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10階展望からの地上ARと巨大AR模型を作ったお話

はじめに

今回、STYLYアドベントカレンダー2024の12月15日を担当するワイクウーデザインの桑山です。担当日前日から体調不良が続いてしまい記事の公開が遅れて12月30日になってしまいました😅申し訳ないです…

この2つのプロジェクトは文化財での活用事例です。従来、こうしたプロジェクトでは独自のアプリが開発されるなど高額な予算を必要する場合が多く、みなさんも旅行に行った先や地方出身の方であれば地元の文化財関係でXRコンテンツに遭遇する事は少ないのではないでしょうか。また、以前はあったのに配信終了している場合もよくあります。
今回、どちらのプロジェクトもSTYLYを活用して制作しているので、独自アプリで発生しがちな更新費等の継続的に必ず必要になる費用がかからずにXRコンテンツの配信ができる所が何よりも魅力的です。
先に書いた以前はあったのに配信終了している文化財系アプリがあるのも、アプリ制作時には1~3数年分の更新費を確保できても、3年後5年後には市の体制も変わっている事も多く、更新費を捻出できなくなり更新できずに配信終了になっている場合がほとんどです。
せっかく税金から賄われた予算で制作されたにも関わらず、継続した配信ができなくなるのは市民だけでなく行政にとってもデメリットなのではないかと考えています。
ワイクウで取り組んでいる文化財事業にはXRとH-BIMがあります。H-BIMとは、文化財関係に建設業界で普及が進むBIMを活用したものです。H-BIMと一言で言っても分かりづらいかもしれません。BIMのIはインフォメーションの頭文字で情報です。そしてまた文化財も情報です。相性が悪いわけがなく、なんなら新築や改修といった現代建築よりも文化財の方がBIMを必要としているくらい親和性が高いです。
そしてXRも文化財との相性がとても良く、H-BIMで文化財を管理し、そのデータを使ったXRコンテンツを体験できるようにする流れを2014年から発信してきて現在は新しい手法として認識され始めています。
なぜ、この手法が認められてきているかというと、技術面もさることながら価格面でも理にかなっているからです。価格についてはケースバイケースにはなりますが、従来の単純な復元CG制作は2次利用ができない場合も多くありました。何故なら、動画やVRやARといった目的に照準を合わせた作り方となるので一番わかりやすい例で静止画の復元CGの場合、見えない裏側やカメラ位置から後方はそもそも3DCGモデル自体が作られていない場合がほとんどです。見えない部分を作るのはコスパが悪く制作されないのは一般的な事でした。H-BIMの場合は、従来の復元CG制作とは違い、資料制作の中に分類されるようになります。本来、復元イメージも識者監修の入った重要な資料ですが、成果物は静止画や動画やコンテンツといった最終出力されたものであり、多くのプロジェクトの納品物に制作データが含まれている事は稀で、制作データが納品されていたとしても行政側に使える環境が無いため長期間確認されずに紛失または破損している場合も極稀にありました。
こうした背景から、ワイクウでは、XRコンテンツの内製化を推進し、奈良文化財研究所の研修デジタルアーカイブ課程でも、STYLYを含めた講義をさせて頂いたりしています。内製化の第一歩はSTYLYを使ったARバーチャル看板がオススメです。
今回は、2023年度に関わったプロジェクトXR難波宮と2024年度に関わったプロジェクトXR平城京の紹介をしたいと思います。

XR難波宮

XR難波宮は、大阪歴史博物館の1階と10階展望でAR体験する事ができます。1階でのAR体験は他のコンテンツ体験と大差はないので今回は割愛しますが、1階の場合は屋外及びアトリウム解放時は博物館の休館日でも体験する事ができるというメリットがあります。
今回は、10階展望からのAR体験について書いていきます。
XR難波宮の最大の特徴は、10階展示室にある展望窓から望む難波宮跡に原寸大でAR表示する復元CG!

10階展示室展望窓 前期難波宮 ARの様子
10階展示室展望窓 後期難波宮 ARの様子

STYLYのARなのでARKitやARCore対応しており、移動しても移動に追随したARが楽しめます。展望窓は原点は窓の中央で設定してありますが、幅約32mある窓の端へ移動しても大幅なズレはなく、その場所から望む難波宮を楽しめます。約60mの高低差のある展望ARは他には中々ないのではないでしょうか。ARと言うと地上面で体験する事が多いですが、こうした展望の景色でAR体験する事も可能で、STYLYで展望ARが出来る事は、このプロジェクト以前に自主制作で三重県名張市の展望台ビューナの景色で試した事があったので、XR難波宮でも問題なく遂行する事ができました。
こうした使い方もARの醍醐味だと感じます!
是非、大阪歴史博物館で体験してもらえたら嬉しいです。展示も凄くボリュームがあり難波宮から近代・現代までの大阪の変遷を知る事ができます!
屋外には5世紀の高床倉庫を復元した展示もあったりと、見応えある博物館です。
大阪歴史博物館:https://www.osakamushis.jp/index.html

XR平城京

XR平城京は、奈良文化財研究所・STYLY、そしてワイクウーデザインで三社協定を結び、文化財XRの研究を進めている一環で制作しました。
XR平城京は、宮では無く京全体のCGデータで、大きさはナント!縦横8.3Kmの実寸大のデータです。10年前の動画制作時に動画用に作られたCGデータの利活用をしたものです。目的が動画用とあり場合によってはアングルに入らない裏側は作られていなかったりしますが、平城京の動画は違いました。京全体の重要施設だけでなく住宅も全て作られていました。「このデータを眠らせておくのは勿体ない」と奈文研の高田氏から相談されたのがきっかけで、僕自身も既に所有している3Dデータの利活用を推進していたのもありXR平城京制作がスタートしました。このCGデータは奈良市役所に展示されている平城京の模型を作る際に作られた情報を基に制作されており、奈文研監修の入っているデータです。
今回制作したXR平城京のAR模型は奈良市役所に展示されている模型縮尺に合わせた1/1000としました。
1/1000と言っても縦横8.3mもある巨大な模型です。(奈良市役所の模型は8.3m×6.4m)
元データでは1,000枚以上のテクスチャが使われており、制作されたソフトからFBXにエクスポートする際にポリゴンが反対向いてしまったりと、そのままではXRで使う事が到底できないデータでした。そもそも8.3Km×8.3Kmの実寸サイズのデータなので無謀なチャレンジでした。
そこで、テクスチャ及びマテリアル数を30未満にするなど最適化を行い、モバイルで動作できるまでにしました。
STYLYは、Webサイト上で動作するStudioだけでもワールド構築をする事ができますが、今回はUnityを使い配置等の調整やギミックを入れました。
Studioのみで簡単に作る所からUnityを使ったカスタマイズまで幅広く対応する事ができる所がSTYLYの特徴であり使い勝手が良い所ですね。今後もXR平城京はバージョンアップをしていきます。進化をしていくXR平城京をこれからも楽しみにしていてください。
ちなみに、平城京全域をARで見る事ができるので、学校の授業で使って頂いても良いと思います。修学旅行で奈良へ行かれる前の事前学習や、現地で確認するのにも良いと思います。また、漫画やアニメの背景のご参考にしてもらっても良いかと思います。様々な使い方がSNSでも既に拝見できており、制作に関わった者としてとても嬉しい限りです。
今後もよろしくお願いいたします!

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