“問い”の設計をAIで早める方法
こんにちは、KOJIMAです。
この文章は、少し視点を変えたAIの使い方を見つけたい方へ向けたものです。
生成AIを使っていて、肝心な時にあまり使えないというか、これ以外に使い方ないのかなあ、とモヤっとするなあ と思うことありませんか?
もしかすると、そのモヤモヤ感は、”問い”のデザインにAIを活用できてないことにあるかもしれません。
まずは、”問い”とは何かを知る必要があります。
本文の大部分はその”問い”の説明に費やしていますので、結論だけさくっと知りたい方は4セクション目「良い問いを素早くデザインするためにAIと対話しよう」だけ読んでみてください。
問い はとっても大事。
さて、プロダクトマネージャーとしての仕事をしながら、最近もっぱら、どうしたら課題を解決できるだろうか?ということよりも、どうすれば正しい課題を捉えることができるのだろうか?ということを考えるようになりました。
ーー そこで出会ったのが、「問い」という言葉です。
私の意味する「問い」の概念を説明するために、少し時間をください。
身近な問いといえば分析
よく、「なぜ」を3回繰り返そうとか、5回繰り返そうとか、そういう話を聞いたことがある方は多いと思います。これは、「事象」を体系的に整理して、矛盾が発生しないよう筋道を立てる思考法で、典型的な一つの「問い」の形だと思います。
また、多くの方は、「問い」という言葉を聞いた時にこの形式の思考をイメージするのではないでしょうか。
こうした問いは、Analysis(分析的)アプローチと言い、問いの中でもロジカル(論理的思考)に分類していく、わかりやすいものです。
分析した要因を1つ1つ解決していくことで、最初に設定した「事象」(図では一番左のボックス)を解決に導くことができる状態になる形式になっています。因果関係がはっきりしていて、正解がわかりやすいので、問いが立てやすいことが特徴だと思います。
分析する前にすでにある「問い」
よく考えると、分析的アプローチをする頃には、すでに「問い」が与えられている状態になっています。
ここでいう「問い」は「事象」や「課題」とも言い換えることができます。
例えば、なぜこの製品が必要なのかを考えてみよう とか、なぜ売り上げの調子が悪いのか原因を分析してみよう などといった具合です。
ここで、冒頭の一文を振り返ってみましょう。
「どうしたら課題を解決できるだろうか?」は、
「問い」がすでに明確にある・発生している・与えられている状態です。分析ができるスタートラインに立っています。
逆に、「どうすれば正しい課題を捉えることができるのだろうか?」は、
「問い」はまだ発見できていない、もしくは正しい「問い」かどうかがわからない状態です。分析ができるスタートラインに立てていないので、どこから出発したら良いかがわからない状態になりやすいです。
「問い」は発想の土台
私たちは、問いを立てることで、「そのためにどうしようか」と考え始めることができます。
どうすれば街が良くなるだろうか? や どうすれば若者が政治に参加するだろうか?など、社会のありとあらゆる創造は問いから発生しています。
一方で、問いがない状態では、何かを作り出したり思考したりすることは難しくなります。そのため、私たちは必死に問いを立てようとします。(もしくは、課題を無理やり発見しようと取り組みます。)
ただ、良い問いを立てることは非常に難しいです。
例えば、以下のような問いに直面した想像をしてみてください。
テーマが大き過ぎて分析をしようにも的が絞りづらいですし、自分ごと化しづらいものも多いと思います。
問いとは単純に問題を投げ掛ければ良いものではなく、どれだけ発想の土台として活用できるものなのかが重要なことがお分かりいただけるでしょう。
Youtubeで公開されている、NVCA講義プログラムの石川先生の講義では、「良い問い」を立てることで、4つの価値があることを示してくれています。
まさに、問いを正しく立てられれば、アイデアを膨らませるためのツールになるということです。
良い問い のデザインの仕方。
問いを立てることで、人々の取り組みやアイディアの発散活動がスタートすることをご理解いただけたでしょうか?
普段仕事をしていたり、生活をしたりをしていると、何も考えなくても課題が山のように積まれていきます。ふと振り返ると、気がつけば「問いの山」に足を突っ込んで、分析して解決を繰り返している日々ではないでしょうか。
ただ、そうして日常的に勝手に降ってくる「問い」は「良い問い」とは言えません。大抵の場合が、良定義問題(well-defined problem)と言われるものです。これが何かは後ほどで説明します。
では、良い問いとは何で、どのように作っていくのでしょうか?
