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【旅日記】橋野鉄鉱山見学記

明治日本の産業革命遺産として登録されている岩手県釜石の橋野鉄鉱山跡を見学してきました。

盛岡藩士の大島高任が洋式の製鉄方法を独学で学び、橋野鉄鉱山の磁鉄鉱を使い、初めて高炉から連続して鉄を製造することに成功したところ。その後の日本の製鉄産業のルーツともいえるところになります。
現在の日本製鉄釜石製鉄所とは直接の関係はなく、こちらは橋野鉄鉱山とは別の大橋鉄鉱山(釜石鉱山)をもとに官製製鉄所をルーツとする富士製鉄の製鉄所です。とはいえ、橋野と大橋は隣り合う山ですから、ほぼ同一の鉱床と考えてもいいのかもしれません。

明治日本の産業革命遺産は、炭鉱、製鉄、造船の3つの柱から構成されていて、炭鉱は三池炭鉱や長崎の高島、端島(軍艦島)炭鉱、製鉄は韮山反射炉、薩摩藩の反射炉や八幡製鉄所、造船は佐賀の日本初の乾ドックや長崎造船所など、そして近代化を進めた人材として萩の松下村塾や長崎のグラバー邸などからなります。
当初これら西日本の遺産を中心に申請しようとしたものの、「製鉄に使った鉄鉱石はどこから」という話しになり、橋野鉄鉱山が追加され産業革命遺産のシナリオが完成したそうです。

そんな橋野鉄鉱山ですが、釜石の中心部から約20キロも山道を上った山の中、簡単に行けるところではありません。レンタカーで行くしかないかなあ、と思っていたところ、釜石市観光協会が相乗りタクシーで観光プランを出していたので、利用してみました。
釜石駅前で乗車し、鵜住居まで海岸近くを進んでから山に分け行っていきます。途中の川では鮎の解禁ということで、たくさんの太公望が釣りに来ていました。いくつも集落を抜け、後半は完全に山道になり、40分かかって橋の鉄鉱山インフォメーションセンターに着きました。

小雨ぱらつく中、案の定というか他に観光客はなく、センターの係員に促されてまずは10分ほどのビデオを鑑賞。これを見るだけでだいたいのことはわかり、よくできていました。そのあとは、有料のガイドツアーに。500円なので大したことはないのですが、今日は1:1なので断りにくかったです。でもまあ、ガイドしか知らないちょっとしてTIPSはいくつか聞けたかな。
特に世界遺産になるだいぶ前に、現在の上皇さま夫妻が自らのご希望でご訪問されていたこと。常に学び、先人に感謝される姿勢に頭が下がります。
ガイドツアー自体は3つの高炉跡を中心に30分ほど。
よく石積みの高炉が残っていたものです。明治中期以降は製鉄は下流域や釜石に移ったのと、あまりに深い山の中なので荒らされずに済んだ、そして誰もこの地のことを忘れていたということなのかもしれません。また、戦後この石積みの石を持ち出す許可を出さなかった営林所にも助けられています。今も時折発掘調査などすると、新しい発見もあるようです。
ちなみに、鉄鉱石の採掘所跡は非公開とのことでした。世界遺産登録のシナリオ的には、そこも見学できるようにしてほしいところですが。

三番高炉跡。明治27年まで操業していた。

明治日本の産業革命遺産は、図らずもそのかなりを訪問してきています。残る主なところは非公開の八幡製鐵所を除くと三池炭鉱。いつか訪れてみたいものです。


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