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「雛鍔」制作ノート #2

落語を演じる上でのコツのひとつに、「身分の違いがハッキリわかるように演じる」というのがある。「雛鍔」には、職人・武士・商人という3種類の人物が登場してくる。身分によって考え方や言動は異なり、その差異によって噺は駆動する。その人間性の違いをどう描けるかというのが、台本を作る上での当面の課題だ。

現代社会では階級対立は見えづらくなってきているが、考え方の違いというものは今も存続している。私は根っこの部分では職人気質な性格だけれど、仕事は営業職で、商人的な考え方に染められてきている。落語を演じるとは、自分の中の複数の性格を、表に引っ張り出してくる作業でもある。

噺というのは人間性の差異によって駆動していく。ということは、噺を演じる為には、自分の中の矛盾した人間性が表現されてこなければならない。矛盾した性格が一つの噺の中に出現するという可笑しさを、立川談志は「業の肯定」と呼んだのだろう。

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