
あなたは運動が苦手なわけではない -苦手と思い込んでしまった原体験はどこ?
子どもの頃、私は
「球技苦手…」
と思って生きてきました。
それが少し変わったのは、高校の体育の授業でバトミントンをやった時。
教えてもらえればできる
運動が苦手な人が多い学校だったせいか、体育の先生がただお手本を見せるだけではなく、言葉で丁寧にラケットの握り方からシャトルの持ち方、構え方に打ち方、と教えてくれました。
教わって理解できたら意外に体が動くのです。
おまけに、ラリーをするのによくペアを組んでいた友人は運動神経抜群。
色々アドバイスをもらったおかげでラリーが続くようになり、少しの変化球も入れる余裕までできて、やめろと言われるまで延々と続けられるようになりました。
この時の経験は
「ちゃんと教えてもらえれば私だってできる」
と、後になってとても役に立ちました。
教えてもらえなければできない
思い返してみると、水泳やハードルができるようになったのも「教えてもらった」から。
色々な動きを本能的にすぐできるようになる、あるいはちょっと見ただけですぐできるようになる、いわゆる運動神経のいい子もいますが、それ以外の子でも大抵の子は教わればできるようになります。
小さな時過ぎて自分が泳げるようになった時のことはもはや覚えていないのですが、自分の娘をスイミングスクールに通わせた時は感激しました。
水が怖かった子ですら、楽しいコーチと一緒にあっという間に水に慣れて、すぐに浮くように、そして何回もしないうちに泳ぎ出してしまうのです。
見学していて思ったのですが、スイミングスクールの1番下のクラスは泳げない子が来るところ。
人間は教わらなければ泳げないという大前提があるため、どう泳げるように導くかのノウハウは既に大量に蓄積されている。
そのノウハウを惜しげなく使って、多くても10人程度の少人数で指導してくれるので、スイミングスクールに行けばほぼ全ての子は一通り泳げるようになるのではないかな、と。
そこから泳ぐのが速くなるか、は、能力や練習量によるので別問題ですが、とりあえず「なんとか泳げる」程度にはなれる。
ところが小学校で毎年のようにプールの授業があるにも関わらず、泳げないまま卒業する子は一定数います。
それは「教えて」もらえないから。
2クラス合わせた大人数、しかもレベルの様々な子たちを先生2〜3人で見るわけですから、なかなかスイミングスクールのように少人数で丁寧に見てもらえることはないでしょう。
しかも指導する学校の先生が、スイミングスクールのような「全く泳げない子」を教えるノウハウを持っているか、と言ったら、持っていない先生がほとんどなのではないでしょうか…
球技苦手、私の原体験
そう考えると、私は中学まで球技をちゃんと「教わった」ことはないなあと思います。
それでもまあ、バスケットボールやサッカーはそこそこ好きだった。
嫌いだったのは、そうだ!!
ドッヂボール!!
子どものころ、そういえばドッヂボールが大っ嫌いでした。
今の子はドッヂボール用の少し柔らかめのボールを使うので痛くなく楽しく遊べるそうなのですが、私の時代は硬くてそこそこ重いボールが使われていたので、当たるとまあ、痛いんです。
私は子どもの頃から体が大きく、しかも微妙に鈍臭いのでいつも格好のターゲット(泣)
威力のあるボールを投げる男子のターゲットになりやすくてしょっちゅう痛い思いをしていました。
果敢にもボールを受け止めようとして突き指したことも数知れず…
今思えば、ドッヂボールで強い球を投げられる方法、とか、狙ったところに投げる方法、とか、機敏に避ける方法、とか教わった覚えはないですね…。
楽しめる人がやる分には構わないと思いますが、できない人には恐怖でしかないドッヂボール。
痛くて怖いドッヂボールのせいで、私には「球技苦手…」という負の意識が刷り込まれてしまったのです。
動きの習得タイプに合わせた運動指導
私の場合、高校生という割に早いタイミングで運動の苦手意識が払拭できたので、大学ではホッケーにチャレンジしたり、社会人になってからバレエを始めたり、挙げ句の果てには体を動かすことを商売にまでしてしまいました。
今現在、「運動が苦手」と思っている方は是非、いつから運動が苦手と思うようになったかを振り返ってみてください。
私のドッヂボールのように、何か苦手意識を持つ原体験のようなものはないでしょうか?
