cluster と VRChat を無理やり比較してみる
SNS 型メタバースとしては日本語話者の多い 2 つのプラットフォームを無理やり比較してみる、何番煎じか分からない試み。
はじめに
こんにちは。日頃メタバースで遊んでいるやまちゃんと申します。
さて、note のこんなページを読んでいる方は多分何かしらの SNS 型メタバース(※)で遊んでいらっしゃる方だと思いますが、みなさんはどのプラットフォームをメインとして遊んでいるでしょうか?
…統計上は VRChat が一番多く、その次が cluster になるんでしょうかね。
筆者は cluster をメインで使用し、VRChat を時たま使う…といった感じのユーザとなります。
同じ SNS 型でよく似ているところもあれば、全然違うところもある cluster と VRChat。独断と偏見で類似点と相違点を書き出してみようと思います。
対応デバイス
スマホ完全対応の cluster、PC が基本の VRChat
まずはプラットフォームの門戸の広さと、表現力の幅を決める対応デバイスの種類から。
ここは仕様・設計思想に大きく差がある点です。
cluster
対応デバイスが多様
Windows PC デスクトップ
Windows PC VR (SteamVR)
Mac OS デスクトップ
単体 VR (Quest 2/3/3S/Pro)
スマートフォン (Android, iOS)
機種間でワールド・アバター体験に大きな差異が無い
VRChat
完全な体験が出来るデバイスは限定的
Windows PC デスクトップ
Windows PC VR (SteamVR)
以下の環境ではワールド・アバター体験に制限が生じる
単体 VR (Quest 2/3/3S/Pro、PICO 4/4 Pro/4 Ultra、Vive Focus Vision / XR Elite)
スマホ版はさらに制限が厳しく、Mac は動作対象外
という形になります。
cluster の方が始めるためのハードルは低いです。
ワールドやアバターの表現力の差
cluster はスマホ含む多くのデバイスに対応しているので気軽に試せる一方、VRChat は PC メインで、単体 VR では遊べるワールドや使えるアバターが大幅に制限されます。
これだけを見ると cluster の方が良さそうですが、裏を返せばスマホや単体 VR の表現力の限界に高性能 PC ユーザも引っ張られるということになります。多くのリアルタイム光源を用いたワールド表現や、多彩なギミックを含むアバターなどは VRChat でないと実現できない要素となります。
加えて言えば、同じ PC といえども cluster はモバイルノートパソコンでもデスクトップモードであれば動作しますが、VRChat はいわゆるゲーミング PC が必須となります。
プレイヤー層
小学生からシニアまで居る cluster、青年ゲーマー層が多い VRChat
対応デバイスの差に起因するものですが、cluster は小学校低学年の児童からシニア層まで、プレイヤーの年齢層がまんべんなく分布している印象があります。一方で、VRChat は PC ゲームに興味を持つ青年・壮年世代にピークがあり、それ以外の層がやや薄い印象です。
もちろん、いずれもあくまで傾向の話であり、cluster にも 2~30 代のゲーマー層の人が集まっているコミュニティもあるでしょうし、VRChat に中高生や中年以降の人が居ないわけでもありませんが。
日本に偏る cluster、ワールドワイドな VRChat
cluster は日本発のプラットフォームということもあり、日本語話者が中心となっています。中国語・韓国語・英語・スペイン語の話者も居ますが、日本文化に興味がある人が来ている印象です。
VRChat はアメリカ発のプラットフォームで、UI も最近多言語対応されるまでは英語のみだったこともあり日本語話者はマイノリティです。
VRChat の「日本語クイズ」
日本語話者がマイノリティである VRChat 特有の文化として、日本語話者向けワールドの入り口に漢字の読みや地名当てなどの「日本語クイズ」が設置されていることがあります。
これは、日本文化に興味はあるけど、日本語は全く話せない……というユーザーが日本語話者向けのワールドに大量に集まった結果、肝心の日本語話者が出会えなくなってしまう事態が頻発したために導入されたものです。
日本語話者でないユーザーを排除することになるため賛否両論あったようですが、現状はこういう形に落ち着いています。
cluster のみ使用しているユーザーにはピンと来にくいですが、ロビーに日本語が話せない人が常時 30 人くらい居て、テキストチャット欄に英語やスペイン語が飛び交う状態を想像すれば分かりやすいでしょうか。
cluster の「キッズ」
VRChat は 13 歳未満の利用を禁じているのに対して、cluster は登録年齢に制限がありません(※1)。むしろ学校教育での利活用を積極的に押し出しており、小学生の利用者も多くなっています。
