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最終列車

最終列車

時は冬、最終列車を乗り継いで 異郷の地へ辿り着く。
気づくとそこは山のふもとであった。
右側の山と左側の山が重なり合って、僕はそのかすかな隙間から下界を眺めていたようだ。
街の夜景と夜空の星々。
ともに光輝きながら、乱反射しているようだ。
様々な思いをのせて……
ふとその光がかすかな隙間を通り抜け僕の方へやってきた。
どうやら見つかったらしい……
カゲロウが僕を包んだ。
そこには屋台が1つぽつんと寂しそうに構えている。
僕は中に入っていった。
 (ラーメン1つ)…(…)…返事はなかった。
屋台の主は沈黙を守りつつ、黙々と課された使命を果たしている。
感動であったここは2つの人生が何の違和感も成立させずに淡々と共存しあっている。一時的ではあるが。
感動に酔いしれている間に僕は規則的な振動に気づくことになる。
見ると夜行列車の中で僕は窓越しに夜空を眺めていたのだ。
夢か……
それにしてもあの感動、あの感覚、いまだに残っている。
こんなに鮮明に。
終点にも近くなるとさすがに乗客も数を減らす。
まるで空間が箱づめに移動していくかのように。
そろそろ終点か、降りなければ。
 僕は立ち上がり荷物に手をやった、
まさか!
 窓越しに対角線の乗客が写っている。
 その顔は…夢ではなかった。
 あの屋台の主が今ここに。
 無意識的に僕は振り向いた。
 冷や汗が徐々に静まっていった。
 車両には僕以外の乗客がいるはずがないのだ。
また夢か……その瞬間、僕の脳裏はあることを思い出していた。
屋台の主が言っていた言葉、「またいつか逢おう」と……

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