こちらの本の一部を抜粋しながら、問いのデザインの方法について書いていきます。
言葉の定義
まず、「問い」を考える前にいくつか言葉の定義をしておく必要があります。
「質問」と「発問」と「問い」
問いとは、誰も答えの知らない、対話を促すための道具です。
「問題」と「課題」
課題は、あなたと誰かが共有して解決したい問いです。
良い問いの発見には、他者が不可欠
私たちが働く中で、日常的に考えているのは多くの場合「問い」の中でも「課題」であることがわかります。
課題の発見のためには、自分が持っている「問い」を他者にぶつけて、共通点や他者の視点を見つけていく必要があります。
これは、先の分析的アプローチでは発見できない新たな問いを見つける作業です。(水平思考、ラテラルシンキングに近い方法です)
こうして、「問い」をアップデートし、「課題」へと昇華させていきます。
この行為を、本の中では他者との「溝を埋める」と言う風に表現しています。
これに対して、日常的に勝手に降ってくる良定義問題(well-defined problem)は、コミュニケーションが発生しない課題であることが多いです。
例えば、「エクセルの足し算に時間がかかる」という課題は、例えば関数を利用するなど、大抵の場合対話が不要で解決策が1人で導き出せますし、回答が1つです。このような問題を、良定義問題と言います。
逆に、ここでいう、他者との対話が必要な良い問いとは、難定義問題や洞察問題というふうに表され、解やプロセスが複数個存在する問いを指します。
良い問いの解決には、他者が不可欠
良い問いが生まれることで、次は何が発生するでしょうか?
本の中では、問いから生まれるコミュニケーションには、4つあるとされています。
問いが何かによって使い分けが必要ですが、創造を生む問いの多くは、対話が最も適しているでしょう。
ただ、問いは問いのままで終わらずに、最後には解答やアクションを起こさなければいけませんから、討論や議論を利用して、私たちはもっともらしい解答へと導かれているはずです。
いづれにしても、ここ過程にも他者が不可欠になります。
問いのデザインの実行は難しい。
問いは創造の出発点であり、他者と対話をしながら設定したり解決をしたりしていくものだと、話してきました。
ただ、これを実行するのはとても難しいです。コミュニケーションスキルも必要ですし、対話にそれなりに時間がかかります。
スケジュールも気にしなければいけない日々のプロジェクトの中で、対話の時間を丁寧に取ることは、かなり至難の業です。
対話しなくて何度も失敗した
ロジカルで課題の特定が早い人が偉い、という"風潮"が今でもあると感じています。
そのおかげで、私が自信満々な時は、ロジカルシンキングによって素早く課題を特定できた(と思い込んだ)時です。
そして、そういう時は大抵議論が振り出しに戻ります。
上長やクライアントに、「本質的な課題はそこじゃない!」と一蹴されるからです。
問いのデザインの仕方を学んだからもうわかります。対話が足りておらず、課題の出発点が自らの問題にすり替わってしまっているんですね。
最初の課題はラテラルに導き出さなければいけません。
何度も何度も失敗しています。
問いを設定しないまま何度も進めた
プロジェクトを進めていると、これってちゃんと目的に合っているかなあ?とか、本当は何がしたいのか?と、疑心暗鬼になることはありませんか? 私はよくそうなります。
もう少し具体な例をあげるなら、会話の中で「本質的」という言葉を耳にすることがあります。
「本質的な対策なのか?」や、「この対応は本質的じゃないよね?」などです。
本質的とは、言い換えると「正しい問いに立脚しているか?」ということなのだと思います。
問いを設定しないまま物事を進めると、「共有されてない表面的な課題」や、「無理やり見つけた自分の中の問い」に閉じて考えることになり、これって本当にこのままでいいのかな? と、不安になります。
こういう場合は、大抵ブレブレの解決策が出来上がってしまい、やり直しになります。
良い問いを素早くデザインするためにAIと対話しよう
ようやくAIの話です。
よく思い返してみると、私たちが仕事をする上で、最も頻繁に、ぶち当たり、頭を捻り、何度もミスをする大きな壁は、これまで紹介してきた「問いの設定」のタイミングだと思います。
一見、時間をたくさん割いているように見える課題への対処は、あなたの中で自然と良定義問題化され、対処する方法を身につけていることが多いのではないでしょうか。
AIの活用で感じていた違和感の正体
私自身が、日常的にAIを使う際に感じていた違和感は、単純作業にしか使えない、正解への道筋がある程度わかっていることに対してしか使えない、ということでした。
そう、やり方がわかっている良定義問題の解決や時間の短縮にしか使えないの?ということです。
だったら自分でやったほうが早いな…と思うことが多々ありました。
言い換えると、「最も手間がかかって難しい『問い』の発掘にAIは使えないのか」というAIに対するぼやきだったのだと思います。
さあ、AIを対話相手に問いをデザインしよう
こうして問いを紐解いて学んでいくと、問いのデザインの中でのAIの使い所がわかってきました。ちょっと視点の違う、新しいAIの使い方です。
AIは、良くも悪くもラテラルな考え方を持っています。正解のない問いに対して、さまざまな意見でものを言ってくれますよね。
例えば、AIに何かを聞いたときに「あ、確かにその視点もあるか」と思ったことはありませんか?