この結果、不特定の人々とのコミュニケーションに不慣れな状態の子どもが利用していることも多く、イベントにおいて壇上に上がって騒いだり、通常のスペース(※2)で暴言を吐くなどの迷惑行為が見られることがあります。
また、低年齢層ユーザーはゲームワールドをメインに遊ぶことが多く、その感覚で他のユーザーのアバターを武器で攻撃する真似をしたり、当たり判定のある手持ちアイテムで実際にアバターを弾き飛ばすなどの行為も見られます。
コミュニケーション方法
テキストとエモート主体の cluster、ボイスチャット主体の VRChat
cluster はテキストチャットのシステムがよく整備されていること、デスクトップ・スマホでもアバターの腕が動かせたり、エモート機能によって全身のアクションを取れたりするため、これらによる非音声のコミュニケーションが主体です。スマホユーザーが多いという事は、外出先などで音量をミュートにしてプレイしているユーザーも多いという事であり、そもそもボイスが聞こえていない人も多いです。
また、イベントでは一般参加者のマイク使用が禁止されていることも多く、必然的にテキストチャットとエモートでのコミュニケーションになります。
VRChat はテキストチャットの機能が限定的である・日本語対応が不完全であること、デスクトップモードだと腕が動かないなどノンバーバルな表現力に制約があることなどから、ボイスチャットによるコミュニケーションが主体です。
「無言勢」の位置付け
cluster にも VRChat にもボイスチャットを用いないユーザー、いわゆる無言勢は存在します。
ただ、その位置付けは幾分異なっているように見えます。
cluster は上記の通りテキスト・エモート主体のコミュニケーションとなるため、ことさら無言勢を区別する習慣自体があまりありません。
VRChat から cluster に来た人がよく感じることに「みんな殆ど喋ってない」というのがありますが、この辺りに起因します。
VRChat ではデスクトップモードの表現力に限りがあること、テキストチャット機能が使いづらいこともあり、身振り手振りやワールド内のペンによる手書きで表現できる VR ならまだしも、デスクトップで無言勢はかなり難しい立ち位置にあると感じます。
cluster から VRChat に来た人は必然的にデスクトップ無言勢になりがちなので、ここは注意が必要な点です。
スマホ・デスクトップ勢と VR 勢のいざこざ、「多動」
cluster はスマホ・PC デスクトップモードだと三人称視点を使用しているケースが多いです。このためアバター同士の距離感が VR ユーザーと大きく異なり、他のユーザーの上に重なったり、VR ユーザーの目の前で武器などを振り回したりするなどの行為を悪意なくやってしまうケースがあります。
一方で、VRChat ではデスクトップモードのユーザーが手持ち無沙汰で移動入力をカチャカチャ操作してしまう、いわゆる「多動」(※)が良く聞かれますが、cluster ではあまり多くない気がします。PC ゲーマー率が VRChat の方が高いからではという仮説も目にしますが、どうなのでしょう?
いずれのプラットフォームでも、長く付き合うつもりのある相手にはそれとなく教えてあげるべき、という点は変わりません。
ユーザーの格付け
似て非なるユーザーランク
cluster にも VRChat にもユーザーを格付けし、昇格すると出来ることが増える格付けシステムが存在します。ただ、その位置付けは少し異なります。
cluster の格付けシステムは「ビギナーシステム」(※1)、格付けそのものは「ランク」(※2)と呼ばれています。ランクは「トラベラー」「ビギナー」「ユーザー」の 3 段階(※3)で、前者 2 つはユーザーアイコンの枠に色が着き、足跡・双葉マークが表示されるなど区別されます。
最初はトラベラーから始まります。この時点では商品登録と公開イベント開催が制限されています。
基本的に一通りの機能を一度試すとトラベラーからビギナーに昇格し、2 か月ほど遊ぶと通常ユーザになる、という形です。また、これらの昇格条件は公開されているため、新規アカウント作成直後に一気にビギナーに昇格させることは容易(※4)です。
ちなみに私は「ユーザー」です。
VRChat の格付けシステムは「トラストシステム」、格付けそのものは「トラストランク」と呼ばれています。トラストランクは「Visitor」「New User」「User」「Known User」「Trusted User」の 5 段階(※1)となります。ネームプレートの上にランクが表示されます。
最初は Visitor から始まります。この時点ではアバターのアップロードやワールドのアップロードを含む多くの機能が制限されています。New User になると自分のアバターのアップロードが、User になるとワールドの公開が出来るようになります。また、標準設定では荒らし防止のためトラストランクが低いユーザーほどアバターの見え方に制限が掛かります。
