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【兎草子】東海道新幹線保守用車事故の課題(24/07/22)

今朝は早起きしていたら、大きなニュースが立て続けに飛び込んできました。バイデン氏の大統領選撤退と、新幹線保守用車事故による東海道新幹線の運転見合わせ。どちらも目が離せなかったですが、特に新幹線保守用車の事故は過去にも度々起こっていただけに気になりました。

始発前の事故だったために、始発時点から浜松〜名古屋間での運転見合わせ、前後区間を各駅停車の列車での折り返し、山陽新幹線との直通中止、ということで運行を始めたため、当該空間を通過する列車は運休もしくは、東京〜新大阪間運休となったものの、山陽新幹線はほぼ平常運転、東海道新幹線も東京側は「こだま」は運行区間を東京〜浜松間に短縮した上で、ほぼ定時に近い運転ができていました。
ここまでは、事故後の対応としてはほぼパーフェクトだったのではないでしょうか。

ところが朝を過ぎ、報道メディアのヘリからの空撮などにより現場の状況が明らかになってくると、当初のニュースで言っていた「脱輪」レベルではなく、かなり激しい衝突による脱線であることが我々の目にも明らかになりました。保守車両は衝突の衝撃で一部潰れており、仮に「脱線」状態を解消したとしても、自力走行はおろか牽引すらあやしいと思えるほど。場合によってはクレーンも必要ではないかとも。
事故が起きたのは愛知県蒲郡市内。少なくとも、ここから最寄りの保守基地線かある豊橋駅まで車両を移動させる必要があり、可能なら浜松車両基地まで運びたいところでしょう。豊橋駅までは約15キロ、浜松までとなれば50キロになります。まともに走れなくなっている重たい車両を牽引または何らかの方法で運ぶとなれば、時速数キロ程度が安全面で限界と思われ、搬送だけでも豊橋で3-4時間、浜松であれば半日かかるとわかったはずです。
加えて今日は全国的な猛暑日。その中での炎天下作業となり、事故復旧作業員の安全もしっかり確保する必要があります。とても短い時間で復旧できるはずもなく、この段階で終日運休を決め、安全を図りながら作業を進めても良かったのではないでしょうか。現場の作業員の焦る気持ちが減れば、二次災害防止にもなります。

ところが、運行再開見込みは、小出しとなります。
当初は「正午以降の復旧」「夕方以降の復旧」「夜7時頃まで作業がかかる見込み」、そして最後夜8時頃になって「終日運休」。
これは、再開を待つほうの身にとっては一番辛いことです。現場は頑張っていたのかもしれない、何とか早く復旧して運行再開したかったのかもしれない、それはわかります。でも、大局的なリスク判断と、顧客ファーストに基づく経営判断ができない結果でした。
仮に、午前中に終日運休が公表されれば、残念ではあるものの旅行中止や延期を決める人も多かったでしょう。また、航空機はもちろん、東京と関西の間は北陸新幹線経由の案内、東京と名古屋の間は北陸新幹線や中央線を経由するルートや高速バスの案内もできたでしょう。今日はANAとスカイマークが計5便の臨時便を出しましたが、もしかしたらこれがもっと増えていたかもしれません。
何より、多くの乗客が駅のコンコースで待つのではなく、他のルートを探す、宿を確保するなどの行動を早めに起こせたはずです。

また、今回の運転見合わせ区間は浜松〜名古屋だけで、この区間は在来線が終日20分間隔以上で走る区間で所要時間も1時間半程度です。特に豊橋〜名古屋は頻発の上、名鉄もあります。つまり、浜松〜豊橋の輸送力を高められれば、特に東京〜名古屋間のみを移動する乗客に対してはある程度リカバリが効いたはずです。
通常この区間の列車は4両。これに対して新幹線は16両。とてもそのままでは受け切れないため、今日は浜松駅にものすごい乗客の滞留が起きました。
日本経済の大動脈であり、会社の屋台骨でもある東海道新幹線の乗客を救うために、緊急で増結する、普段の倍くらいに増発するなど、JR東海ができたこと、するべきことはもっとあったのではないでしょうか。何しろここは自社で完結できる部分なのですから。

東海道線浜松付近の電車

このほかにもテレビニュースなどで指摘されていたように、過去最高となりつつあるインバウンドを踏まえ、外国人むけの情報発信が足りていないなどの課題も明らかになっています。

事故の復旧原因、情報発信のあり方に加えて、緊急時の在来線での代替輸送のあり方も検証し、今後に備えてほしいところです。


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