AIを創造的活動に使うヒントが、そこにあります。
最もシンプルで効率的な使い方は、「反対の意見を聞くこと」です。
そして、そこに賛成意見をミックスして、お互いの課題の共通項を見つけてもらいます。
こうすることで、初めの問いは「若者の投票率を増やすにはどうしたらいいか?」だったのが、「政治教育を改善するにはどうすべきか?」や「どうすれば投票プロセスの透明性を上げられるだろう?」といった、より抽象化された課題を特定することができます。さらに、それを良い問いにするためのプロンプトも用意することができそうです。
AIには正解のある問いや、自分の意見の正当性を聞くだけではもったいなく、この例のように、反対意見やあらゆるペルソナの意見を吸収し、彼らがどのように思っているのかを確認するために使ってみましょう。
これが、AIと対話して問いをデザインしていく方法です。
人との対話ももちろん重要ですが、対話の前にあらかじめ、対話相手の思考を想像できる余地もあります。
わかりやすい例をもう一つ
これは良い問いでしょうか?「あなた」が主語になっていないでしょうか?
まずはAIに対話相手の意見を聞いてみましょう。
友達に聞くように、素直な対話をしてみます。
「私は残業をしてでも仕事したほうが将来のためだと思うのですが、Z世代の後輩にこのことを伝えるとどのような意見が帰ってくるでしょうか? 彼らはそのことに対してどのように捉える傾向があるでしょうか?」
これを知って、実際に、あなた→後輩への問いは変わらないでしょうか?
変えるとしたら、どのように問いを変えますか?
コミュニケーションや創造はこうした問いの事前準備によって、大きく変化してくることがよくわかります。
AIを対話相手に議論・討論はやめよう
一方で、AIは議論・討論はできません。ラテラルな考え方を持つ持ち主であり、自分の意見がない人格と思ったほうが良いでしょう。
AIは必ず、もっともらしくあなたの意見に同意しながら反論を展開してくるしかないですし、AIと議論したからといって、決めるのは結局あなたです。なので、最終的には対話相手としてしか利用できないことに気がつくと思います。
まとめ
長々と、ここまでありがとうございました。
「問い」の重要性と、その難しさ、そしてAIを使ってそれを少しでも早める方法について、理解いただけたでしょうか?
もしかしたら、AIが「良い問い」を出してくれるかもしれません。
でも、最終的には忘れてはいけないのは、自分が対峙しているのは、現実にいる他者だということです。AIはZ世代の傾向を語ることができるかもしれませんが、目の前にいる人がどんな人物かは、彼らに知る由もありません。
「問いのデザイン」という本では、対話の方法がとても重視して書かれています。とても有用ではありますが、そのテクニックを身につけることは非常に難易度が高いのは事実だと思います。
そんな時に、まずはAIと対話してみる。そして、日常的なコミュニケーションから問いをデザインして、投げかけてみることで、少しづつ対話と創造が豊かになっていくのではないでしょうか。
AIの活用、これからも色々と試してみたいと思います。
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それではまた!