【回想録】仕事の「面倒くさい」を解消する Step.1
1999年4月、大学を卒業した私は父が経営する不動産会社「協和開発株式会社」に入社しました。
入社当時から、協和開発では賃貸事業を本格的に行っていました。
入居にあたっては、賃貸契約を行う前に資格者が契約内容について文書を交付しながら説明するため、「重要事項説明書」を作成する必要があります。
そして説明が終わり、ご納得いただけたら賃貸借契約を結んでいただくため、賃貸借契約書も作成しなくてはなりません。
当時、こういった書類は一太郎といった文書作成ソフトで物件ごとに書類を作っていました。
例えば、Aハイツ 101号室の契約が決まったら、過去に作ったAハイツの重要事項説明書や賃貸借契約書を呼び出して、号室や氏名などを書き換えて印刷するといった感じです。
物件数や、文書作成頻度が少なければ、この方法はアリでしょう。
しかし、みんながみんな、適切に文書を作ってくれるとは限りません。
名前間違い、号室間違い、同じ物件でも間取りが異なっているせいで設備の内容や面積に誤りがあった・・・などなど、この当時から問題は発生していました。
だんだん私のイライラも膨らんできました。
これは何とかしないと・・・。
そこで、私は自分で業務システムを作ることにしたのです。
まずはじめに作ったのは、賃貸借契約書を作成するシステムでした。
賃貸借契約書だけの作成であれば、最低限の物件情報と、入居される方の情報があれば作成できると思ったからです。
その当時管理していた賃貸物件の情報をデータベースに入力した上でシステム設計にかかりました。
この時から、できるだけ特別なソフトを使うことなくブラウザのみで完結するシステムを作ることを目指していました。
ブラウザ上で動くシステムを使っている方だったらお分かりいただけるかと思いますが、何らかの帳票類を作ると、一旦PDFなどが作成され、ユーザーが別途専用のソフト経由で印刷操作することが一般的です。
私は、この操作をなくし、サーバーから直接プリンターに印刷できることを目指したのです。
イメージとしてはこんな流れです。
まずブラウザ上のシステムで、入居される物件を選びます。
Aハイツ・・・101号室を選択。
次に契約始期と契約者、入居者の情報をそれぞれ入力します。
契約始期・・・2000年6月1日、契約者・・・テスト太郎、入居者・・・テスト太郎(本人)、テスト花子(妻)
契約期間は2年間で固定、貸主や家賃、敷金、駐車料といった賃貸条件は既にデータベースに入力されているので、内容を確認、修正するだけです。
最後に印刷ボタンを押すと、サーバー上で書類を作成し、直接プリンターから印刷されます。
いかかでしょうか?とても流れがシンプルです。
流れはシンプルなのですが、この機能を実現しようとするとまず問題となったのは、いかにサーバー上で文書を作成し、プリンターに送るか?しかもお安く、ということでした。
文書を作成する事自体はそれほど大きな問題はありませんでした。しかし、サーバー上で文書を印刷させる処理を行うこと自体、あまり想定されていなかったため、解決策を自前で用意するしかなさそうでした。
う・・・む。
試行錯誤すること約1週間。何とか解決策を用意することができました。
ユーザーが印刷ボタンを押すと、サーバー上ではWordが起動し、賃貸借契約書の雛形を読み込みます。そして、データベース上の情報とシステムで入力された情報を基に賃貸契約書を自動的に作成し、印刷処理を行います。
このサーバー上でWordを起動させる処理を行うのは、遠隔操作扱いとなるため工夫が必要でした。
どうしたか?
遠隔操作であることを隠すため、システム管理者が手動でWordを起動しているように偽装工作を行ったのです。
ええ、まぁ、色々やりました。
今ではライセンス上の問題とセキュリティ上の問題、サーバーに負荷をかけすぎてしまう・・・そう、クールなやり方ではないため、別の方法で文書作成・印刷処理を行っています。
システムでの入力項目を必要最低限に抑えて契約書を自動作成させたことで、入力ミスを抑え、契約書作成時によく起こしがちな編集ミスを無くすことができるようになりました。
契約書作成にかかる時間も短縮することができたのは言うまでもありません。
これが最初に作った業務システムでした。2000年の事です。
今ではブラウザを使った業務システムは珍しくないですが、その当時からブラウザを使っていて、しかも賃貸管理システムで、です。
どちらかと言うと、先頭切って走っていたのかもしれません。(言い過ぎか)
まだ賃貸借契約書が作成できただけのシステムでしたが、その後システムでできることは増えていきます。
一つ一つ前へ。