小旅行(エッセイ)
昨日の日記の「人類はもう黙るしかないのかもしれない。でも私は喋るが。」という物言いは、ずいぶんと不遜で笑ってしまった。どうしてこんなことを書いたのだろうと思いを巡らせるが、不意の言葉のほうが案外気に入っていたりもする。生理現象のように言葉は産まれる。
今日は前から予定していた彼女との小旅行の日で、JRと京成線を乗り継いで成田まで行ってきた。新勝寺の急な階段を登り、座敷で鰻を堪能し、空港内を迷路のようにあてもなく歩いた。二人とも疲れたり回復したりを繰り返しながら、いまはベタベタの肌で帰路についている。
充実した日だったが、「充実した日だった」と確かめ合えば台無しになってしまうような気がして、平静を装っている。冷房の効いた車内でも、疲れが溜まっていくのが不思議だ。衣類が汗を吸って、肌との接地面が痒みだしそう。