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音のブランディング 「ソニック・ブランディング」 についてプロミュージシャンに聞いた | Team Y+L Projects

今回は、ミュージシャンのマーティに音のブランディング、「ソニック・ブランディング」についてインタビューをしました。マーティは、YLメンバーの一員で、生まれはオーストラリア、現在東京を拠点に活動しているプロのミュージシャンです。

この話の発端は、金曜の夜にオフィスで軽く飲んだことから始まりました。クリエイターが夜な夜な集まり、音楽やブランディングについて話をしている最中、アメリカのポルノサイトで流れる音 ( PornHub - TikTokいたずら) についてが話のきっかけでソニック・ブランディングという話題になりました。

彼は、映画やアニメーションのサウンドトラックを作曲し、ソニックブランディングの世界を他の誰よりも深く理解しています。私たちは、これから日本企業でもさらに取り入れられていくであろう、このサウンドロゴの魅力及び、ブランディングのプロセスについて話を聞きました。

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インタビューを始める前に、マーティが普段何をしているか、そしてバックグラウンド、これまでの経験、やってきたプロジェクトについて話してもらえる?

マーティと言います。日本には、2013年からの8年間住んでいて、主に音楽制作とピアノをやっています。ソロアーティストとしての音楽活動の他に、映画やアニメーションのための音楽を提供したり、音に関するアート作品を制作したり。日本では洗足学園音楽大学の音楽・音響デザイン学部で講師として勤めており、パソコンを用いた音楽制作やメディアにおける音楽の表現に関する授業を担当しているよ。

ソニック・ブランディングを初めて聞く人に対して、どのようなものか説明してくれる?

ソニックブランディングというのは「ブランドの音」という風に解釈している。「ブランディング」について考えると、最初に思い浮かぶのがそのブランドの視覚的なイメージやデザイン、そしてそのブランドのコンセプトや理念に関連するキーワードなどだけど、音楽やサウンドデザインなどの聴覚的な情報でも「ブランド性」を表現することもできる。

自分が初めてこれソニック・ブランディングだ!って感じた時っていつ?

当時はマーケティング戦略として意識していなかったけど、今考えると、「ソニック・ブランディング」という概念は幼い頃から僕の頭の中にあったと思う。例えば、オーストラリアでは「Bakers Delight」という有名なパン屋があって、そのパン屋のパン自体ももちろん、CMで流れていた音楽がとても好きだったので、小学校で受けていたピアノレッスンで弾けるようになりたかったという思い出があるね。ブランドデザインの一部としての「ソニックブランディング」をより具体的に認識するようになったのが、Windows 95の起動音のサウンドデザインを頼まれたブライアン・イーノや、BMWのコンセプト車のエンジンとUIの音をデザインしたハンス・ジマーなどの音楽家や作曲家が企業とのコラボレーションでソニック・ロゴ(音としてのロゴマーク)を制作する事例があると知った時だった。

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ブランドにとってのコミュニケーションツールとして、「音」ってまだ定着していないと思うんだけど、なぜだと思う?ビジュアル・ブランディングはスタートアップでも浸透してきているとは思うけど、今後これと同じぐらい重要なものになっていくと思う?

ブランドのデザインにおいて、「音」が見落とされる理由は多分たくさんあると思う。ひとつ紐解いてみると、光は音よりも速く進むので、僕たちは音よりも先にものを見ることになるよね、そこから話を深掘りしていこうか。

視覚的な情報は非常に迅速で処理が容易だけど、音響情報は定義に時間がかる。騒音公害の問題もある。もし視覚において、見たくない情報が入ってきたときは、目をそらしたり閉じたりすることで視覚情報をフィルタリングすることができるよね。けど、僕たちの耳はそのようには機能しないので、例えば広告に音を付けることは、超音波的に侵襲的であり、否定的な反応を促進する可能性もあったりする。

だからとも言えるけど、これがソニック・ブランディングが強力である理由でもあるよね。僕たちは、聴覚を簡単に遮断することはできないから、僕たちの心は、耳が私たちにとってどれほど重要であると考えているかに基づいて、耳に聞こえる音をフィルタリングすることを学んだんだと思う。

たとえば、音を普段意識していないかもしれないけど、どうしても聞こえてくるから、それが耳から入って脳で処理される。これは、音と視覚情報の間の、潜在意識的な関連性につながる可能性がある。

例えば、Facebook Messengerの通知の独特な音がスマートフォンから聞こえてきたとしよう、そしたら君の頭の中にはすでに、iPhoneにFB Messagnerの画面が浮かばないかい?

