涯の変化を感じて、文字通り人は丸くなってゆくよう。

夫であるヨセフ・ミュラー=ブロックマンもグラフィックデザイナーであり、具象を極限まで削減したタイポグラフィに目を惹かれた。

疲れていたから、スターバックスのドリンクチケットを貰っていたのを思い出し、最寄りのスタバに寄った。金が無かったので助かった。
中身を見ずに借りた本、なかなか読み進められない。

いいなと思ったら応援しよう!