なお、トラストランクが上昇する条件は開示されていません(※2)。
ちなみに私は「Known User」です。
… New User の時に早くワールド公開したくて VRChat Plus 課金してみたら、一気に Known User まで上がってしまいました…。まだ 80 時間くらいしかプレイしてないのに (笑)。
いずれのプラットフォームでも、初心者ユーザ(cluster のトラベラー・ビギナー、VRChat の Visitor・New User)はそれ以外のユーザと比べて丁重に扱われる傾向があります。
称号の cluster、所属グループ表示の VRChat
ユーザーランク以外にそのユーザーの興味分野を示すものとして、cluster には「称号」、VRChat には「所属グループ表示」があります。
cluster の称号は特定条件を満たすと選択が可能になるものです。例えばワールドを公開して一定アクセス数を達成すると「ワールドクリエイター」が、イベントを開催すると「イベンター」が付与されます。
さらに達成難易度ごとに「エリート」「ベテラン」と仰々しい接頭辞が付いた上位称号(「エリートワールドクリエイター」等)が与えられます。
これらを用いて、例えば「私はワールド作りに興味がある」といった意思を表明できます。
もちろん、無表示とすることも可能です。
VRChat の所属グループ表示は、何かしらのグループに所属すると表示できるようになります。グループはユーザーが各自で作ることが出来る(※)もので、アバターユーザーの集い、技術領域の集会など多岐に渡ります。
また、ネームプレートにバナーが表示されるなど cluster の称号よりもアピール度・情報粒度共に上の機能となります。
住人の過ごし方
日常生活をシェアする方法
cluster は、アプリ内で写真とメッセージを併せて投稿できる「フィード」という機能があります。基本的にはこの機能を用いて日常風景やイベントの様子をシェアしている人が多いです。
また、ユーザー同士が直接メッセージをやり取りする機能もあります。
VRChat は、アプリ単体で写真やメッセージ等のやり取りをする機能はない(※)ため、VRChat 用の Twitter アカウントを用意し、そちらに写真などを投稿することが主流となっています。
パブリックとプライベート
cluster において、設計図であるワールドを基にして作られた個々の仮想空間の部屋は「スペース」(※1)と呼ばれます。
VRChat において、同様の概念は「インスタンス」(※2)と呼ばれます。
cluster・VRChat ともに、スペース・インスタンスにはどの範囲の知り合いが入ってこれるかを制御するスペースタイプ・インスタンスタイプの概念があります。
VRChat の詳細なインスタンスタイプの分類は下記リンク先にありますが、大まかに誰でも入れるパブリック(Public, Group Public)と、入れる人が制限されるプライベート(上記以外)に分かれます。
cluster のスペースタイプは比較的単純で、下記リンク先の 3 通りです。
https://help.cluster.mu/hc/ja/articles/4408894835225
cluster のスペースタイプ選択の UI に、対応する VRChat のインスタンスタイプを書き込むと概ねこんな感じです。
前置きが長くなりましたが、cluster は基本的にはパブリックで遊ぶ人が多いです。このため、人数の多いスペースにふらっと見知らぬユーザーがやってきてそのまま話す、といったことが比較的起きやすい環境です。
VRChat は、初心者向けワールドやランダムな会話を楽しむワールドなどの例外を除いて、日本語話者はプライベートで遊ぶ人が多いとされています。このため、基本的に明示的にフレンドに会いに行こうとしない限りなかなか日本語話者と話せない状況が生じがちとされています。
このことや、後述するイベントの位置付けの違いなどにより、VRChat の方が cluster よりも気軽にフレンドになる傾向があると言えます。
公式ロビーか、チュートリアル・お話ワールドか
cluster で不特定多数の誰かに出会うための場所といえば、クラスター社自身が用意しているロビー(Cluster Lobby)になります。
多くの人が集まっているほか、クラスター社によりピックアップされたワールドへのポータルや、アバターなどのペデスタルも置かれています。また、公式のスタッフが高頻度で在室しており、初心者向けの操作方法のガイドやワールドへの案内などが随時行われています。(※)
このように比較的公式の顔が見えるのが cluster の特徴といえます。
VRChat で不特定多数と出会う場所は、初心者向けのチュートリアルワールドや、会話を行う事を前提としたワールド等になります。
前者の代表格は『[JP]Tutorial World』(通称 JPT)・『VRC-JP 初心者プラザ [JP]』(ジェイプラ)など、後者の代表格として『日本語話者向け集会場「FUJIYAMA」JP』(FUJIYAMA)・『日本人向け 1対1お話しワールド NAGiSA [JP]』(NAGiSA)あたりが有名でしょうか。