また、僕はよく様々な音楽を聞くけど、例えば他のミュージシャンが、アイルランドの伝統的な民族音楽を演奏していたら、 「無印良品の中を歩き回っているような気分だな」 と思ってしまうことがある。この音楽的な連想がどれほど強いものなのかを日常的に発見することがある。

これまでサウンドアーティストとして普段の人よりも、たくさんいろんな音を聞いてそれについて考えてきたとも思うけど、うまくやっているなーって思うブランドや企業ってある?(日本企業とグローバルブランドで) 既存のブランドで、ビジュアル・ブランディングよりも、ソニック・ブランディングの方が上手くできているブランドって、思いつく中であったりする?

ソニック・ブランディングをうまく活用しているブランドは結構あると思う。Netflix、Nintendo、Appleとか。特に思い浮かべるのは、彼らが非侵襲的でユニークで、彼らの製品とサービスに本質的に結びついていること。

Netflixの 「ダダーン」というソニック・ロゴは、ホームシアターのシステムとスマートフォンのスピーカーの両方に良い周波数スペクトルを持っていて、そこではNetflixのサービスがよく使われているよね。

Nintendo Switchの指クリック音は、すべてのコマーシャルの最初または最後に聞こえる簡潔でクリアなサウンドだったりする。

また、コントローラをコンソールに接続したときにも聞こえる。例えば、Macの起動音とiPhoneのロック音は、機能性とブランド化の両方に結びついた、わかりやすくて心地よいサウンドの良い例だと思うよ。

ビジュアル・ブランディングよりもソニック・ブランディングの方が上手い会社という点では、あまり多くの会社が思い浮かばないけど、僕が若い頃には、インテルのサウンド・ロゴ (非常によく作られた印象的なサウンド) を、そのブランドが実際にどのような製品を生み出しているのかを知らずに、勝手に何か質が良いものをイメージしていたことを覚えている。

ただ、頭の中にコマーシャルが残っていても、それがどの会社のもので、何を売っていたのか覚えていない場合があるよね。視覚的なデザインと音響的なデザインの間に強いつながりがなければ、音響ブランディングにも同じ落とし穴があると思うな。

国や産業でソニックブランディングを取り入れているところってある?そして、なぜやっていると思う?

僕は人生のほとんどをオーストラリアと日本で過ごしてきたから、オーストラリアと日本は僕が最もよく知っている国だけど、この2つの国を比較しても、ブランドが音波でどのように表されるかに違いがあることが分かる。

一つは、日本はジングルファンで、チェーン店のスーパーやデパート、リサイクルショップなどでは、繰り返し耳にするキャッチーなテーマの曲がスピーカーから流れてくるのが普通だね。このようなジングルの容赦のなさは、多くの人たちがイライラくると思うけど(笑)、サウンドとブランドの関係に多大な影響を与えていることは否定できないよね。

業界という点では、映画やテクノロジー業界がソニック・ブランディングの最も強力な例だと言わざるを得ない。これは映画業界では当たり前のことで、長年の間、映画はそれぞれ独自のソニックロゴやテーマ曲( MGM, 20th Century Fox, Dreamworks)を持つ関連プロダクションや資金調達団体の短いクリップから始まっている。

技術業界では、サウンドはユーザーが製品を操作するときに機能的な役割を果たす。例えば、銀行アプリなどのデジタル決済方法を使用しているときに、トランザクションが問題なく行われたときに、陽気なサウンドが再生されるといいよね。このような機能的なサウンドは、うまく設計されていれば、製品の使用体験をより快適にし、会社に音響的な個性を与えるね。

実はソニック・ブランディングをやっているけど、成功しているブランドとそうでないブランドがあると思う。この違いは何だと思う?

ソニックブランディングの良いところの一つは、音とブランドを無意識に連想させることだと思う。スマートフォンの通知が頭に浮かぶのは (通知を受け取ったときに再生される音の種類) 、アプリやスマートフォン自体のブランドによって異なるので、その音を聞くたびに、AppleやSamsungなどの広告が実際に聞こえてくる。このような 「潜在意識的な」 音のマークは、時がたつにつれて増えていくだろうと僕は思っている。

けど、テクノロジーはますます静かになってきていると言うこともできる (ほとんど完全に無音のハイブリッド車や電気自動車に比べて、過去数十年の車のエンジンから発せられていた雑音を考えてみて) 。

そのため、製品のユーザーを誘導して警告するために特別に設計された音が必要になると、音響情報とブランディングの間の潜在意識的な関連性が高まるね。

一般的に使われるソニック・ブランディングでの音について、どんな特徴がある?懐かしさ、ポップ、それとも感情に語りかける音とか?

