闇バイト(エッセイ)
最近、私と彼女は「闇バイト」という言葉にハマっていて、怪しげな若者やませた小学生を見ては「闇バイトだ!」と言い合って笑っている。運が悪ければ自分も「闇バイト」に手を出していたかもしれないというスリルを、私も彼女もリアルに感じているのかもしれない。
「闇バイト」問題の本質のひとつは、事前に仕事内容を認識できないという点だろう。それは「雇用」という関係に原理的に潜む危険でもある。働く前の段階で、仕事内容を十全に知り尽くしているという状況はあり得ない。雇用側と労働者側の間には、絶対的に情報格差が生まれる。優位な雇用側が、悪意をもって糸を引けば、労働者は簡単に道を踏み外す。
だからこれは労働市場の問題なのであって、一部の例外的な若者が引き起こしている事件なのではない。雇用関係を結ぶという行為自体の危うさが問われているのだろう。