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はじめてのけんか(エッセイ)

彼女とはじめてけんかをした。このごろ彼女は素っ気なく、決定的ではないけれどなんとなく寂しい気持ちが続いていた。今朝も朝食を食べて布団に戻ってもそんな感じだったので、おそるおそる不機嫌になってみた。「自分に悪いところがあるのか考えるのに疲れてしまった」と伝えると、彼女は黙ってしまった。

私はしばらく寝たフリをして、起きて朝食の皿を洗った。彼女は布団を畳んで、私はクッションを枕にまた目を瞑った。彼女は午後から予定が入っていて、着替えて出発の支度をした。私たちは声にもならない声でごめんと言い合い、彼女は「ちゃんと寝たほうがいいですよ」と言い残して家を後にした。

私は再び布団を敷いて、起きたら15時前だった。冷房で頭が重く、腰が痛かった。彼女のほうが何枚もうわ手で、私の完敗だったと悟った。謝る方法とタイミングを考えながら、涼しくなるのを待って吉祥寺で買い物をした。

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