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ただ、断片(まだ、スランプ)

相も変わらず断片ばかり。整合性を考えずにぽんぽん書いている。書けない日は全く書けないのだけど、書ける日は十編でも二十編でも書けてしまう。断片は不完全であるがゆえに美しい。ベルメールの少女人形のように。小説はしょせん“部分”の集まりだ。

逍遥。ひたすらに逍遥。そしてあなたは自分の背中に灰色のあざがあるのを見つける。

蝶を追いかけていたら、そこは深い闇だった。

僕が去ったあとで祭りが開かれ、あなたはそれに参加した。

聴診器で絞殺されたらしい

その古い硬貨が通行手形となる

生まれてすぐに死んでしまった子供のたどり着く屋敷。どこの扉をくぐっても、同じ広間にでる。生まれ変わるまで何度でも、その広間にでるのだ。

天井裏の手紙には「惑わされないで」とだけ記されていた。


言葉の力を過信してはいないだろうか。文字に起こせば起こすほど、輪郭がぼやけてしまうことに気づいているだろうか。小説は物事を語っているようで、実際は何ひとつ語ってはいない。そのはかなさに、たまらなくなるときがある。


白紙を手渡され、意味深に頷いている人々


不条理な戯曲
あなたは私をみることはない

劇薬を身体のなかでつくることができる爬虫類の一種。

朝方にだけ入れる透明な箱庭

天井桟敷に青いドレスの婦人がいる。
影はみずうみをたたえている。

いくつかの鉄塔
わたしの祈りがだれかに届くことを

魚を食う女の絵だけを描いている画家


なんか、分かってるふうなことを言いましたが、私は小説のことはいまだによく分かりません。文体も定まっていませんし。自分のなかの正解みたいなのはあることにはあるのですが、非常に感覚的なことなので、言葉で説明できないのです。


図書館へ行ってくると彼がいい、たしかに彼は行った。図書館の塀のむこうには歓楽街があった。



タイムカプセルが更新されている。


森のなかにふいにあらわれた緞帳


土地を追われ洞窟に棲むようになった
人類は進化を経て鉱物となった


葬式にいちどだけ会った彼女は薄い身体に低い声をしていた。


眼鏡を新調した
昔は眼鏡のつるで、よく耳を切った


やむことのないストロボライト
悲劇が終わるまでつづく


いったん断片はお休みして、そろそろ本格的に書かなきゃいけません。短いお話からはじめようかなと思います。

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青木夕海
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