#5 スポーツ現場におけるATの役割
今回はアメリカの大学のスポーツ現場で働く自分、つまりアスレティックトレーナー(AT)としての役割と、チームスポーツ内での相互関係について書いていこうと思います。
ATとしての主な役割はもちろん、組織の中でどう歯車として、そしてそれがどのような結果を生み出せるのか、というところをフォーカスしていきましょう。
アスレティックトレーナーの主な仕事と役割
アメリカでのATとは、準医療資格として、基本的には選手の健康管理を担当します。
身体検査の部類から、怪我の処理・治療、手術後のリハビリ、フィールド上では試合中や練習中の事故対応、救急対応などなど…
スポーツ現場で考えられる外傷および事故の予防や手当てを主に任されます。
また、チームドクターと選手の間に立って、選手の治療と復帰へのプランをサポートしていきます。
アスレティックトレーナーと監督・コーチ
監督やコーチなど、チームの首脳陣との関係性は持ちつ持たれつ…と言いますか。
基本的にはAT側から怪我した選手のレポートだったり、けが人の復帰プランの中で技術練習が必要な場合はコーチ陣にサポートしてもらいます。
スポーツに特化した身体検査や、技術向上、けが予防に大切な姿勢や可動域を改善、維持するためのエクササイズプログラムを一緒に作ることもありますね。
さらに、理想としてはAT側が、選手の健康管理をしていく中で、目の前の練習や試合に参加できる選手の頭数を揃えることが大事な役割です。
ここで一番気を付けているのが、怪我した選手を簡単に休ませることはありません。
怪我している中で最低限出来ることは、練習でも試合でもなるべくやらせるようにします。
そこの線引きをしっかりコーチ陣とコミュニケーションすることが重要ですね。
アスレティックトレーナーとパフォーマンスコーチ
パフォーマンスコーチ、トレーニングコーチ、ストレングス・コンディショニングコーチ…などなど呼び方は様々ですが
トレーニングを管理してるコーチたちとの関係性は、さらに重要でもあります。
スポーツコーチ陣同様、怪我した選手たちを最低限トレーニングさせ続けるために線引きをして送り出すことは大事です。
そして中でも一番大事なのは、パフォーマンスコーチと一体になって選手の身体強化とコンディションを管理することです。
ウェイトトレーニングをすると、単純に筋力がつくだけでなく、身体の耐性が向上するので、結果としてけが予防に繋がります。
また、コンディショニングというのは、試合後、練習後に行うアイシングやマッサージではありません。
実際にATができる治療というものは、その場しのぎのものが多く、痛みや疲労というのは、治癒するのに時間がかかります。
睡眠、栄養、そしてしっかり水分補給をすることで、ゆっくりとリカバリーしていきます。
ここでもう一つ、コンディショニングの最大の要因となるものは、トレーニングプランです。
選手たちがスポーツの技術練習とは別に行うものとして、ウェイトトレーニングがあると思います。
これは計画をしっかり作ることで管理されます。
その中で大事なことは、ATはそのトレーニング計画の内容をしっかり把握することです。
ウェイトトレーニングは、とにかく重量を上げる時期、少し軽くして回数を上げる時期、重さも回数も抑える時期など、色々と時期によって内容を変える必要がありますが…
その内容をしっかりと把握することで、どのくらいの選手がどのような治療を求めるか、そしてスポーツの技術練習の量と比較して、どのような怪我や痛み・違和感が起こるかを予測することができます。
トレーニングプランの一例として、選手の体内のホルモンバランスを管理しながら作成されるものがありますが、疲労とホルモンバランスは大きく関係しています。
プランからできる予測をしっかりして、自分の仕事に備えることで、ある程度の怪我が起こっても想定内ということですね。
アスレティックトレーナーとして選手にできること
コーチ陣同様、ATは選手たちを高いレベルへ導く立場でもあります。
選手個人のルーティンを一緒に作ることで、例えば怪我の多い選手が自分自身のことをケアして、試合や練習に日々準備することができるようになったり
単純に怪我についての知識を教えることで、選手自身の身体に対する意識を向上させられます。
多くの治療が心理的にもいい影響をもたらすので、いろんな治療を試してあげることで、選手の好みに合うものを見つけ出してあげることが大事ですね。
さらに、しっかり怪我の状態を評価することで、けが人が最低限参加できる練習やトレーニングを教えてあげることができます。
これはモチベーション維持にも影響するので、とても重要なことだと思います。
最後に…
僕が思うATとしての最大の役割は、スポーツや自分の働くチーム全体のプロセスを理解して、その一部になることです。
僕の場合、監督・コーチ、パフォーマンスコーチはそれぞれのプランがあり、そのプランの中で選手は成長していきます。
”選手が渡らなければならない細い橋みたいなものを、落ちないようにしっかり支える”ことで、僕はATとしての役割を果たします。
結果論にはなりますが、スポーツは結果に大きく左右されます。
その結果論の中で、すごく大雑把にフローチャートを作ると…
1.ATが選手の健康管理、試合で使える選手の頭数を揃える
2.監督・コーチの試合でのオプションが増える
3.試合に勝つ確率が上がる
4.強いチームになる
5.応援してくれるファンが増える
6.売り上げが良くなる
7.(プロレベルでは)それぞれの給料が上がる、スポンサーが増える
ということですね。
最終的にはスポーツビジネスの分野にも影響があることを理解することで、自分の仕事の大きさを理解することができると思います。
次回は、Scienceがスポーツの中でどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。
お読みいただきありがとうございます!