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自分を「売る」(エッセイ)

美の倫理とは流行の倫理にほかならず、肉体のあらゆる具体的価値、つまりエネルギー的・動作的・性的「使用価値」を唯一の「交換価値」に還元することと定義できる。(中略)したがって、「美しくなれ」という命令法は機能的命令法の様態のひとつであるということがてきる。これはモノについても、女性(そして男性)にもあてはまるのであって、すべての女性が自分自身の美容師になる、つまり企業のデザイナーやスタイリストと同じ役割を引き受けるわけだ。
ボードリヤール「消費社会の神話と構造」

養成所に通っていたとき、「自己プロデュース」という言葉をよく聞かされた。それは自分自身を受け入れられやすい形に成形することで、つまり自分を「売る」ということだ。社会に出ていくためには、自分を抽象的で交換可能な価値に変換しなくてはならない。だから、「すべての労働は売春である」。

家で他人と喋らずに過ごしていたら、声量が出なくなってしまった。落語にも身が入らない。何もしていないと、何にもできない人間になってしまったような感じがしてくる。最近の私は、大人になれ、と急き立てる私と、そのままでいいよ、と自らを慰める私がせめぎあっている。そうして、不埒でまとまりのないnoteを書く羽目になる。

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