責任の余白(エッセイ)
朝の開場前、ギャラリーに蛾が迷い込んできた。ギャラリーの白く静謐な空間に蛾は不似合いだったが、新宿だし、と思った。場内には私のほかに新人2人しかいなくて、私が殺すしかないと直感的に判断した。
想定外の出来事は突然起こる。蛾は私たちの責任の余白をフワフワと縫って飛ぶ。その余白を埋めるのは私の役回りだった。何故かはわからないが、でも絶対にそうだ。
展覧会は週末特に暇で、今回は失敗の企画だった。昔なら客が少ないのを喜んでいたのに、知らぬ間に感性も変わったものだ。そういえば昨日からずっと眠くて、知らぬ間に目を瞑っている瞬間が増えた。ずいぶんと齢をとった。