いずれも、VRChat 社とは直接関係のない個人・法人が作ったワールドであり、公式の関与が薄いというのが特徴となります。
高い所が好きな cluster、鏡の前が好きな VRChat
興味深い点として、ユーザーが集まりやすい場所がプラットフォームごとに特徴があります。
cluster ユーザーは高い所が好きと言われています。特に若年層ユーザーを中心に、足場を飛び移りながらゴールを目指すアスレチックゲームが好まれること、VRChat と異なり垂直に近い斜面でもジャンプを繰り返せば登ることが出来る移動制御の違いなどが影響している可能性があります。
一方、VRChat ユーザーは鏡の前が好きと言われています。VRChat は視点が常に一人称であるため、自分の姿を確認するためには鏡が必要になります。このため自然と皆が鏡の前に集まるようになったと考えられています。
鏡とペン、動画再生プレーヤーが並べて置いてあるのは VRChat のワールドでは非常によくあるパターンです。
アバターのアイデンティティ
ここでは、両プラットフォームにおけるアバターに対する考え方について比較していきます。
前提として、cluster は VRM というある程度共通仕様に沿ったアバター規格を採用している一方、VRChat は専用 Unity コンポーネントをふんだんに使用した専用形式となります。
VRoid Studio 文化か、改変文化か
cluster をある程度遊んでいる人の場合、アバターは VRoid Studio で作成したものであるケースが多いです。VRoid Studio は VRM 形式のアバターをイージーオーダーで作ることが出来るソフトウェアで、予め用意された素体に髪型や服のメッシュを着せ、それらを体型のシェイプキーによって形状調整したり、素体や服などのテクスチャを編集していきます。
Blender で作るほど本格的ではなく、次に言及する改変よりはオリジナル度が高い…といった形でしょうか。
VRChat をある程度遊んでいる人の場合、アバターは 3D モデラ―が販売している「VRChat 想定アバター」を入手して、Unity 上のツール群を用いて髪型や服などを組み合わせていく…といった方法で行う「改変」が主流です。原型となったアバターの形態が色濃く反映されることが多いですが、一方で VRChat 想定アバターのクオリティは VRoid Studio のそれよりも高いものが多く、細部の表現や、凝った改変を行った際のオリジナリティはこちらに軍配が上がります。
原型となったアバターのユーザ同士が「○○アバター集会」などと称して親睦を深める傾向が強いのも VRChat の特徴です。
いずれの場合も、アバターの素体や服は BOOTH などのサイトで探してくるケースが多いのは概ね共通です。無料の物もあれば有料の物もあり、値段も色々です。
また、VRChat 想定アバターを VRM 化して cluster に持ち込んだり、VRoid Studio アバターを VRChat 向けに変換して使用したりするケースも勿論あります。
パブリックアバターを使うという選択肢
cluster・VRChat とも、誰でも使えるように展示されているアバターを使う、という選択肢があります。特に始めたてのユーザに多い傾向で、VRChat の場合 Visitor ランクの時はこの方法でしかアバターを変えられないため必然的にこの方法を学ぶことになります。
VRChat では、初心者チュートリアルや Avatar Museum などに置かれているサンプルアバターのペデスタルや、既定のホームワールドにあるパブリックアバター一覧などから選んで使用することになります。バターとかポテトとかは有名ですね。
cluster では、ロビーに置かれているアバターペデスタルに日替わりでアバターが並び、ゲーム内ポイントで交換できるシステムが長らく機能していました。最近はこれに加えて、各自のワールドにもポイント交換のアバターペデスタルを置けるようになりました。
なお、cluster はアバター販売システムが存在するため、アプリ内でアバターを買うことも出来ます。cluster 内でのみ使用できるもので、ファイルを直接編集したり、他のプラットフォームに持って行ったりは出来ません。
あくまで「有料のアバターペデスタルがある」というイメージです。
アクセサリーによるチョイ改変ができる cluster
cluster 独特の仕組みとして、アバターに 3 個(※)まで後付けの 3D オブジェクトを取り付けられる「アクセサリー」という仕組みがあります。
帽子やバッジ、イヤリングなど様々な種類のアクセサリーが cluster アプリ内で入手可能となっています。アクセサリーは自作することができ、作ったものを cluster 内で頒布可能です。
アバターに凝ったギミックが仕込める VRChat
