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俺VSヤンキー2

前回の戦いから1ヶ月がたち、パチンコ店勤務にも平穏は続いていた。遅番はとても居心地がいいし、なにより優しいおばあさんやおじいさんが多い。俺は緩みきった平和ボケ笑顔で店内を巡回する。なんといっても2月に引っ越しを控えていて、この職場ともおさらばになるため多少のお客さんの無礼や文句も気にならないし名残惜しさを感じさえしている。


今日は少しお客さんが多いなぁ。パチンコ利用者が60万人減少しているご時世とは思えないくらい店内は混雑していた。少し狭いスロット台の間をお客さんにぶつからないように足早に歩いて回る。その時、俺の視界の片隅に見覚えのある頭が写り込んだ。
「クローズだぁ。」


記憶は1ヶ月前の戦いに瞬時に巻き戻り、戦慄が走る。
1ヶ月前に俺を壁に叩きつけたヤンキーが来店しているではないか。おかしい。奴は昼の時間帯しか来ないはず。なぜ、この遅番の時間にスロットを打っているのか。その時ハッと気づいた。今日は土曜日、そして「5の付く日」だということを。パチンコ店というのはカレンダーの数字でイベント日を決めている。当店は5日、15日、25日がイベント日であり、大当たりが出やすいとされる。なるほど。土曜日で仕事が休みで、15日である今日は夕方の時間からゆっくり打って大儲けしようって腹か。店内が混雑しているのも納得がいくな。

前回の反省を生かし、俺は彼と目を合わせないようにフロアを巡回した。相変わらず周りをキョロキョロして時折、俺の方にガンを飛ばしてくる。きっと今日も大当たりが出ずに、イライラしているのであろう。ゲーム喧嘩番長では、格上の敵にはメンチビームは届かない。彼のメンチビームは俺には届かないし、わざわざ俺はそんなビームは相手などしない。
今回はなにも文句は言わせないぞ、このやろ!


1度も目を合わせずに1時間ほど経過した。
戦いは突然起こるものである。お客さんが呼び出しランプを押し、俺がそこへ小走りで向かう。お客さんの対応を終えて、所定の位置に戻ろうとして、ヤンキーの後ろを通った。その時である。座っていたヤンキーが突如振り向き、俺の胸ぐらを掴んだ。
「なんで〜。」俺の叫びは心の中だけで響く。

「目ざわりだから、今すぐ消えろ!」
なんと無慈悲な咆哮であろうか。

俺「どうかされましたか?」

ヤンキー「うるせぇ、さっさとどっか行け!」

俺「では失礼致します。」

ポロシャツのボタン取れちゃった。悲しい。
今回は2回目ということもあったし、他の男性スタッフも何度か絡まれていた事も知っていたので、一応社員さんにインカムで報告した。
状況を説明した直後、社員さんの1人がそのヤンキーの所へ向かった。俺はヤンキーの視界に入らないように業務を続けていたが、どうやら大声で言い争っているのがわかった。

15分程経って、言い争いも終わったみたいでヤンキーは退店し、社員さんは事務所に戻った。
休憩が入るタイミングで、社員さんにその時の事を聞いてみた。
ヤンキー曰く、ウロチョロしててうぜぇだそうだ。

いや、ウロチョロするよ、そりゃ!仕事だから!巡回してるんだよ!俺が無邪気に店内をスキップでもしてりゃわかるけど!
という事で、俺VSヤンキー第2試合はこうして幕を閉じた。
ヤンキーは次回同じような事を起こしたら、出禁になるという。退職まで約2ヶ月。ヤンキーが去るのが先か、はたまたおれが先か。
乞うご期待である。

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