瓶詰めにしたいは恋
いい音楽は、生きていることを思いださせてくれる。
あいみょんの「GOOD NIGHT BABY」を聴いた。
初めて、音楽を聴いてこの気持ちを瓶詰めにして保存したいと思った。
人の感情と感情が触れ合う瞬間を表現することは本当に難しい。
恋愛が始まる時、その時はいつも一瞬で
あれよあれよという間に渦の中だ。
セックスが目的だったのか、それとも結果的にセックスすることになったのか、結局どちらが正解なのか分からない。
それで、付き合うこともあるし、付き合ってもうまくいかないこともあるし、付き合わずに終わることもある。
それが、恋愛の難しいところでもある。
恋愛と性欲は、切っても切り離せないものだ。
けれど、どちらが目的か分からなくなるなら、性欲の前のトキメキを保存したいと思うこともあった。
こう言っているけど、私はかつて友人に
「あなたが恋愛対象になる人とそうじゃない人の違いって結局、好きになる人を性的に見ているかどうかだよね」
と言われたことがある。
だから、当時私がトキメキだと感じていたものは、もしかしたら欲情なのかもしれない。
ただ、その時は確実に相手に日常で感じない高揚感とか、触れたいけど、触れられない葛藤とか、けれど触れてしまった時に感じるじんわりした熱とか、色んなことを一瞬で感じている。
私が覚えていても相手は忘れてしまうから、だからこそ保存したいとおもう。
この歌は、本当に真っ直ぐに相手を見ている。自分との関係性をどう引きよせようか、そんな葛藤に重点を置いて歌われている歌だと思う。
人はきっと忘れてしまうし、自分の気持ちと相手の気持ちが一致しない時、辛いだけだからと蓋をした気持ちを目一杯記憶の底から引き出してくれる。
そして引き出すだけではなくて、もっと漂白して透明にして、こちらに届けてくれた。
あまりに真っ直ぐな気持ちで人を想った歌だから、自分は汚れてしまったなという気持ちだ。
あいみょんは、そんな真っ直ぐな気持ちをいつのまにか保存して、忘れた頃に手渡してくれる。
昔、何かのインタビューで見たが彼女は、「音楽にはちょっとの希望を乗せている」らしい。
あいみょんの歌ほどに人を純粋に思える自分は死んでしまったけれど、そんな今の私が思うことがある。
この曲を心の底から瓶詰めにして保存したいと思ったのは、最近そんな純粋な高鳴りを感じられていないからだ。
だが、それ以上に歌を聞いて込み上げた気持ちを大切にしたいと思った。
恋の始まりの一瞬の高鳴りを、5分半かそこらで鮮明に表現し、自己陶酔させ、世界観に巻き込んでしまう。
それが心地いいから、そのままでいたいと思う。
そして、大切にしたいからこそ、色褪せない形で保存したい。
それは、人を好きになる過程に似ているということだ。
歌に恋愛の歌が多いのは、
*共感を生みやすい
*色んな形があるから自己陶酔させやすい
などの理由があると思う。
でも、1番は
「人が人らしくいられて、
最も生きていることを感じられるから」
ではないかと思う。
恋をしている時は、1番人が生を感じやすいのだ、と私は思っている。
そして、いい音楽に出会ったときは、その音楽に恋しているのだと思った。
この瞬間を保存したいと思えるものや人に出会えるのは、本当に幸せなことだ。
私にとっては、音楽が恋をしやすいコンテンツだが、人によってはそれがスポーツだったり、お風呂に入っているときだったり、猫と戯れているときだったり、様々だろう。
だからこそ、その瞬間に出会ったときに第六感に委ねてしっくりくるものを本能的に見つけていきたいと思う。
恋する瞬間が、もっともっと増えますように。