VRChat のアバターは、Unity コンポーネントをそのまま入れられるためパーティクルや小物、音声などを含む凝ったギミックを実装可能です。
ただ、これを悪用した荒らし行為が絶えないこと、必然的に処理が重たく・データ量が大きくなることなど課題もあり、重いアバターを表示無効化しているユーザーも多いです。
「イベント」の位置付け
メタバースの生活にハレとケがあるとすれば、ハレに相当するのはイベントでしょう。
両プラットフォームとも、音楽ライブ・趣味の集まり・技術フォーラムなど多種多様なイベントが存在していますが、プラットフォームの成り立ちの違いによるシステム的な位置付けの違いがあります。
システム標準の機能か、紳士協定か
cluster は元々イベントプラットフォームとして始まり、ワールド作成機能が追加されたのは後になってからのことです。こうした理由もあり、イベントカレンダー・スタッフ管理・控え室・投げ銭機能などのイベント向け機能がシステムに組み込まれているのが特色です。
VRChat はイベントに関する機能がシステムとしてあるわけではなく、あくまで通常のインスタンスをイベント会場としており、イベントスタッフと観客はシステム的には同格(※1)で、紳士協定で成り立っています。
イベント機能がある cluster
前述の通り、cluster はイベント向け機能がシステムに備わっています。
具体的には、イベント実施時の以下のような便利機能
主催者が、イベントスタッフの追加・削除を行える
イベントスタッフしか入ることが出来ない場所(楽屋・舞台裏)が作れる
観客のマイク権限・マイク音量の設定をイベントスタッフが行える
Web トリガを用いることで、cluster アプリ以外からイベントの状況に直接介入できる
観客が投げ銭アイテムを投げることが出来る
や、イベントを宣伝する機能
将来のイベントの一覧機能
ネームプレートにイベント告知を表示する機能
さらに、権利関係を処理する仕組み
JASRAC / NexTone との包括契約による楽曲利用の簡素化
利用楽曲を申請するだけ
があります。
「○○に Join」「イベントカレンダー」
VRChat のイベントは、前述の通り実体としては通常のインスタンスです。紳士協定ゆえパブリックだと荒らし行為の恐れがあるため、多くのイベントはプライベートインスタンスで行われます。
事前告知として、イベントを Twitter 等で PR する際に「(主催者の名前)に Join」などと記し、観客は事前に主催者とフレンドになっておき、開始時刻になったら Join する…という手段が使われます。
また、システム的にはイベントという概念自体がないため、イベントスケジュールをまとめたイベントカレンダーが有志の手によってつくられており、これを見て興味のあるイベントを探す人も多いです。
先述の日本語話者が多く集まるワールドには、大抵イベントカレンダーが設置されています。
あなたはワールドクリエイターですか?
チュートリアルで全員ワールドを作る cluster、ごく限られた人々が挑戦する VRChat
cluster には、アプリ内でワールド制作が完結する「ワールドクラフト」という機能が存在します。マインクラフトのような操作感で、ブロック状の床や壁などを敷き詰めていくとワールドが出来上がります。
もちろん Unity を用いた本格的なワールド作成機能もあります。
VRChat の場合は、基本的には Unity を使ったワールド作成機能のみが提供されています。ワールド作成=Unity 操作となるため、ややハードルが上がります。
また、cluster はワールドクラフトの操作を初心者向けチュートリアルの中で行うため、基本的にはユーザー全員がワールドを作ったことがあることになります。
「テスト」ワールドだらけの cluster、週一かつラボの概念がある VRChat
上記の差異は、両プラットフォームのワールド公開に対する考え方に影響を及ぼします。
cluster はお手軽にワールドを公開できます。「テスト」と名前に付いているワールドがやたら多いのも特色です。
逆に言えば、粗製乱造できてしまいます。ワールド公開数に応じてアバターなどの商品と交換できるポイントが貰えるのですが、欲しいアバターがある人がポイント欲しさに中身が何もないワールドを濫造する、といった状況が生じています。
VRChat は、一ユーザ当たり一週間に一つしか公開できない(正確には Community Labs(※)に公開できない)制限がある上、一定数のアクセス数に達して Community Labs を抜けない限り新着一覧に乗らないため、粗製乱造をすると埋もれてしまう結果になります。
このことはワールドのクオリティを担保するとも言えますし、ワールドクリエイターとしての参入障壁がかなり高いとも言えます。
まとめ
cluster・VRChat のどちらも SNS 型メタバースで大枠は似ているものの、設計思想の違いで色々な差異があります。
どちらか片方をメインに使っている人が別のプラットフォームに遊びに行くときは、細かい差異があることを心に留めておくと円滑に行動できるかもしれません。