ブランドが何を売ろうとしているか、ターゲット層が何であるか、消費者にどのような印象を持ってもらいたいかによると思う。サウンドは、誰かを感情的に操る、最も迅速で効果的な方法の1つで、ブランドが善悪の両面で使用することができる。

企業は、自社のソニック・ブランディングを利用して、ある製品で使われている技術がいかに最先端なのかという想起を抱かせたり、もっと単純な時代に耳を傾けたりすることができる。しかし、最終的には、音は非常に主観的なものになる可能性がある。つまり、ある人にとって心地よい音が、別の人にとっては耳障りな音になる可能性もね。そのため、多くの場合、非侵襲的で聞き取りやすいものを目標にすることが、ブランドにとって最も有益だと思う。

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ソニック・ブランディングはブランドや企業をどのように成長させる役割を担っていると思う?

ソニック・ブランディングは、ブランド・アイデンティティを強化する別の方法として利用できると思うよ。視覚的に人々に連絡を取る方法は聴覚的に連絡を取る方法よりも多いと思うし、スマートフォンやその他の音を発するデバイスは、今や私たちの日常生活の一部で、潜在顧客があなたのブランドを 「聞く」 ことは決して容易ではない。

自分のブランドに合った強い音のアイデンティティがあれば、ずっと印象を残しやすくなる。

近年、ソニック・ブランディングをめぐる議論も盛んで、特に印象的なサウンド・デザインを持つ企業には賞や表彰が授与されているよ。そのため、サウンド・デザインは今後、ブランド・アイデンティティを構築する上で必要不可欠な要素になると考えれると思う。

ソニック・ブランディングをそのブランドや企業のために作るとしたら、どういった要素が必要になるかな?

それはかなり複雑なプロセスだよ。通常、サウンド・ロゴ自体は、ジングルレコードや商業音楽よりもずっと短く、よりスリムな音のコンテンツを持つことが求められる。だから、作曲家は、ブランドのアイデンティティを数秒のうちに簡潔かつ記憶に伝えなければならないので、デザインプロセスは多くの試行錯誤と数え切れないほどの反復と編集を伴う。

ソニック・ブランディングには、作曲とサウンドデザインの両方の側面が含まれる場合がある。つまり、単にメロディーや曲を書くだけでなく、ゼロから演奏されるサウンドを作成することが必要なんだよね。

例えば、2つの異なる楽器で同じメロディーを演奏すると、音によって感情が完全に変わることがあったり。(ちょっと難しいかい?笑)

音を通してどのようにブランド・アイデンティティを伝えるかを考えることはチャレンジだね。それは刺激的であるべきか、それともリラックスしたものであるべきか? ブランドに関連する既存のサウンドはあるか? 音はアコースティック? もしくは、電子的? サウンドデザイナーの仕事は、このような質問を常に問いながら、ブランドに関連するアイデアをサウンドコンテンツにトランスレートすることだね。

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ソニック・ブランディングで、多くのブランドや企業に使われている楽器で人気なものってある?

絶対にこれっていうものは無いね。ソニック・ブランディングでは、通常、ブランドオリジナルのサウンドを目指しているため、他社のように聞こえるものを使用することは、好ましくないからね。とはいえ、ほとんどの音のロゴに共通しているのは、シンプルかな。例えば、シンプルなハーモニーとリズミカルな内容とか。

今後、どんなブランドや企業のソニック・ブランディングをやってみたい?

実は最近、音と香りの関係について考えているんだ。最近僕は、2つの興味深い経験をしたんだよね。

1つは、数年前に野外音楽フェスティバルに行ったときのこと。そこでは、ある公演の場所の香りを線香会社が 「デザイン」 し、観客がいる地域のさまざまな場所に線香の台を設置していた。

もう一つは、The Leftovers のエピソードを見るために座っていたときに、ある特定の香りのお香に火をつける習慣が身についていることに気づいたときで、そのお香を嗅ぐたびにアイリス・ディメントの曲 「Let The Mystery Be」 を思い出すようになった。

私たちの聴覚と嗅覚の関係はまだ完全には解明されていないと思うので、個人的にはアロマ専門のブランドでサウンドデザインをしてみたいと思っているね。

マーティの情報はこちらから
Website: www.martyhicks.com
Bandcamp: martyhicks.bandcamp.com
You can also listen to Marty’s work on Apple Music and Spotify.
Photo by Kim Marcelo

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