そして、多くの場合、その苦手意識は学校で植え付けられたものではないかと思うのです。
ピラティスインストラクターの養成講座で習うのですが、人が新しい動きを習う時、得意な方法は人によってざっくり3つにわかれるそうです。
1つ目は目で見ること
お手本を見てすぐに自分も動けてしまう人はこのタイプ。
多くの体育の先生はこのタイプで、どんな動きでも見ればすぐできて、運動が得意だったが故に体育の先生なのではないかと個人的には思っています笑
2つ目は言葉で聞くこと
目で見てもイマイチ体の動きにつながらないけれど、例えば右脚を前に出して、と言われればその通りにできる人。
私は典型的なこのタイプで、高校の体育の先生は言葉で解説してくれたので運動の苦手意識が払拭できました。
歴代のバレエの先生も、美しいお手本を見せてくれるだけではなく、言葉にすればできる人のために言葉を駆使してイメージ豊かに指導してくれました。
3つ目は誘導されて体で理解すること
意識すべき場所を触れられると色々なところがつながるタイプです。
使う場所、力を抜く場所、言われてもよくわからないけれど、触れられた瞬間、そう言うことか!!と理解できることがあります。
スイミングスクールやバレエなどでは先生はよく触って直してくれます。
ピラティスなどのボディワークの大人数のグループレッスンでは、一般的にこの3つのタイプの生徒さんがいらっしゃることを想定してレッスンをします。
少人数のクラスやパーソナルレッスンでは、生徒さんのタイプに合わせて指導方法を変えます。
苦手意識を植え付けられた原体験…
それはあなたに合った方法で指導されたものだったでしょうか?
おそらく指導すらされていない、されたとしても自分がわかりやすい方法ではなかったのではないでしょうか?
私の時代よりは指導法が研究されて若干よくはなっているようですが、娘の話を聞くと、学校の体育というのは未だに「やり方」を丁寧には教えてくれないようです。
走ったり跳んだりボールを使ったり、はできて当たり前で個人に合った教え方など大人数の授業でしてくれるはずもなく。
ただ「練習しておけ!」と、練習方法のアドバイスもないまま、根性でできるようになることが求められるようです。
がんばればできるようになるなら苦労しません。
できない人はそのがんばり方がわからないのです。
おまけに長縄など、連帯責任を問われ、できない人がさらに萎縮し居た堪れなくなったり…
「あなたは運動が苦手なわけではない」
とここで私が力説しても急には信じ難いかもしれませんが、運動が苦手、と感じた原体験が学校であるならば、騙されたと思って大人向けの何かを是非始めてみてほしいのです。
例えば泳げない人のためのスイミング、体の硬い人のためのヨガ、全く初めての人向けダンス、など。
ここでおすすめしないのは、恥ずかしいからと1人でジョギングなどを始めることです。
もしかすると体にクセがあって、急に運動を始めると体を痛めてしまうかもしれません。
なるべく初心者指導の経験豊富な指導者に付くことがおすすめです。
始めてみて、もしよくわからない、うまくできるようにならない、としたら、それはあなたの問題ではなく、指導方法があなたに合っていない、あるいは指導者と相性が悪いせいです。
もう一度、声を大にして言いたい。
あなたは運動が苦手なわけではない。
指導方法が合えば、最初は正直「大丈夫かな…?」と思った人も驚くほどの進化を遂げます。
指導者として多くの人と接して心から思うのは体を動かすのに邪魔になるのは「苦手」と思う気持ちです。
苦手、と萎縮することなく、きっとできるようになると信じて体を動かしてみましょう。
そして、運動のもたらすメリットをたくさん享受していただきたいなと思います。