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【兎草子】鉄道インフラ維持政策への転換を(24/10/29)

JR東日本とJR西日本が2023年度の地方路線の収支状況、つまりどれだけ赤字があるのかを公表しました。

この数字だけみると、巨額の赤字を出しているように見えますが、一方で2023年度決算によれば、
 JR東日本 営業利益 3,451億円、経常利益 2,966億円
 JR西日本 営業利益 1,797億円、経常利益 1,673億円
であり、十分に新幹線など他の黒字路線や関連事業収益でカバーし、それ以上の利益を出しているわけです。

JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の4社は発足当時の国有会社から今では完全な民営かつ上場会社になっていますので、事業拡大と利益の追求、そして株主還元することは必要ですが、いっぽうで不採算事業、つまり地方赤字路線を簡単に切り捨てることは違うのではないかと思います。
電力会社も完全民営化企業ですが、儲からないからといって地方の小さい集落への配電を止めるということはできないでしょう。

同様に、企業全体として事業収益が確保できているのであれば、地方も含めてサービスを維持することが課せられた使命ですし、もしそれができないのであれば、本来政策として再国有化などを考えるべきなのではないかとも思います。
単なる利潤追求企業にならないというビジョンやパーパスを掲げてほしいところです。私もいくつかの鉄道会社の株を持っていますが、そうした考え方のところにはより投資も考えたいところです。

とはいえ、国内の鉄道事業は、航空やバス事業との競争環境に置いてフェアとは言い難いところがあります。
なぜならば、鉄道は、線路や駅の土地、建物、設備を自前で投資し保有しなければならないのに対して、航空やバスではそれらは限定的です。航空においては空港は国や県の運営で、一部主要空港で発着料を払っているに過ぎません。バスの場合も道路は全て国や自治体による建設、維持管理となっています。
つまり、航空やバスは、運行する機体や車両、運行に必要な人員の確保や機体・車両などのメンテナンスやチケットの販売だけを自前でもてばいいのです。特にこの数十年は、国内の空港はジェット化のための滑走路拡張や新空港の建設、高速道路や基幹一般道、さらには山間部の道路の整備などに巨額の税金が投入されてきました。一方で鉄道では、地方鉄道会社の赤字補填などに僅かに投入されているだけです。整備新幹線も国が建設費を出している風ですが、実は開業後に使用料という形で回収しています。

これはどう見てもフェアではありません。
鉄道会社からしてみれば、こんな無理な競争環境を強いられているのだから、幹線路線の競争力を維持するためにも赤字路線は極力減らしたいと思うのは当然ではないかと思います。

最近、地方赤字路線を維持し続ける方法として、経営が厳しくなっている第三セクターや地方鉄道で上下分離ということが進み始めています。
線路や駅の土地や設備といった、鉄道における地上インフラを地方自治体が所有、維持し、鉄道会社は運行に専念するというものです。上下分離をすると、鉄道会社は資産が小さくなって財務(B/S)が安定するとともに、インフラ維持するコストがなくなるので営業収益(P/L)にも改善します。

とはいえ、これを進めるためには地方自治体の負担は小さくありません。それでも地域の足を維持するために進めているのです。

この政策は、国として、国全体で行うべきだと思います。
そして、その予算原資は、航空や道路の整備・維持に使われている予算と全てプールにして当てるべきと思います。どこに使えばもっとも国として、地域として効果があるのか、効率的な交通体系を維持できるのか議論して、進めてほしいところです。

こういう議論や政策転換は、自民党一党支配がなくなる政治の転換点にこそできる政策なのではないかと思ったりします。

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